11・よくよく考えてみれば
11・よくよく考えてみれば
あれから一週間して。
「貴様らは! 何故私を痛い目に遭わせたのだ!!」
生徒会室での話。今俺たちの目の前にいるのは、あの夜ほどの迫力はない、昼間の吸血鬼であるジェイン先輩。
「……そういえば、あなたを攻撃する謂れはなかったな……」
生徒会長のセルフィナが、顎に手を当てて首をひねる。
「そうだ! 私があの寮で絶大なる人気を誇っているのを勝手にだぞ? 貴様らは私が吸血行為を行っていると勘ぐって! 襲い掛かってきた! 被害者だぞ私は!!」
「いや、風聞というモノは恐ろしいな、ふふふふふ……」
「ふふふふふ、ではない! 真偽を確かめもせずに、いきなり討伐行動に移るとは、今年度の生徒会は恐ろしく軽率だな!!」
全然反省している様子のないセルフィナに、いきり立って怒鳴りつけるジェイン先輩。まあ、身体真っ二つにぶった切られて。治るまで棺桶に一週間閉じこもっていたらしいからなぁ……。
「先輩」
「……なんだ貴様」
「ジェヴァ・ドライセンといいます。一応生徒会の副会長ってことになっています」
「ということは……。貴様にも今回の生徒会の不祥事の責任の一端を取る必要があるということだな」
「はあ。まあ、生徒会長が頭の固い単細胞のクソプライド高い女ですから。そこのフォローはしますよ」
「では聞くが……。今回の私の身体的精神的苦痛に、どのように謝するつもりか?」
「先輩。ワイン好きっすか?」
「? 貴族の嗜みだろう? 当然好きだが」
「肉は好きっすか?」
「羊の肉ならばな。ああ、未成熟なラムはだめだぞ。薫り高いマトンでなければな」
「羊っすか。まあ、いい店知っていますよ。生徒会の予算で。マトンローストでも食いながら、ワインを飲んで。今回の事は不問に附して貰えませんかね?」
「買収か?」
「いや、慰謝ですよ。慰謝会を開こうってんです」
「……お前は何というか……。俗物だな?」
「はい。俗物の極みですよ。邪教信仰の坊主ですし」
「『邪』の僧侶か……。まあ、いい。怪我も完治したところだ。それに、お前ら生徒会は強い。満月の夜の私を破ったのだからな。それに対して復讐戦を挑むほど、私も子供ではない。それで手を打とう」
「ありがたいっす。じゃあ、いい店教えますよ。今日の夜。空いてますか?」
「む……。そうだな。治癒期間はロクに食べ物も食わなかった。今夜だな? 時間を空けておく」
「おねがいしますよー」
ジェイン先輩は、自分に全く非がないのにいきなり俺たち生徒会に襲われた形であったのに、慰謝会開く程度で許してくれるらしい。
さすがに、「聖」属性の魂持ってるな。
過ぎたことをくどくど言わない。まあ、沽券にかかわる事態でなければ。
「ミオナ。一人20万」
「え? 何のことですか?」
俺が突然ミオナに話を振ると、ミオナはリムレス眼鏡の奥にキョトンとした表情を浮かべた目をして。それから答えた。
「慰謝会の予算。高級羊肉店のコース料理頼むからさ。六人分で120万用意して。金」
「はぁあああああ?! その店じゃないとダメなんですか⁈」
「ああ。それくらいの被害与えたからな、ジェイン先輩には。それが筋ってモンだ」
ミオナが頭を抱える。まあ、額はでかい。それは認めるが……。あの店、旨いし。




