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1:詩かエッセイか『自分の老後を考える』
年老いた自分を想像する
腰は曲がり
皮膚にシミが出て
肌は乾燥し
血管が浮いている
延びる寿命
伸びるゴム手袋
沈んでいく平泳ぎ
常に輪ゴムか髪ゴムが手首についている人間
パンの食べ掛けの袋をいつでも輪ゴムでとめることが出来る能力
子の髪をいつでもさっと括ることが出来る能力
実のりある老後の生活を望む労働者
延びる定年
延びる年金受給開始年齢
沈んでいく勤労意欲
あの上司でさえ定年まであと十年
自分の老後は何歳から?
老後の自分はシワシワのヨボヨボのブヨブヨか
子の扶養に入れてもらえるかしら
自分はもう若くない
決してもう若くない
歌手も、役者も、芸人も、気付けば年下
店員も、美容師も、看護師も、気付けば年下
若くない
もう若くない
それなのに、老後がとてつもなく遠い




