19・剣道大会
19・剣道大会
俺は目を見張った。
『凛然』そのままの言葉を体現したような、初めて見るセルフィナの侍衣装を見たからだ。
こいつ、色気がないと思っていたが……。武者姿になっているときには、普段の学生服の時にはない、一種独特の「戦いに臨む者の」色気が噴出してやがる。
場所は、剣道大会会場。セルフィナがアイゼントゥーア闘士学院の剣道部員に声をかけると、大将が急病でぶっ倒れて意気消沈していたにも関わらずに、士気が一気に上がる。
そうか、セルフィナは。刀術の腕は相当なもんだしな。なにしろ、「侍」の職で生徒会長になるくらいだ。実際俺もコイツの居合切りを辛くも防いだが、ヘタしたら胴体を両断されるところだった。
「剣道部諸君! 私が来たからには、負けはない! あとのことは任せる心持ちで、思いっきり戦ってこい!!」
試合前、そんな檄を飛ばすセルフィナ。おいおい、大した自信だなお前、とかも思わなくないが。まぁ、実力はある女だ。
「それから! 怪我を負っても私の下僕であるこの僧侶のジェヴァが怪我を治してくれる! 負傷を恐れることなく掛かれ!!」
おい。勝手なこと言うな、俺がいつお前の下僕になった? と思わなくもなかったが、今日は天麩羅そばの高い奴をコイツに奢らせようと思っているので。俺は黙っていた。
セルフィナが剣道部員の士気の鼓舞を終えたころ。試合が始まりそうな様子。
俺は、こちらの学院サイドの待機席で。試合の様子を見ることにした。
「ちぇえええええええ!!」
「きえぇええええええ!!」
始まった、試合が。剣道部員が、敵学校生もこちらの学院生も問わずに。
威嚇の気合声を放って、間合いを取りながら。チャンスと見たら剣を振るう。
「ぐはっ!!」
おうわ⁈ 俺は剣道の試合は初めて見るが。こんなにあぶねーもんなのかよ。
剣技をもろに喰らったウチの学院の生徒が、内臓こぼしてのたうち回る。
「ちっ! 一敗を喫したか!」
そんなことを言い放つセルフィナ。怖えよお前。戦場に立つ奴の心構えとして、被害が出るのは当たり前って教育受けてるんだろうな。
「ジェヴァ。たのんだぞ。あの生徒はまだ死んではいない」
「はいよ。天麩羅そばのエビ天一本追加な」
俺はそういって、負傷した剣道部員の治癒行為に入る。
当然のようにだ。その生徒の負傷の痕は跡形もなくなる。これが、専門職の僧侶の腕ってモンだ。
そのあとも、試合は進んでいって。こちらの生徒が残り二人。副将の剣道部員一人と、大将のセルフィナ。敵学校の方はまだ三人残している。不利だなぁ、こりゃ。
俺は、セルフィナの様子を見てみたが。
らんらんと瞳を光らせて、全くビビっていない様子。
コイツ大概怖い。侍の家系ってのは、こんなのばっかりなのか?
副将までが敗れた、こちらの学院の剣道部。
勝つには、セルフィナが三人抜きをしなければいけなくなった。
「さて……。行くか!!」
不敵な笑みを浮かべるセルフィナ。宿題の時もそうらしいが。
追い込みのかかった状態のこいつは、本当に火がついて。
全ての能力が跳ね上がるらしい。そうとしか思えない自信の漲り方と、全く恐れを感じない様子。
コイツやっぱり怖え女だ。俺はそう思った。




