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第八十二話:開催

「「「うおーっ!!!」」」

 僕等三人は博物館みたいな場所に様々な人種が集う其の光景を見て子供さながらに驚いて居た。


「すっげおいすっげ!!!」

「あ!!! あっちに良い匂いするぜなぁ行って良いか!?」

 ガルジェが小学生みたいにはしゃいで居る。

 僕が見て居無かったら屋台の方へ行って了いそうだ。


 でも、ガルジェの其の行為も分から無いでも無い。

 揚げ物の那の油の香りが嫌と云う程鼻腔へ漂って来るのだ。

 元々大喰らいの獣人の腹を空かせる為にやってるのじゃないかと思う位には。


 隣を見ると、ヷルトがおかしい位に鼻をひく付かせて居た。


「……未だ屋台は開いて無いと思うよ?」

 僕は彼の目を見詰めて苦笑しながら首を傾げた。

 今は仕込みとかをして居る準備段階だろう。


「え、嘘。」


「本当。」

 昔……三年前位だっけ。

 お腹空いたからと屋台の方へ行ったら開いて無かったのだ。


「今は午前十一時だから……多分十四時位にぽつぽつと、だけど開くと思うよ?」


「……えー、未だ三時間も有んじゃん……。」

 彼は肩を落として凹んで居る。


「確か他に展示とか、論文発表とかもやってるから先ずはそっち行こう?」


「わかった〜……。」





「うわぁ!! 何々此れ!?」

 硝子の中に封じ込められて居る其れを見て、最大限顔を近付けて居る。


「昔に使われてた魔導杖だね。」

 僕は彼の隣に座ってすっと言うと彼は此方に顔を向けて来た。

 

「……え、杖?」

 硝子には白い靄みたいなのが付いて居た。近付き過ぎだ。


「うん。昔は、杖を使って魔法を発動してたみたい。」


「へー……。」

 彼は又其れを不可思議そうに見詰め始めた。


「只、魔法の研究も進み、大きな魔法でも使わない限り要ら無い事が判明したんだけどね。」

 しかも、杖を使うのは効率が悪い。大きな魔法は魔石を使う様に成って行ったのだ。

 彼は頷いて居た。


「……昔は其れなりに持ってたぞ?」

 後ろから放たれた言葉に僕は驚いた。くるっと其の方向を向き返した。


「本当?」

 確か其う証明されたのって五十年前位の事。未だ確定されて無かったから信頼されて無かったのか?

 僕は五十年前位の其う云う細かい事象は全く知ら無い。記録に残って無いのだから当たり前だが。


「あぁ。俺は別に要ら無くても発動出来たんだが。何か、才能だとか何だとか言われた様な?」

 頭をぼりぼりと掻いてやや顔を歪めて居る。彼は記憶が欠けて居るみたいだし記憶を思い返して居るのだろうか。

 其れでも、ヷルトは正に歴史の生き証人だ。


「え。何其れ……?」

 別にそもそも魔法は才能何かでは無いのだ。

 普通に皆が使える物なのだ。


 ……元々魔力が薄い者は努力しなければ行けない物なのだけれど。

 けれど、其れでも、やり方さえ正しければ魔法は必ず努力が報われる物だから未だマシだ。

 魔力は必ず皆が持って居る物だし、才は全員に有るのだ。

 

「あぁ。」

 彼は腕を組んで居た。多分正しい事だと確認して居るのだろう。

 そうなのか、と僕は思った。其うか──


「……よぉ。」

 僕等が其の展示されて居る杖を見てわいわいと騒いで居ると唐突に後ろから声を掛けられた。

 肩を叩かれた僕は耳を頭にべったりと倒してぎゃっと魔物みたいな悲鳴を上げた。


「え……誰?」

 其処には茶色い犬顔の見知らぬ獣人が立って居た。


「ファルダだよ。ファルダ。」

 少し怒ったみたいに自分を何度も親指で指して居る。


「え。」

 其の着物みたいな洋服はややアラビアン、とでも言えば良いのか。

 かなり異国情緒溢れる衣装を着て居た。


 此う見ると外国から来た只の犬系獣人にしか見え無い。四組有る筈の腕の一組が無い様に見えた。

 ……魔物の変身能力って本当に凄いな。


 其んな恰好をして居るからか周りの視線を集めて居る様に見える。

 彼は全く分かって居無いみたいだが。


「誰だ。」

 ヷルトがのっそりを立ち上がり彼を睨み付けて居る。


「……ちょっと来て。」

 僕はファルダの腕を取り人気の少ない所へ行ってひそひそ声で話し始めた。


「……コイツは、魔物のヹード。」


「あ、コイツなのか。」

 ヷルトは頷いて居る。


「え!?」

 ガルジェが辺り一体に響く様な大声で喚くので其のマズルをガシッと掴んだ。


「んうううう……!!」


「助けたら……何か、ね。自分でも良く分から無いけど。」

 何故此奴が此処迄追って来たのも分から無いし、何故好かれてるのかも意味不明だ。

 そりゃあ、恩返しする何て御伽噺は聞いた事が有るけれども。本当だとはさらさら思って無かった。

 フェールは何故か少し恥ずかしそうな顔をする。


「あー、ヹードへの情けは幾年もって奴か?」

 ヷルトが何やら聞きなれ無い諺を言った。


「……何其れ?」

 其の諺は僕は知ら無い。

 其うなのか、と答えを求める様に横を見ると彼が僕を睨む様に見詰めて来た。

 完全に怒って居るみたいで牙を此れでもかと見せ付けて来る。

 思わず彼のマズルから手を話して了った。


「ごめんって……。」

「許す。」

 彼は牙を了ってぱっと笑顔に成る。思った依り素直で助かった。


「……如何したの〜? リング?」

 僕は又魔物みたいな声を上げた。

 ゆっくり確かめるみたいに見るとさっきの受付に居たボルメッダだった。


「あ、あぁ……えっと……此奴がちょっと気持ち悪いみたいで……。」

 必死に作り笑いをしてファルダの方を指す。

 彼は口を半開きにして首を傾げて居る。何だか可愛らしい。


「あっ、其うなの? 大丈夫?」


「……あぁ。」

 彼は其の顔の儘其う言うのでおかしく感じる。


「本当? 診療所に連れてこうか?」


「あ、いや……大丈夫。」

 彼女はきっと親切心からなのだろうけど、きっと常識何て知ら無い彼を其んな所に連れて行ったとて騒ぎを起こすだけだ。

 しょうがないから断るしか無い。


「……なら良いんだけど。」

 不気味そうかと思って居るのだろう、浮か無い顔をして居る。


「其うだ、此れ渡しとくね。」


「論文発表の順番。見といてね。んじゃ。」

 彼女は紙切れを一枚渡すと何処かへ行って了った。タッタと云う靴の合う音がした。

 きっと走り去って行ったのだろう。右手に何枚も紙を持って居たし。


 彼女が何処かへ走り去ったのを音でしっかりと確認をして彼に質問をする。

 

「……てか、何で来たの?」


「ん? 何処に居るのかなーと思って人に訊いて回ったら、何か小さい奴が学会に居るーとか言ってて。」

「で魔力を辿って此処に来たら居た。」

 凄い事なのにまるでさも誰でも出来るみたいに簡単に言う。


 魔力を辿れるのか。人──四大種族でも考えられ無い。

 僕は魔力は視えるけれども其処迄の事は出来無いのだ。


「成る程……。」

 僕はポケットに入れてたメモ帳を取って文字を連ね始めた。此う見ると研究者っぽいが、其んな大層な者とは違う。

 如何しても、気に成るのだ。始めた物はトコトン追求したく成るモノだ。


「其の服は如何したの?」


「何か建物にほっぽられた物を取って来た。

 小さい奴が服無いとか駄目とか言うから。」


「……多分其れ売られてる物だよ、勝手に取っちゃ駄目だよ……。」

 僕は大きく溜め息を吐いた。本当に、さっき彼女の問いを受け入れ無くて良かった。


「あ、其うなの? でもそしたら何で?」


「お金って云う……。」

 僕は彼の顔をちらっと見た。何も分から無い様なぼけっとした顔をして居た。

 もう少し明確に説明する必要が有るか。


「……まぁ何にでも使える万能な対価だと思ってくれれば良いよ。

 此の国では金属で出来た硬貨に成るね。」


「ふーん……。」

 多分、半分位しか理解して無いんだろうな……。


「てか、お前魔物なら何で話せるんだ?」

 ガルジェが当然の事を質問した。

 ……確かに、其うだ。何故僕は今迄気にもして居無かったのだろうか。


「俺は確か……父から習ったかなぁ。」

 右上を見て思い出して居るみたいだった。

 教育とかもするのか。本当に、賢い魔物だ。


「……なぁ、もうそろそろ良いよな……??

 お腹空いたよ……。」

 ガルジェが空腹で(やつ)れたのか飢えて居るみたいな途んでも無い表情をして居る。


 紙を見てみると、僕は最終日に発表する様だった。

 しかも十五番目と、最後。大トリだった。……大トリは苦手なのに。


 けれど、此れなら今は大丈夫だろうか。


「其うだね、行こうか。」

 僕はゆっくちと立ち上がった。

 ちょっと早めの昼食と洒落込もう。

途中思わぬ乱入が有りましたが学会が始まります。


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モチベに成りますので、宜しければ。

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