オッサン運転の特徴
悪口エッセイ注意
大型トラックドライバーをやっております。
一日平均700kmぐらいを走りますが、日頃公道を走っていて、もっとも『邪魔だなぁ』『道路から消えてほしいなぁ』そして『多すぎるなぁ』と思う、公害のような種類の運転をされるお車がいらっしゃいます。
『運転が下手』といえばご老人、女性、初心者みたいに言われることが多いと思いますが、そんなもの比較にならないほど害ある運転をされる人種、それは──
オッサン
です。
先に断っておきますが、ここで私が言う『オッサン』とは『オッサン運転をするひと』のことで、中年男性すべてがこれに当てはまるわけではありません。
中には『紳士な運転』『上手な運転』『交通全体を安全かつ円滑に導く神のような運転』をされるおじさまももちろんいらっしゃいます。
また、オッサン運転をする女子や若者などもいるのでややこしいかもしれませんが、オッサン運転をする代表選手は間違いなくオッサンです。ゆえにそう呼ぶしかないのです。
オッサン運転をしないまっとうな中年男性の方々には先に謝っておきます。
ではどういう運転を私がオッサン運転と呼んでいるのか、それを明確にいたしましょう。
オッサン運転の特徴をまず箇条書きにします。
・自己中心的
・他罰的
・強引
・攻撃的
・譲り合いをしない
・自分の前に車が入ることを許さない
・車間距離を常に詰める
・基本的にキープライトまたはセンター
・自分は正義だとおもっている
・自分は運転がうまいと思っている
・『みんなやってるだろ』が口癖
・一人称が『俺ら』
・テレビを見ながら走る
・強い車にはヘコヘコする
・弱そうな車には偉そうにする
・合流はぶつけに行く
・交通全体の安全と円滑なんかよりも、自分一人だけの安全と円滑を重視する
まだまだありますが、このへんでやめておきます。
日頃のうっぷんがあるため書きすぎてしまいましたが、最初の四項目すべてに当てはまるような運転はオッサン運転と呼んで間違いないような気がします。
とにかく公道で事故や渋滞が絶えないのはオッサンのせいだと私は思っています。←言い切った!
ではオッサン運転の具体例を挙げてみましょう。
オッサンA『合流地点で左から入ろうとしてきた車がいたのでアクセルを踏み込み、ブロックした』
オッサンB『合流しようとしたら本線の車がブロックしてきたのでアクセルを踏み込み、そいつの前に強引に入ろうとした』
意地の張り合いですね。
こうして接触事故を起こすのがオッサンです。
お互いに相手を悪者と決めつけ、自分を正義だと頑なに信じ、互いのメンツを賭けてぶつかり合うのがオッサンなのです。
もちろん、どちらか一方が非オッサンなら事故にはなりません。Aさんがふつうのひとならブロックなんかしませんし、BさんがふつうのひとならAさんの後ろに合流します。
事故は同じレベルの者同士のあいだでしか起こらないと言います。
オッサンとオッサンが出会うと、事故になるのです。
『事故』という言葉は『滅多に起こらないこと』という意味だそうですので、前に挙げた例のようなことは滅多には起こりませんが、毎日のように起こりそうになっているのは見かけます。
片側二車線以上の道路で、合流してきた車が本線の車とかぶったら、本線のほうが優先ですので合流車のほうが速度調節するのが基本ですが、オッサンに言わせると『本線の車が右に車線変更して退くのが基本だ!』なんだそうです。その『間違った基本』を押しつけるために、ぐいぐい幅寄せをしてきます。『退かんとぶつけるぞ』という勢いです。退かないと本当にぶつけてきます。オッサンから隣車線は死角になっていて見えないはずなのですが、そこには何もいないと決めつけてぐいぐいきます。合流車線があと2kmぐらいあってもそんなもの見えていません。早く車線変更しなければ死んでしまうサメのようなものです。
ここで右車線の後ろにオッサンの乗るポルシェが隠れていたら、三台で二車線ぜんぶを塞いでグチャグチャになる事故になり、通行止めになります。
いい加減にしてください。
『みんなやってること』をやらないと怒りだすのもオッサンの特徴です。
たとえそれが『みんなやってる間違ったことをやらずに正しいことをしている場合』でも、みんながやってないことをやると激怒します。
詳しく書くのは面倒だし過去に何回も書いた覚えがあるのでやめておきますが、私はキープレフトしていることを理由にオッサンに激怒されて通報されたことが何度かあります。
また、何でもとにかく自分が正義だと思っていて、偉そうなのに、おまわりさんにツッコまれたら急にしおらしくなってしまうのもオッサンの特徴です。
私が大型トラック初心者だった頃、高速道路のサービスエリアに入ったところ、オッサンが通路にトラックを停めていて誰も通れなくしていたことがありました。
初心者だった私はバックするのが怖くて、オッサンに「邪魔なんですけど」とか言いにいくのも怖くて、車体感覚が未熟だったこともあり、無理やり通ろうとして、何度も切り返しているうちにその邪魔トラックのミラーに接触してしまいました。
瞬時にオッサンが運転席から飛び出してきました。
「おい! おまえ! 何ぶつけてくれてんだ!」
「すみません……。狭いけど通れるかと思って……」と、私はつい、謝ってしまいました。
「みんなここは通れないと見てあっち通ってるだろうが! なんでこんなとこ通ろうとするんだ!」とオッサンは激怒し、電話で警察を呼びました。
やってきたおまわりさんが言いました。
「通路を塞いで停めちゃだめですよ、オッサン……。えっ? 彼女が強引に通ろうとしてぶつけたんじゃなくて、何度も切り替えしてるうちにぶつかったんですか? それ見てたならバックして退いてあげてくださいよ、オッサン」
途端にオッサン、ヘコヘコして、しおらしくなって、私に謝ってきました。
他にもこれも私が大型初心者の頃、鋭角の角を一回で曲がりきれなかったので、ハザードを点けて少しバックしたら、後ろにいた乗用車に軽くですがぶつけてしまったことがありました。
オッサンが乗用車から降りてきて、激しく怒りながら警察を呼びました。
やってきたおまわりさんに、私が言いました。
「バックモニターついてないんですけど、1メートルだけバックすれば曲がれそうなので、ハザード点けてゆっくり1メートルだけバックしたんですよ」
おまわりさんが言いました。
「ああ、じゃ、後ろの乗用車の車間距離不保持やね」
オッサン、愕然としてました。
まぁ、それでも停まってる車にぶつけたので私のほうが全面的に悪くなりましたけど……
他にも、私がまっすぐ走っていたら横からぶつかってきておいて、オッサンの乗用車はグチャグチャに、こっちのトラックはどこに傷がついたかよくわからないみたいになったことあったんですけど、私がニコニコしてたらつけ込まれて、私のほうが横からぶつかってきたことにされたこともありました。
オッサン運転の厄介なところは、とにかく自信をもってらっしゃることです。
何かトラブルがあったらオッサンの豊富な間違った経験と悪知恵で全力で他人を悪者にしようとしてきます。
自分は運転が下手だと思ってらっしゃる中年男性はオッサンではないと思います。「自分がルールだ!」みたいに自信満々なのがオッサンの特徴ですから。
そしてご自分は運転が上手いと思ってらっしゃるので、女性や老人をバカにします。バカにしながら、女性や老人と同じように、キープレフトも防衛運転もできないというかしないのがオッサンです。自分だけの安全と円滑を守り、周囲の交通をグッチャグチャにしてしまうのがオッサンです。
そしてご自分の運転は完成されてると思ってらっしゃるのか、他人から何か指摘をされると激怒しはじめるのがオッサンです。
どうにかしてくださいとか言っても無駄なんです。
だからこのエッセイも無駄エッセイです。
失礼しました。