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第八十話:ビョルデバード皇太子

 僕は討伐から帰って来て外で準備をして居た。

 今銅像みたいな物の掃除を任されて居る。


 其の凍て付いて了いそうな冷酷な冬風に耐えながら雑巾みたいな物で拭いて居る。

 かなり汚い。半年程度放置されただけで此んなに汚く成るのかと。


 此の像は右手に本を左手に杖を持って掲げて居るのだが、背は高いし像に凹凸は多いしで物凄く拭き辛い。

 ……もしかして其の所為なのか? 放置されて居たのは。


 此れは国立魔導学会の創設者、カインドロフ・エル・ビョルデバードを讃えて居る像らしい。

 奇しくも僕と名字が同じで親近感が湧く。


 ヅィー族だし、多分関係は無いだろう。

 おまけに僕は獣人国の産まれらしいし。師匠から聞いた。


 そもそも、僕は小さい頃の記憶が少し残って居るだけで両親の性格は疎か名前すら知ら無い。


 今は王政では無いのだが、ミドルネームは王名、又其の関係者の証だ。


「おいおーい!!」

 細かい所迄熱心に、と云う依りもう殆ど執着心でゴシゴシとやって居ると後ろから声を掛けられた。

 誰だろう。男性声みたいだけれども、ヷルトの渋い声ともガルジェの元気一杯な声とも違う。

 表現が難しいが、(しわが)れた感じだけれども何処か人を惹き付ける様なかなり特徴的な声だ。


「はい、何ですか?」

 僕が像からぴょんと降りて声の方向を向くと奴はパサっと音と立てて地面に降りて翼を了う。

 僕依りか背の高いコウモリの獣人みたいだった。

 僕依り頭一個分位大きいサイズだ。……ヷルト位は有るんじゃないだろうか?

 そもそもコウモリって獣なのか? 一応獣人ってカテゴリでは有るらしいのだけれど。 


「あぁ、お前此んな所に居たのかー!!

 ありがとなー!!!」

 此れでもかと口角を上げてにかっと笑って居る。

 少しガルの其れに近い所が有る様に見える。

 ……僕が何かしただろうか?


「え?」


「いやいやいや、おいら水道長なんでなー、

 アイツラに悩まされてたんだよ、倒してくれたんだろ?

 だから此れは気持ち!受け取ってくれ!」

 彼が黒い翼で何かずっしりとした物が入って居る様に見える麻袋を出して来た。


 もしかして、那の了って居た扉は彼が住んで居る所何じゃないか?

 コウモリだし、住んで居てもおかしくは無い。


「……え!? ちょ……此れ……!?」

 中を眺めてみると、恐ろしい物が入って居た。


「んじゃーなー!!」

 僕が何も言えども彼は聞く耳も持たず何処かへ走り去って了った。





 僕は呆然として其の中身を魂でも抜けたかの様に眺めて居た。

 中に入って居た物は王族の紋章が入った印籠みたいな物だったからだ。


 紋章は狼とか犬みたいな横顔の、其のマズルの上に横線が入って居る。


 ……此んな物、僕が持って居て良いのだろうか。


 と云うか、途んでも無いぞ!?

 そもそも、何で此んなの那奴が持って居たんだ!?


 きっと何か有るだろうと思って彼の後を追う様に走って行った。




 さっきの橋の下へ来たのだけれど、鍵が掛かって居て通れなく成って居るみたいだった。

 此の野郎。


 ……あ、けれど鉄格子で出来て居る。

 やや隙間が大きくてもしかしたら僕なら通れるかも知れない。


 僕は右手に持って居た其れを一回置いて其処に顔を突っ込んだ。

 顔は其方にするっと抜けた。


 よし、此れならきっと行けるだろう。


「うぬぬぬぬぬコノヤロウ……!!」


 僕は其の儘体を肩を狂った様に捻ったり体かおかしく成ったのかと心配される様に動かして其れを抜けた。

 地面へと降りると鉄格子から手を伸ばして其れを取った。……良かった。

 

 迷路みたいな地下水道を又走って那の扉を探した。

 思った依りあっさりと見付かった。


「ちょ!? ちょっと!? すいません!?」

 僕は那の扉をドンドンと大きく音を立てて呼び掛ける。


「え!? ネ、ネコちゃんじゃないか、ど、どーしたんだ〜?」

 僕を見るなり度肝を抜かれた様に驚き、僕にとって不可思議にしか見え無い物を右手に持って出て来た。

 今はネコちゃんとか言われた事は如何でも良い。

 

「いやいやいやいや!! 此れ、此んな物流石に貰えませんよ!?」

 右手に持った其れを差し出し声を荒らげて彼を見詰める。


「……たまたま地下水道に流れて来ただけだ〜、多分高そーだしお金に成るだろ?

 生憎、おいら金欠なんだ〜〜〜。」

 其の事を言うとほっとした様に下を向いて息を吐くと僕を見上げる様にして眼を見た。


「いや!? いや此れ!? 王族の証なんですよ!!??」


「……へ? 王族? 此の国に王族は居無いはずだぞ〜?」


「いや、昔は王朝で居たんですよ!!?? で、此の模様は其の証何です!!」


「へー……。」

 僕が其う云うと首を傾げて其れを取る。


 へーじゃ無いんだ! 途んでも無い物何だぞ!?

 僕は子一時間彼の為に説教紛いだけれども其の事に付いて話し始めた。


「……だからこそ、博物館か何かに寄贈するべきで……!」


「ふーん……??」

 僕が真剣に話して居るのに彼は何処か納得して居無い様な顔をして居る。


「けど、まぁ、あんたにやるぞ。

 おいらが持ってても意味無いしな。」

 と言って僕の手にポンと其れを置いて来た。


「いや、僕だって……。」

 僕だって持ってても意味が無いと言おうとした其の時、言葉が遮られた。


「あんた名前は?」


「カインドロフ……クリングルスです……。」

 何の意味が有るのか分から無いけれど、僕はゆっくりと自分の名前を言った。

 其れを聞くと顔を大きく頷かせて顔を上げると顔をくしゃくしゃに笑顔にして見せ付けて来た。


 其の光景は少し恐ろしささえ有る。


「じゃ、良いな! 王様の名字と一緒じゃないか!

 やっぱりあんたが持つべきなんだぞ!」

 僕の手を無理矢理握らせて何故か満面の笑みを浮かべて居る。


「……えぇ……???」


「じゃ、おいら仕事有るから。」

 僕をクルッと外へ向けて押し出すと扉をパタンと閉めて了った。


* * *


「あ、あの……。」

 取り敢えず僕が此んな物を持って居られ無いと学会の受付をして居る彼女の元へやって来た。


「何?」


「……此れ、何ですけれど……。」

 おずおずと例のアレを差し出す。 


「え!? ナニコレ!?

 王朝時代の印籠じゃん!! 何処で見付けたの!?」

 彼女は椅子をガッと勢い良く音を立てて立ち上がり興奮した様子で見下ろす。

 角が僕に突き刺さって了いそうだ。


 僕は今さっき起こった事を丁寧に話した。


「へー……? アイツが……?」

 するとゆっくりと椅子に座り不思議そうに其れを眺めて居た。


「成る程ね、取り敢えず博物館に掛け合ってみる。

 もし、認定されれば本当に凄いよ!!」


「はい、お願いします……。」

 僕は彼女に一礼するとさっきの像の元へと戻って行った。

コウモリの獣人を調べる際にコウモリの事を調べてみたのですが、

資料が全然無い!! 少なくとも、ネット上には。


コウモリ、と云うざっくりとした生態は有るのですが個々の種別毎に詳しい生態が書かれた物は無いです。


うーん……如何した物ですかねぇ……。




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