6・ぶん殴る事が正義であろうがなかろうが
6・ぶん殴る事が正義であろうがなかろうが
「おい、何やってんだテメーら?」
俺が、学院内巡察をしていると。武道館裏の陰で、女子生徒の悲鳴が聞こえたような気がしたので。ロングメイスを構えて、その陰になっている場所に立ち入ると。
一人の赤い髪の毛を持つ女子生徒が、五人の男子生徒に輪姦される寸前の様子。
そこに入って行って。俺はそのように言葉をかけ、威嚇行為のためにメイスを一旋回させた。
「あー? テメエ、ジャヴァじゃねえか? 学院内一の不品行男に。俺らの不品行を止める権限なんてあんのかよ? あー?」
あったま悪そうな汚ねえ金髪の男子生徒がそんなことを言う。こいつの金髪は、天然の光属性の血のもんじゃねえな。地属性の茶色い髪の毛の奴が、もてはやされがちな光属性の血にあこがれて、脱色剤で色抜いたかなんかしたんだろう。
「ああ、あるね。俺の不品行は、『上質な不品行』だ。お前らの『下劣な不品行』とはレベルが違う」
まあ。俺もよく言うもんだがなぁ。ただ、言っていることに矛盾はないつもりだ。俺は、実際のところ。「女を襲った」事はない。「向こうから言い寄ってくるように仕向ける」ことが巧いだけだ。言い寄らせた後にお互いに遊んで。しかし、大体こちらが飽きるのが早いので、俺の別れ話を受けた女が「捨てられた」と言い張るだけの話である。迷惑なことだ。
「何言ってんだてめぇ? 不品行に上質も下劣もあるかよ。女を犯すことには変わりがねぇだろうが!!」
ダメだこりゃ。こいつ、ちんちんを女の子の穴に突っ込むだけがエッチなことだと思ってやがる。わかってねぇなー。心のやり取りの末に、お互いに納得して体を重ねるのが本物のエッチだってのに。
「まあ。本来ならばな。俺の知ったこっちゃない。そのあんまり可愛くない赤毛娘がどうなろうが。あんまり興味がないんだが。『点数』稼げるんだよなぁ」
「? 『点数』? 何のだよ? この邪教坊主!」
「生徒会副会長としての任を『解除してもらうための』『必要点数』だよ。どうやら、放校されずに生徒会役員を辞めるには、学院長を納得させるだけの功績をあげなきゃいけないらしいんでな」
俺がそこまで言うと。男子生徒五人は爆笑した。
「そういえば。公示されてたな。正面玄関の掲示板に。お前が生徒会の副会長の任についたってこと。だとしたら、だ」
汚い金髪男は、女子生徒に欲情していたよだれを腕で拭うと。
「おめぇら。やっちまおうぜ。ジェヴァの奴は強い。それは、この学校での『邪』属性の奴らなら誰でも知っていることだが……。今のこいつは生徒会役員だ。しかも、副会長って重任を持ってやがる。つまーり!!」
残り四人の男子生徒が、金髪野郎の言う事を理解したようだ。
「こいつは、『点数』を気にして、一般生徒に暴力をふるえないっ……ぎゃっ!!」
あほなセリフを残してぶっ飛んで。武道場裏の樹木に激突する金髪野郎。俺が、鉄製のロングメイスをぶん回して何の遠慮もなくぶん殴ったからだが。
「そこのところはな。『自律的に思考行動することを許す』という、生徒会長のお墨付きを貰ってる。ってわけで。お前ら、足腰立たなくなるまでボコってやるからな!! ハハハハハハ!!」
あー。きもちいい。これだから、「邪」属性は辞められねぇ。
気に入らない奴、下品なやつ、不快なやつをロングメイスでぶん殴っていると、心が浄化されるようだ……、ほぅ。
五人の男子生徒が血反吐はいてぶっ倒れ。その中に一人も死者がいない事を確認すると、俺は襲われていた赤髪の女子生徒に声をかけた。
「お前さ? もう少し自衛ってもんに気を配れよ? ここは闘士育成高等学院だ。血の気の余っている奴もたくさんいるし、何よりもヤリたい盛りの年頃だからな」
そう言ってやると、赤毛娘は焦ってうんうんと頷いて、そそくさと去っていった。