15・帰郷
15・帰郷
「……相も変わらずかよ……」
他に方法がないらしいから仕方がないが。
俺はロドの御す馬車に乗せられて実家に帰った時に、大量に運ばれてきた妙齢の美女の売買奴隷連中を見て、この家は相変わらずに邪悪なことやってんなぁ、と。
色々と思い出した。
「父上。戻りました、ジェヴァです」
家長の席に、目をけいけいと光らせて。ある意味逝っちまってる目つきをした父上がいる。
「ふふ……。ジェヴァか。良く戻った。丁度、これから邪神への捧げものを奉納する儀式を始めるところだ。貴様もついてこい。長兄のコバルも、次兄のアザムも。祭壇を整える指示を部下どもや奴隷に下して、準備を整えている。もうそろそろ、それも終わるころだろう」
あー。アレをまた見せられるのか……。あんまり好きじゃねえんだけどなぁ。
美女奴隷を吊るして鞭打ったり、火であぶったり。トゲ付きの棒で殴打を加えたりして、最後には血を絞り出して殺す。
俺が幼少期に。アレを見せられた時は心底ビビったもんだが。
母上が、俺に諭したんだ。
「女というモノは、ああいうことをされることを悦ぶ性質の者もいるのです」
ってな。まあ、俺の女に対する扱いが歪んでいるのは、こういうモンを見せられて、こういう事をするのを当然という思想を持っている家庭に産まれたからかも知れない。
「ほお。ジェヴァか。相変わらず美しい顔をしている。私と今夜。床を共にせぬか?」
祭壇の間に入ったとたん。次兄のアザム兄貴が俺を見つけてそんな声を掛けてきた。うるせえな、コイツは。本当にガキの頃から、俺のことを猫可愛がりに可愛がっていて。甘ったるい声で話しかけ、やたらと自分のおやつを分けてきたりしてきた兄貴だが。
ある夜、突然。俺の部屋に忍び込んできて。俺を無理やり犯そうとしやがったので、ボッコボコにぶん殴って追い返したのだが。その後も、俺を性的に見ることを止めようとしない鬱陶しいやつだ。俺はこの邪教の司祭長家、ドライセン家の血を持っているが、同性愛の癖はない。アザム兄貴は、同性の恋人でも早く作れと俺は思っているのだがね。
「コバル。準備は整ったようだな」
ゾーム父上が、祭壇が整った様子を見て。長兄のコバル兄貴にそう声をかけた。
「はっ。万事よろしく出来上がりました。今宵の奉納祭。邪神イヴルと共に、我々も大いに愉しみましょう」
きっちりした礼儀を、嫌味に身に着けているコバル兄貴。ケチのつけようのない完璧な拝礼をする。だが。これだけ礼儀正しいのに、なぜか発散される嫌味というのも、ある意味濃度が凄まじいものだと思う。
「あなた。今宵の生贄達は美しく飾り立てましたわ」
俺たちの後ろから、祭壇の間に入ってきた母上、サームが変に色気が強すぎる声で言う。父上は、夜のアレの時に発するこの理性を狂わせるほどに色っぽい声が気に入って、母上を娶ったのだという話だ。
俺は。用意された席に座って、儀式が行われる様子を見ていたが。
何の興味も覚えなかったし、全く以って興奮もしなかった。
よくやるぜ、この家の連中は、と。自分もこの一家の一人であるのに、妙な冷静さと冷淡な感情が浮かぶばかりで。
よくわかっていない男ならば極度に興奮するであろう奴隷女どもの悲鳴や嬌声にも。
うるせえ、としか思わなかった。そして、妙に学校が恋しくなって。なんとなく思い出したのは……。
あの生気と清潔さあふれる生徒会長のセルフィナの笑顔だった。




