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こうして孤児は英雄と呼ばれた  作者: ななぽぽな人
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『英雄』の最後

きらりと一筋の流れ星が空を切り裂いた。


他の星がチラチラと瞬く中で、それは己の存在を誇示するかのように輝いていた。


闇に沈むかのように崩れていく王城。


今この国は最後を迎えている。


元は名のある王国であったが、諸行無常の理が永久不滅など許す訳もなく。


民の反乱の前にこうも容易く滅んでしまう。


「くそっ…くそっ…!」


最早廃墟寸前の城の中の一室から微かに声が聞こえる。


憎悪に顔をゆがめ、悲嘆に顔を濡らし、絶望に喘ぎ、諦念を飲み込んだ男の顔がある。


彼は一心不乱にとてつもなく大掛かりな機械を弄っている。


それはフォンフォンと無機質な音を部屋に響かせ、やがて起動する。


男はその機械の一部であるカプセル状の部屋に乗り込む。


ガチン、と施錠する音を聞き男は安堵した様子で、しかし憎しみは絶やすことなく。


この扉が開くことは無いと知りながら吐き捨てるのだ。


「必ずお前たちを、殺す。」


常人にはこの一言に限界まで押し込められた殺意がどれほど読み取れるだろうか。


1周回って最早優しげに聞こえるのかもしれない。


それくらいのひねくれた憎悪を世界にぶん投げて、この『英雄』と呼ばれた男は永いの眠りにつく。


しかし、その眠りはいつか───


「俺は諦めない。」


カプセルが液体で満たされていく。

優しい毒に侵されていく。


そしてその毒は、『英雄』の魂を優しく包み込む。


赤い流れ星は地平線の向こうへ沈んで行った。

その背に『英雄』の魂を載せているが如く。


──彼の復讐劇は今、幕を開けた。

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