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その口吻は毒より甘く  作者: 門音日月
第2章 港湾都市
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20話 丘の上からの風景、港湾都市

「見えるだろう、あそこが目的地だ」

「おおー、本当に水ばっかりじゃねえか」

 丘の麓に広がる街よりも、オレの視線はその先、どこまでも広がる水に行っていた。

「おやおや、そんなに目を輝かせて。海を見るのは初めてかね?」

「話にゃ聞いたことはあったが、本当に水ばっかりなのな。すっげぇ!」

 街の向こうに広がる水、水、水。海ってのはどこまで行っても水しかないって聞いてたが、本当に水ばっかりだ。

「この街の長が私の友人でね。色々と工面して貰ってるのさね」

「ひゃー、でっけぇ船だな。ここからであの大きさって、どんだけだよ」

 海に浮かぶ船を見て、思わず声が出る。

「私の話、聞いてないね」

 街が近づくに連れて街道の人間も増えてきちゃいたが、この丘のあたりでもう街の往来かってほどの人が行き来してる。

 風が吹き抜ける度に、かぎなれない匂いが鼻をつく。

「さっきから気になってんだけど、なんか匂わねえか?」

「これは潮の匂い、海の匂いだよ。さあ、こんな場所でぼうっとしてないで、行こうじゃないかね」

 丘を下り、街の風景が近づいてくる。

 建物と城壁に海が隠れる頃には、海の匂いよりも人の集まる匂いのほうが強くなってきていた。

「小さな町にいたわけじゃないだろうに、随分珍しそうに周りを見るんだね」

「ハッ、牢の外以外にいたことなんざ殆どなかったんだ。あんな街、思い出したくもねえ」

「なるほど、それは失礼。じゃあ、初めて大きな街に来た感想はどうかね?」

 城門を抜け、街の風景が広がる。

 左右に並ぶ高い建物、行き交う人と荷車。見慣れない服を着たやつもチラホラと見る。

 道に沿って、金属の棒の先端に透明な玉がついた何かが並んでいた。

「人も建物もすっげえな。ところで、この棒は何なんだ?」

「それは街灯さね。夜になると、先端の球体が光る魔術がかけられているらしいね。夜の街並みも、趣あるものだよ」

 へえー、あれが光るのか。見てみてえ。

「街を見て回りたいだろうけど、先に用を済ませてしまうよ。市庁舎に私の友人、レオナルドがいる筈さね」

「お前一人で行きゃあいいだろうが」

「何を言ってるんだい。小さい町じゃないんだし、どこに何があるかもわからないだろう。迷子にでもなりたいのかね?」

「ならせめて、飯食ってからでもいいだろ」

「食事もレオナルドに食べさせてもらえばいいさね。そろそろ向こうも昼食の頃合いだろうからね」

 お、飯食えるのか。

「よぉし、ならそいつの所に早く行こうぜ。飯だ飯」

「やれやれ、現金なものだね」

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