20・刀術
20・刀術
「しっ!!」
うおー! おっかねえ!!
セルフィナの奴、敵校の中堅に。もんのスゲエ重みの袈裟切りをぶっ叩き込んで。
一撃ノックアウトっていうか、大出血させた。
「お粗末でありました」
そういって、刀の血を振るって鞘に収めるセルフィナ。お前怖い。
敵校の副将と大将の顔色が見事に変わった。
そもそも、我らが母校アイゼントゥーアの剣道部は部活動レベルでは大した強豪校ではないらしいのだが、このおそらく実戦をどこかで踏んでいるであろう刀術を持つセルフィナには、敵校の連中も何やら恐怖心を抱いたらしい。
敵校のマネージャーの女僧侶が急いでぶっ倒れてる中堅に駆け寄ってきて、治癒術を掛けているが……。ありゃ、そう簡単には塞がらんぞ。
その間に、セルフィナは一回こっちに戻ってきた。
「どうだ? 凄いだろう? 私は」
他の奴の前じゃ、慢心に映るような言葉。こんなもんを吐くほどセルフィナはバカじゃないが、なぜか俺にだけそう言った。
「ふむ。いいところを見せたくなったか? 俺に」
俺がそう聞くと、セルフィナはにっと笑った。
「まあな。お前には負けたくない。色々な意味で。学業成績でもな」
「そりゃ残念だな。俺は、学年一桁は常に維持している。ケアレスミスがなければ、大体学年首席だ。学業に関してはな」
「だから癪に障る。私とて、頭は悪くない。ただ激昂型の性格のせいで、テストの時に脳の機能にムラが出る。それさえなければ、お前になど負けん」
「あのなぁ……。セルフィナ。お前のその激昂型の性格が、お前の魅力を作ってんだぞ? 俺みたいに怜悧型になってみろ。おまえ、生徒会長に選ばれるような人徳を失うぞ」
「……一理あるな。お前が言う『キャラ立ち』の部分は、私の自覚しているこの激昂型の性格が生んでいるものだからな」
「だから。お前は、お前のままでいろ。磨きをかけることは大切だが、基本スタイルは変えるもんじゃない。その人間の本性はな」
「そうか。何かいいことを聞いたような気がする。お前、色々分かっているな? 不思議なくらいに」
ちょっと可愛げに笑うセルフィナ。俺は少し照れたので、言い訳のように言葉を紡いだ。まあ、常々思っていることを口に出し始めたんだが。
「いや、な。俺は邪教崇拝の家柄の育ちで。その影響で人間のダークサイドを見てきたり、洗脳の現場に居合わせていたりすることもあったんだ。で、俺の出した結論。『聖』であれ『邪』であれ『中庸』であれ。人間ってもんは、個性ってもんを持ってる。そいつに磨きをかけるために、生きているのであって。何者かに変わることを強要されたり、思想を塗り替えられたりしたらまあ、『人間としての機能がガタ落ちする』ってことがわかってるだけだよ」
「……随分と深いことを言う……」
「そうか? まあ、今は余計なことを考えるな。あと二人、ぶった切ってこい、セルフィナ!」
俺はそういうと、セルフィナの背中に平手打ちを叩き込んだ。
「いった! お前、意外と力あるな! まあ、いい。気合は入った。行ってくるぞ!」
セルフィナはそういうと、敵の副将が蹲踞して待っている試合場の開始戦まで歩み寄って。蹲踞の姿勢をとった。
「天麩羅そばって言ったろーが。なんでお好み焼きなんだよ⁈」
試合が終わった後。どうしても牡蠣のお好み焼きが食いたくなったというセルフィナに連れられて。季節外れの牡蠣という結構高価なものを使うお好み焼きの店で。俺はぶつぶつ言った。お礼は高けりゃいいってもんじゃないんだけどなぁ。




