１・邪教の僧侶
１・邪教の僧侶
「はぁっ……！ ねぇ……。もう終わりなの？」
同級生のミーシァが、学生寮の俺のベッドの上で息も絶え絶えによがった後なのにまだ肉体を求めてくる。
「明日の授業、集中して受けないといけないからな。お前に使ってやる精力はこんだけ。もう帰りな、自分の部屋に」
俺がそう言うと、ミーシァは変な顔をした。
「ジェヴァ？ あんた、そんなに真面目君だったの？ テストの点数とか。気にするタイプには見えないけどさぁ？」
こいつは何にもわかってない。たとえ俺が邪教の僧侶であっても。テストの点数という無属性のポイントは稼いでおいた方がいいに決まっているだろうが。その点は、成績というモノは金と同じだ。
「頭悪い女だな。お前、この学院に何のために入ったんだ？」
そう。この高等学院は、アリーナで戦う闘士を育てる場所。四年制であるために、四年経てば自動的に闘士への道が開かれる。
だが、だ。
闘士というモノは、しくじれば自分がくたばる稼業だ。
そう考えれば、自分の技術を磨く期間として、有限なものとして捉えて。
必死こいて勉学や鍛錬に励まなければ、将来ロクな未来は開けない。
「そういうわけでな。部屋帰れ、さっさと。また性欲持て余したら呼ぶからよ」
俺も、女に冷淡だな。自分でもそう思わなくはないんだが。
産まれつきの銀髪に、紅い瞳。冷たい細面に、締った身体と長身。
しかも、俺の生家は邪神崇拝の司祭長の家柄だ。
そういったものを持っている俺に、寄ってくる女はいくらでもいる。しかもこいつらは、揃いも揃って俺の「持っているもの」ばかりに食いついてきて、「俺が求めるもの」は一切与える力がない。
まあ、そんなわけで。今年二年生になったばかりの俺だが、去年一年間だけでこの学院で何人の女を食って捨ててきたことか。まあ、人数は覚えてないので、なんとも言えんがね。愛想が尽きるような女しかいなかったことは確かだ。
「……ひっどいよ。そんな言い方ってない！ わたし、ホントにジェヴァの事好きなのに!!」
「そういう言葉を吐くもんだ、女ってのは」
激情をぶつけてきたミーシァをうぜえと思いつつも、俺は僧侶のローブに腕を通す。
「冷たいよ！ なんでそんなに冷たいの！」
ミーシァはさらに言い募る。
「お前よぉ？ 邪神崇拝の家柄舐めてねぇか？ 邪神の教えではな。『女は男の供物』って一文があるんだよ。まあ、お前も俺の供物になるに値した自分を誇っていいぜ。ウゼエこと言い始めたから、お前との付き合い切るわ。別の男探しな」
俺は、そう言って。ミーシァを部屋から素っ裸のまま蹴りだした。
そのあと、温情であいつが着てた服はドアの外に投げてやったが。
