15:『疎外感』
目に見える部分と、見えない部分に、自分の心は浮き沈みを繰り返す。
新しいクラスになって一日も経たないうちに、女子のグループは形成される。
自分はすぐそばの席の子とおしゃべりした。
雰囲気の柔らかい、おっとりとした優しそうな子。
仲良くなれそうな子がいて、ちょっと安心。
半日なのは初日だけ、二日目は実力テストでもう六時間目まである。
お昼を一緒に食べてくれるといいな、と思っていたら、新しくできた友達は弁当持参ではなかった。前のクラスの時の友達と一緒に、学食に行ってしまった。
どうしようかと、一人ぽつんと途方に暮れていたら、一年の時に同じクラスだった子が声を掛けてくれた。その子のいるグループに混ざって昼食をとる。たった一日半、されど一日半。混ぜてもらったグループはもうちゃんとその子達のグループになっていて、話の内容にもスピードにも、自分はついて行けなかった。それでも場の空気を読み、微笑を顔にはりつけ、時々相鎚を打ち、時々「あはは」と乾いた笑い声を上げる。まるでテレビの演出のよう。そこに居るだけの、効果音のような音声の一部。ただその子達と弁当を食べているだけの存在の、居ても居なくてもいいような自分。
それから更に数日が経った。声を交わす友達が最初の頃よりは増えた。愛想笑いではなく、自然と笑い合える関係。
でも、距離を感じる。確かに友達が目の前にいても、自分には目に見えない距離、時間がある。
ほら、また隣のクラスの子がやって来た。なんの話だろうか? 自分は入っていけない、友達と、その友達の会話。
部活動、塾、習い事、出身中学、一年時のクラス。
友達と自分の間に通り抜ける隙間風。
気にしているのはきっと自分だけ。
気にしなければいい、そんなことは分かっている。
でも、うじうじぐだぐだと、気にしてしまう。
気になってしまう。
所詮、自分は大勢の中の一人で、その子の中の絶対じゃない。仮に自分がいなくても、その子の世界はきっと成り立つから。
じゃあ、自分の世界は?
友達がいなくなったら……。
賑やかな教室の中で、息を殺して生きる自分。
一人が平気なふりをして、一人が好きなふりをする。
「おまたせ! 次、化学室だよね、急ご?」
ぽんと軽く叩かれた肩が、ぽうと温かくなる。
彼女の声が耳に温かい。
彼女の表情が、目が、自分には温かい。
目が潤みそうになる。
声が震えそうになる。
でも、エンジンをふかせ、明るく見せる。
「うん、早く行こ!」




