22:ホラー『自由研究の過程と結果とその後』
夏休みに入ってすぐ、自由研究をするため、山の上の神社にセミの抜け殻を探しに行った。
一定の成果を上げ、トンネル脇の参道の階段を下りて道路に出る。
すると、来たときには無かったものが道路の端に置いてあった。
中身が入ったままのジュースに、パンが幾つか。それらは未開封に見えた。
トンネルから冷たい風が流れてくる。
頬を撫でられた気がして、背筋がぞっとして、なんとなく、両手を合わせてから、早足にその場を離れた。
夏休み明け、同じクラスの立井さんの自由研究は衝撃の内容だった。
ひとかたまりに、飲み物と食べ物を、道の隅っこに置いておく。すると、頭を下げる人、手を合わせる人、お供えものをする人が現れるというもの。
私はまさに手を合わせた人……もしかして見られていただろうか? 恥ずかしい……。
おかしいとは思ったのだ。この田舎町では、死亡事故があればまず耳に入ってくる。
ヒグラシが鳴く頃、その死の知らせは当然、私の耳にもすぐに入ってきた。
夏の盛りに見た、トンネル下の光景を思い出す。
ジュースにパン。
立井さんは、死に場所を探していたのだろうか。
見ず知らずの架空の死者のために、頭を下げ、手を合わせ、お供えものをして、冥福を祈る人達がいる。
そんな光景を見て、立井さんは安心したのだろうか。
自由研究をして、自分の死後のその場所の様子を、想像したのだろうか。
参道を上がる。
山の上、トンネルの上から道路を見下ろし、立井さんの死を思う。
袋から、コンビニで買ったジュースとパンを取り出し、地に落とす。
パンは……よく分からない。
でも、トマトジュースは、道路に赤く散った。
夏ホラーに間に合わず……。
道路に物を置く場合、道路占用や道路使用の届け出が必要になる場合があります。道路を管理する役場や警察署に、届け出が必要かどうか確認することを推奨します。わりと最近、仕事の関係で道路使用許可について警察署に問い合わせたら、お金(約二千円)がかかると言われてビックリしました。
交差点とかで、よくチラシ配りや演説をする国会議員がいるのですが、道路使用許可をとっているのかしらと、ふと疑問に思いました。




