第七十九話:学会の準備を
仰天して居る彼等を引き連れて中へやって来た。
人は少ないけれどもしっかりと並んで居た。
とは言え、其処迄綺麗に並んで居るって訳でも無い。
如何やら、受付を済ませて居るみたいだった。
其んな感じの話が聞こえる。
僕と同じ様に会場の準備に来た人は居無いのだろうか?
ガルジェが異様な迄に興奮しながら騒ぎ立てるので、
僕は彼を窘めながら列に並んだ。
其処は天井が高く美術館みたい大きな通路で厳かな雰囲気を放って居た。
憂鬱して居るかの様な気分に成る。
割り込みとかいちゃもん付けられるとか云う事も無く、問題無く僕達の番がやって来た。
「あ、リングじゃんか!!
ひっさびさー!」
受付に居たのはファール族の女性だった。
あぁ、何時も居るな、此の人。
名はボルメッダと言ったっけか。
「……こんにちは。」
「こんにちは〜、学会の会員証は?」
と言って手を差し出して来た。
僕は腰に着けたカードポケットから自分のサインと紋章の書かれた其れを差し出す。
「あ、後、二人……大丈夫ですか? 学会の会員証持って無いんです。
一応、片付けに参加するだけ何ですけど……。」
僕はおずおずと付け加えた。
「ん? あぁ、大丈夫大丈夫。」
「人数は多い方が良いからねー。」
彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべてペンを回すと何かを書いて居る。
多分名簿表とか其う云う物だろうか。
「てか其んな堅苦しい言い方やーめーてー。
何か、角がむずむずするよ。」
彼女はつるつるとした他の同種族依り短い其れをわさわさと触って居る。
と言われても……流石に、友達でも無いのにタメ口なのは……余り好きでは無いのだ。何か、人のプライベートとかにズカズカ踏み込んで了う気がして。
「あ、多分今屋台の設置をやってると思うからそっち手伝って来てね。」
と言って彼等に何か紙みたいな物を渡した。
多分地図だろうか。
「……あぁ、分かった。」
「うぃー!!! やってくっぜー!!!!」
ヴァルトは淡々と、ガルジェは元気一杯に声をあげた。
「……じゃあ、僕も行って来ます。」
彼等が何処かへ行って了ったので僕も其方に行こうとしたのだけれど、彼女に引き止められる。
「あ、ちょっと待って。
リングに頼みたい事が有るの。」
「……え?」
僕はすっと顔を彼女に向けた。
一体、何なのだろう?
* * *
彼女は僕を何処かの扉へ連れて来た。
橋の下の川に扉が在って彼女がじゃらじゃらとした鍵で其れを開いた。
「最近ね、此処等辺にってゴンバッツャェが出て来るの。
他のランヴァーズとかに頼んだらしいけどアイツら足が素早過ぎて……。」
やれやれと両手を上げて欧米風に呆れる。
「え、だったら尚更何故僕に……?」
正直困惑して了った。きっと表情にも諸に現れて居るだろう。
僕は如何せん其処迄ランクが高いとは言え無い。
他の人が無理なら、正直僕も無理なのでは無いだろうか。
「えーリング耳良いし足も速いでしょ?
私達じゃ無理だから!! ね! お願い!!」
彼女はずいずいと迫って来て祈る様なポーズをし、其の青色の眼で僕を見て来る。
此う言われると断れ無い。
僕は溜め息を吐いて吐き出す様に言った。
「……まぁ、良いですけど……
けど、僕は魔法が使えなきゃまともに戦えませんよ?
其処等辺は……如何するんですか?」
もし、剣で戦え何て言うなら其うするけれども、でも、魔法が有った方が良い。
と云うか魔法が無きゃ僕は如何しようも無いのだ。
「ふふふーん。大丈夫大丈夫。」
彼女はにやにやとし八重歯を見せてカバンの中をごそごそと探して居る。
「じゃーん!! 魔法許可証〜〜〜!!!」
「しかも一週間も使える!!」
其れはぱっと見金属で出来て居る様だった。
エカルパル語で上に『此処の区で魔法を使う事を許可す』
下に『十三月三十二日迄有効』と書いて有った。
(何処の通販番組だ。)
ツッコミたく成ったが止めて置いた。
……其れにしても用意周到過ぎる。
本当に僕に任せるつもり満々じゃないか。
「じゃ、やって来てねー!! じゃーねー!!!」
と言って無責任にも僕の背中を突き落とす様に押して来た。
ライオンか。
──取り敢えず、僕は彼女に言われるが儘に其の地下水道へとやって来た。
そもそも、此の世界に地下水道何かが有ったのがびっくりだ。
てっきり無いのかと思って居た。
都会だからだろうか?
其れは其れとして。
さっきから耳の筋肉をぐりぐりと動かしてあっちこっちへと傾けて居るのだが、鳴き声が全く聞こえ無い。
聞こえるのは水がせせら笑う音だけだ。
其れと、石とかが積み上がった様な巣が在った。
此れじゃあ、下水道の意味が無いじゃ無いか。
時々氾濫して居たし。
成る程。
此処には居無いのか。
僕は今来た道を引き返す事にした。
両端に人が一人通れる様なスペースが有るのだけれど、つるつるとして居て歩き辛い。
ぽと、ぽと、と水が落ちる様な音も聞こえる。
……本当に、此んな薄暗くコウモリさえ居無い様な所に、魔物何か居るのだろうか。
其の異常な静けさに思わず勘ぐって了う。
おや?
僕は何かを見付けた。
其れは木製の扉みたいな物だった。
がちゃがちゃと開けようと試みるものの鍵はがっちりと締まって居る様で開く気配さえ無い。
一体何なのだろう。戦争の時の名残りか?
其れを弄って居ると魔物らしき何かの鳴き声が聞こえた。
ガジュ、ガジュ、と歯を擦り合わせる様な音だ。
僕は地面を蹴って其方の方向へと向かう。
すると十字路に差し掛かった。
僕は右の道を選んだ。勿論、右から鳴き声が聞こえたからだ。
どんどんと音が近付いて来るのだ。
ガジュガジュ……ガジュガジュ……耳には其んな嫌らしい音が連続して聞こえるの。
正直言って不快だ。
すると小さい何かがばびゅっと動いた音がした。
絶対に逃さない。
「ヴォウトヲゥ・ヴィ!!!!」
まるで時が止まったかの様に奴が見えるので僕は其の一点に魔力を集中させて奴を氷漬けにさせた。
ゴト、っと音を立てて通路に落ちる。
其れを持ち上げてみるとひんやりとして居て冷たい。
じろじろと見てみると鼠みたいな魔物だった。
けれど鼠依りかはサイズは大きいだろうか。
白い色をして居て腕にはモモンガみたいに比翼が付いて居る。
一つ一つは其処迄力は強く無いけれども沢山数が居ると厄介なタイプだ。
冬の時期だから此処を住処にでもしてたのだろう。
そして、此奴の特殊な習性は石とか瓦礫やらを持って来て巣を作るのだ。
……ビーバーみたいに、川を塞ぐ様に。
本来は湖のほとりとかに棲んでる魔物だからそりゃそうだ。
何故此んなイレギュラーな事が起きて居るのだろうか。
おっと、未だガジュガジュと聞こえる。
さっさとぶっ倒して了おう。
* * *
僕は何十匹も倒した後、収納魔法から其奴の氷漬けを出した。
殆ど冷属性の魔法で倒した。モーレスには感謝しないと行けないな。
「うっわぁ……流石悪魔さんだねぇ、魔石も綺麗に残ってるし……。」
其の袋一杯に成った其れを見て違和感の有る台詞を言った。
「……悪魔?」
「え? 知ら無いの? 君、裏で悪魔のランヴァ─ズとか言われてるんだよ?
一人でパーティーも組まずに子供の頃から敵をばっさばっさと斬って行ったもの。
此んなのヅィー族のアイツ以来だよ。」
彼女は頬杖を突きやや早口で眉を顰める。
「……アイツ……って誰ですか?」
「ギュベル・ドヷルト。
五十年前位に活躍してたランヷーズ。
那の儘行けば順当にリ̈ルティㇺ・フ̇ェーキーは行けたのにねぇ。」
ギュベル・ドヷルト? ヷルト、だと?
何処かで聞いた事が有ると云うか、身近に居るじゃないか。
アイツ、那んなに凄い奴だったのか……?
もうちょっと、深く聞いてみよう。
「……あの、其のランヴァーズって一体何んな人だったんですか……?」
「ん〜? 確かねぇ、婚約者が居てね、
アルバム村に住んでて、君みたいに殆ど独りで討伐に行ってた。」
「時々組む事は有ったけどね。
かなり冷淡で淡々とした男だった。其処は君とは違うね。」
「で……そろそろ昇格する、てゆう時、謎の失踪を遂げちゃって……
悪魔に魂取られたとか神に殺されたとか自殺したとか色々な噂が有るけど、真相は未だに分かって無い。」
彼女は其れを置くと其の中から氷漬けの其れを出した。
如何やら、溶かして頭の辺りから魔石を取り出して居るみたいだった。
血が吹き出るからかタオルを敷いて居る。
血管が絡まって居る其れを紐を解く様に取って行く。
「其の婚約者の名前って分かりますか……?」
僕は見上げる様にし瞳孔を細めて真面目に訊いた。
確か彼女は婚約者の名前を覚えて居無かった筈だ。
もし、もし彼が妻ともう一度会いたいと思って居るならば訊いて置いた方が良いと思うのだ。
「何で其んな事訊くの?」
両手を机に置いて至極当然の事を訊く。
「……只の興味本位です。」
少し笑って嘘を吐いて了った。
流石に、那んな事言える訳が無い。
「ふーん、まぁ、良いけど……
残念ながら、僕は全部は知ら無いね。」
「けど、再婚したらしく苗字なら分かる。
フューバント。此処位だねー。僕が知ってるの。」
ナイフをくるくるとペン回しすると彼女は僕の方を見下げて作業を進めた。
「あ、此の魔石はリングにあげるよ。
多分必要でしょ?」
全部やり終えると赤く小さなカクカクとして居る其れをじゃらじゃらと音を立てて渡して来た。
「……え、良いんですか?」
思わず両腕を差し出すけれども、本当に貰っても大丈夫なのだろうか。
「倒したって報告が有れば良いからだいじょーぶ!」
とか言って彼女はガッツポーズをする。
……本当に大丈夫か?
何と無くヷルトの事が色々と分かって来ましたね。
宜しければ評価をお願いします。




