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「何のつもりかはこちらのセリフだ。あろうことか師匠を攻撃するなんて。

しかも迷いすらしなかったじゃないか。」


やれやれといった様子であるがその赤い瞳はこちらを向いたまま

警戒をといているわけではない。

捕食者のような鋭い視線は私にむけられている。


マティアスもまた警戒を解く様子はなく杖を構えている。

むしろその緊張感が伝わってくるように私の肩を抱く右手には力が込められた。

どうしてこんな状況になっているのかわからない。

先ほどまでは和やかな雰囲気だったはずなのに。

エゼキエルに敵意を向けられるようなことがあっただろうか。

私にわかるのはマティアスが私を守ってくれていることだけだ。


「その子から離れなさい、マティアス。

俺の杞憂であればいいと思っていたが・・・。

おかしいと思わないか?

なぜ何年も手紙の1枚さえ寄こさなかった妹が突然会いに来た。」


(・・・どういうことなの?)


手紙なら何枚も書いて送ってきた。

返事がなかったのはマティアスの方ではなかったのか。

驚いてマティアスの横顔を見上げる。


「俺が魔塔主だと言ったとき大抵の人間の反応は同じだ。

本当にこんな奴が魔塔主なのか。もしくはこんなに若い奴がと驚くはずだ。

たとえどんなに表情に出さないようにしていてもその目を見ればわかる。

だが彼女はそのどちらでもなかった。

あいにくと人前にでるような人間ではないのでね。

俺の顔と正体を知っている人間なんて限られている。

君の反応はまるで俺のことを知っているようだ。

なら、目的があってきたはずだ。」


赤い瞳がすっと細められた。

自分の内側まで見極めようとする視線。


「それだけの理由で俺の妹を害そうとしたのですか。

それでは証拠になるようなものがないはずです。」


マティアスが固い声で言った。


「証拠ならある。」


そう言うとエゼキエルは私を指さした。


「君はが隠しているその力はなんだ?

マティアスにはわからなくても俺にはわかる。

もう1度だけ聞こう。なんの目的でここに来た。」


(・・・まさか、聖女の力がわかるの?)


エゼキエルがさしているものは十中八九聖女の力のことだろう。

どうしてわかったのだろうか。その印である紋章も今は見えないはずなのに。


「たとえそうだったとしても目の前で妹が危険にさらされるのを黙ってみているわけにはいきません。

あなたが妹を害そうとするなら俺は全力でそれを阻止するまでです。」


「お前がそれを言うのか?

俺の力はお前が1番よくわかっているはずだが。」


そう言ったエゼキエルの掌が光り出した。

雷をまとったかのようにバチバチと音をたてているそれは

何かわからなくても肌で危機を感じる。


「勝てないとわかっていても俺にだって譲れないものがあるんです。」


マティアスは私をかばうように杖を構えた。

どちらがいつ先手を打ってもおかしくない

緊迫したその空気に終止符を打ったのはエゼキエルだった。


「わかった。ここは俺が引こう。本当にお前は一途すぎる。

だが彼女が隠している力は確かめる必要がある。これは魔塔主としての決定だ。

それは理解してくれるだろ?」


降参したかのように両手を挙げている。

エゼキエルの言葉にマティアスは顔をしかめた。


「・・・・妹を危険にさらすことがなく、俺の同席を許してもらえるなら。」


しぶしぶといった様子でマティアスは条件をだした。


「わかったよ。まったく怖いお兄様だ。

・・・しかし、彼女の力どこかで感じたことのあるものなんだよな。

・・・・何だったかな。」


そう言ったエゼキエルはこちらに向けていた視線を外して

顎に手をあてて何やら考え出す。


その様子をみたマティアスが息をついて私を見た。


「驚かせてすまない、アリス。怪我はないか?」


「大丈夫です。ありがとうございます。お兄様。」


マティアスの心配そうな顔に笑顔で答える。


「そうか。よかった。急に引っ張ったりしてすまなかったな。

それから、あの人のことも。」


そう言ってエゼキエルを見る。

まだ何か考えこんでいるようだ。

首をひねってうなっている。


「普段ならそう攻撃的な態度をする人じゃないんだが・・・。

少し神経質になっていたみたいなんだ。どうか許してほしい。」


そう言ってマティアスが頭を下げた。


「そんな、誤らないでください。それになにか誤解があったようなのです。

私、お兄様に手紙を送ったことは何度もあったのですが・・。」


「そうだ思いだした!」


エゼキエルの大きな声にマティアスと共に振り返る。


「その力、ドラゴンのものだろう。」


「・・・・・・・は?何言ってるんですか。」


得意げなエゼキエルの声とは正反対な冷たいマティアスの声が応接室に響いた。

読んでいただきありがとうございます。

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