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13・邪術

13・邪術


「おっとぉ!」


 おいおい。いきなり斬りかかってきやがったぜ、この一年生ども。ヴォイゼが軽く鞘に収まったままのロングソードで、抜き身の剣をふるって襲い掛かってきた一年生連中をぶん殴っているが。


「集団による少数に対する刃物を持っての不意打ち。結構な邪な所業だな?」


 俺は、ロングメイスをくるくる回しながらニヤニヤ笑った。


「いいねぇ。そういう邪な奴ら。俺大好きだよ」


 ニヤニヤ笑いが止まらねぇ。こういう状況が、俺の最も好きな状況だ。


「邪知、邪道、邪行動。三拍子そろってんじゃないか、お前ら?」


 そう言った後。俺はロングメイスを投げ捨てて、両手で印を組んだ。

 そして、高速詠唱。とある呪文を放った。


「さーて。効果がどんだけ出るかねぇ……? ククククク……」


 まあ、ネタ晴らししちまうとよ。俺が掛けたのは。

思念増幅(しねんぞうふく)』っていう、頭の中の思いを暴発するくらいに激しく増幅する呪文だ。


 で、こういうもんをこういう連中に掛けるとな……。


「てっ!! てめぇ! 後ろから俺の事刺そうとしやがったな!?」

「何言ってんだ! おめぇこそ、俺に肘打ち打ち込もうとしたじゃねえか!」

「ああ? 勘ぐってんじゃねーぞ? 証拠見せろ!」

「おめえが怒ってんのが何よりの証拠だぁ!! 後ろめたいことがあるから、キレてんだろーが!!」


 ぎゃっはっはっは!! すげえ、こいつ等。全く呪文抵抗力ねえでやんの! 笑いが止まらねえぜ!


「おい、ジェヴァ……? これはなんだ? お前の仕業か?」


 ヴォイゼが、突然同士討ちを大規模におっぱじめた一年生連中を見て。俺に聞いてきた。


「ああ。この邪教崇拝の司祭長の息子の俺を。『邪性』で上回るような奴がいたら、プライドが傷つくんでな。やっちまった。『自分の中の疑心暗鬼を膨らませる』っていう術を掛けたんだよ。ククククク……。しっかしよく効くぜ」

「おまえ……。何かすっげえ引くんだけどよ……。邪悪なんだなぁ……」

「証拠は残んねえから。安心しとけよ。一年連中が、勝手に大規模なケンカをして。刃傷沙汰まで引き起こして、死者が出ましたって報告しときゃいいぜ」

「……まあ、なぁ。こっちが手を下すならともかく。勝手にやってんだったら止める必要もないよな」

「ああ。俺の術も、な。自制心がしっかりしている奴には効かないんだよ。その点、こいつらの未熟具合はいかに一年生とはいえ、子供レベルだ」

「……自制心の大切さを。思い知らされるぜ、全くよぉ……」


 激情型のヴォイゼは、自分に常に冷静であるようにと自制をかけているといっていたが。

 人間というもんは、「意図的に自分の育ち方の」方向性をつけることができる生き物である。

 自分がどうのようになりたいか、どんな風な大人になりたいか。

 そんなことをちゃんと考えていない、甘い子供には。


 「俺のような怖いお兄さん」の術中にハマらないようにと深く注意喚起(ちゅういかんき)しておきたいところだが……。

 一方的に襲ってきておいて、もし仮にその相手がやさしく教えを説いたところで聞きゃあしねえだろうよ、こういったガキどもは。

 だから俺も、自分の邪な術を振るうことに、なんの斟酌(しんしゃく)も同情も覚えなかったってわけだ。


 ホントバカだね、暴れ盛りなうえに、義侠心も理性も聖性も。それから、邪に対して抗するだけの邪性も弱い子供君たちは。

 俺は、そう思ったが。なんだか途中から。あんまり気分がよくなくなってきた。

 こういう状況、本来だったら俺は好きなはずなのにな。おっかしいな?

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