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「ならこうしたらどうだろうか。アリス、君は私の友達になってくれないかい?」


「・・・・あなた、今度は何を考えているの。」


ヘレンが私の気持ちを代弁してくれる。

今度は一転して彼が得られる利益がないように思える。

だからこそ余計に疑わしい気持ちが膨らむ。


「そう変に勘繰らないでくれ。私はただ純粋にヘレンのような気の置けない友人が欲しいだけさ。

君のような遠慮のない友人は貴重だからね。」


「殿下と距離が近づくことで私が殿下を慕ってしまうことは考えておられないのですか?」


「君は違うと言い切れるよ。

私を見る目が違うからね。

王子という立場にも私の容姿にも目がくらんでいない。

私の本質がわからなくて警戒している目だ。

見せかけだけじゃなくて私自身を見極めようとしている。」


(・・・やっぱり怖い人。)


自分が見極めようとしていたけれど相手に深く観察されている。

けれどこの提案は私にとって利益の方が大きい。

彼の真意がわからなくてもこのチャンスを逃してしまうわけにはいかない。


「・・・わかりました。私でよろしければ。」


「ありがとう。君ならそう言ってくれると思ったよ。」


頷くと満面の笑みで手を取られる。

傍からみたら羨ましがられる光景なのかもしれないが

自分の心情的には見事に餌に釣られた魚だ。


「私のことは殿下ではなくルーカスと呼んでくれ。敬語も不要だよ。

ヘレンと同じように接してくれて構わないからね。」


「わ、わかったわ・・・。」


思わず顔が引きつるがそれすら彼には楽しいようだ。

その笑顔が崩れることはない。


「それで?禁書庫の情報はどうやって彼女に渡すつもりなの?

あなたが調べてくるっていうのもあまり信用ならないのだけれど。」


ヘレンが話題を変えてくれたタイミングで彼の手からそっと逃れる。


「そこは私に考えがある。禁書庫は本来王族のみ立ち入りが許される場所だ。

けれどその王族の許可がある者に限り立ち入りを許される。

私が君にその許可を取ろう。」


「あなたが許可を出すと言っても最終的な申請は国王陛下になるのでしょう?

そう簡単に申請が通るとは思えないけれど。」


「そこは私の腕のみせどころだろう?

それに私の友人になってくれた君にいいところを見せたいからね。」


流し目でこちらを見る姿に心を奪われる女性は多いのだろう。

彼は自分の魅せ方をわかっている。

しかしその仕草で相手を虜にさせてしまうことがあることもわかっているだろうに

私に色目を使うのはどういうつもりなのだろうか。

思わず冷ややかな目になってしまう。


「おそらく少し時間はかかってしまうけれど許可は取れる。

いい返事ができると約束しよう。

けれど条件があるんだ。禁書庫に入るときには私も同席させてもらう。」


思っていなかった提案に少し驚く。


「禁書庫は本来門外不出の情報だからね。

君が得る情報が本当に誰かを害するものではないか確認させてほしい。

君がもし重大な情報を知りそれを悪用するようなことがあれば

私も王子としての立場を追われてしまうからね。

それくらいはかまわないだろう?」


彼の言っていることは至極当然だ。

彼が提供してくれるものの価値を考えるのならばこちらも彼の安全を保障しなければならない。


「もちろんです。無理な願いを言っているのはこちらですから。」


「わかってもらえてうれしいよ。これから友人としてよろしくね。アリス。」


こうして私は禁書庫に入るための機会を手に入れることができた。

しかしどこかこの交渉に負けた気がしているのは

気のせいだろうか。

読んでいただきありがとうございます。

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