序・生徒会長の就任式
序・生徒会長の就任式
「私が! 今年度の! このアイゼントゥーア闘士育成高等学院の生徒会長に選出された、セルフィナ・イーダである!! 見ての通り、女子の身ではあるが、そこらの男どもには剣先を触れさせる事すらできない剣技と、専門魔導士系の生徒にも劣らぬ魔導の腕を兼ね備えていると自覚もしているし、それが認められた結果ゆえに生徒会長の席が回されてきた。生徒諸君各々、私の運営する事になる生徒会の方針に疑問あらば、忌憚なく私に直言してくれたまえ!!」
すっげえ。颯爽とした様子ながらも、強烈な精気と意志力を乗せた挨拶をぶちかましてきた、今年度の生徒会長。セルフィナというらしい。直毛のプラチナブロンドに、燦燦と輝く青い目を持った、ちょいグラマーな長身の女子。どうやら、この四年制の高等学院の二年生らしいのだが。同じ二年生の俺とはえらい違いだ。
ホールの壇上で、滔々と熱弁をかまし続けるセルフィナの言葉は、そこらへんから俺の耳に入らなくなってきた。
なぜかって? 俺が自分の頭の中でいろいろ考え始めたからだ。
この世界、『ルールメイカー』には、様々なルールがある。
まずは、その人間の心が現れるという『魂属性』。
これは、「聖」「中庸」「邪」の三属性に分けられ、その形によって人間の能力を活かす『職業』に対する縛りが生まれる。
人々を守る職業である「侍」には聖か中庸でしかなれず、また、人々の上に立つ貴種である「聖騎士」には聖でしかなれない。
「魔導士」は自由な職で、聖であろうが中庸であろうが邪であろうが、精霊神を信仰していればなることができる。
「戦士」に至っては、おのれの腕力さえあれば精霊神を信仰する必要すらなく、聖邪中庸を問わずになれる職業である。
「暗殺者」という職業もあるが、これには利益のためにおのれの心を極限まで殺す冷酷さが必要になるため、ふつうは邪の心を持った奴くらいしかなれないし、なろうとはしない。
そして、俺の職業なんだが……。
「僧侶」である。
さらに俺は、何というか。とても素行が悪い。なにせい、邪神信仰の家系の育ちだからな。
「僧侶」はそれになるためにちょっと変わった条件があって。
「聖邪問わずに強い信心」を持つものがなれるという特性がある。
要するに、「聖神ホリア」を信じていようが、「邪神イヴル」を信じていようが。その想いが強ければ、僧侶の技である癒しの術を振るえるというわけである。
そう、俺は。「邪教の僧侶」という職業なわけだ。
ちなみに、壇上で熱弁をふるっていたセルフィナはすでに壇上にいなくなっていたが、あいつの言葉の一部が耳に残っていて。
あいつは、「聖の侍」という職業らしい。
なんにしても、勝手にやってくれだ。「聖人でござい」と顔に貼り付けた連中を相手にするほど、俺は愚直じゃないんでね。