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その口吻は毒より甘く  作者: 門音日月
第1章 売身都市
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15話 屋敷へ

「ここがそうなのか?」

 デカい屋敷の門の前、女を見る。

「間違いない筈さね。色々と、聞いて回ったからね」

 色々と、の部分が気にはなるが、今はそんなことぁどうだっていい。

「ここに奴隷商の元締めが住んでいてね。闘技場の催しも、その元締が決めているらしいね」

 女が門へと進んでいく。

「番兵も使用人も眠らせて回ったから、入っても大丈夫さね。さあ、こっちへおいで」

 見れば門の横で、門番であろう奴らがどこを見ているかもわからない視線で立ち尽くしていく。

「オイ、テメェ何しやがった」

「いや何、私の目を見ると普通は意識を操れると言ったろうさね。昼間、物盗りにも同じことをやったろう。何があっても何をしても、しばらくは動けないだろうね」

 さらっと、怖いこと言ってねえかコイツ?

「ゴーヴァンには効かないようだけどね。今までの経験から言うと、精神力の強い者には効果がないみたいでね。私がゴーヴァンを買った理由の一つが、それさね」

 女は屋敷に入ると、迷うことなく足を進めていく。

「この屋敷にいる奴隷商の元締め」

 女が口を開く。

「近々ゴーヴァンを、殺そうとも考えていたそうだね。商品としての価値がない、からだそうだよ」

「ハッ、言われても驚きゃしねえよ。反抗的で買い手もつかねえ奴隷なんざ、そいつに取っちゃ邪魔なだけだろうからな」

 殺すか。毒でも盛る気だったのか、それとも闘技場で矢の的か。まあ、碌な方法じゃねえだろうな。

「まあ、そうなる前に連れ出してくれたことは、感謝してやるよ」

「それに関しては、私もここに入ったときに知ったことだからね。感謝は、そうだね……君の復讐が終わって、私について来てくれる時に言っておくれよ」

 その気味の悪い笑いを止めろと言いたい。

 なんで普通に笑えなねえんだ、コイツは。いや、これからヒト殺しに行くのに昼間みたいに笑われた方が、気味悪いな。

「しかし、でけえ屋敷だな。どこまで行きゃいいんだ」

「こういうのは、財力だとか権力を示すために大きく、豪奢にするものだからね。ベッドが柔らかくて心地良い以外は、あまり使い勝手は良くはないね」

「ハッ、ヒト拐って売りさばくような連中の屋敷なんざ、死体で作った山みたいなもんだろうが。何の自慢にもなりゃしねえな」

「ゴーヴァンはそう感じるのだね……ここだ」

 ドアの一つを開き中へと入る。

 部屋の奥にあるデカい机の前で、仕立ての良さそうな服を着た只人の男が視線を宙に漂わせ、座っていた。

「彼がそうだよ。名前はなんと言ったかね、確か」

「名前なんざどうでもいい。アイツ、起きてんのか?」

「起こしたいなら起こすが、逃げられるかもしれないよ」

「誰が逃がすかよ。逃げるなら、足をたたっ斬ってやるだけだ」

 剣を鞘から引き抜く。

「なら、起こしてくれ」

「殺すなら早くやった方が良いと思うのだけどね。まあ、ゴーヴァンがそうしたいのなら、そうすればいいさね」

 女が男の目を覗き込む。

 男の目に意識が戻ってくるのが、見ていて分かった。

 それと同時に、オレは剣を振り上げていた。

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