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第六十九話:迷子捜し

「え、凄い……君、飛行系の魔法も使えたんだね。」

僕等は絨毯に乗って空を飛んで居る。

彼女は前に立って僕等が後ろに居る感じだ。


箒は初心者でも扱い易く、絨毯は割と玄人向けだ。


其う言えば、何故魔法、飛ぶと二つのワードが合わさると箒、絨毯に成るのだろうか。

実際、此の世界でも其うだし。


「そうよ?」

彼女は僕の方を振り向いて悪戯っぽく笑う。


てっきり、一緒にヅェㇻ̇バに乗ったし、

僕みたいに使え無いかと思って居たのだけれど。


「え、お兄さんって、其う云うの使わ無いの?」

彼が僕を覗き込むみたいにして見てくる。

……あぁ其うか、此の世界の人達は其う云うのを当たり前に使って居るのか。


「いや、使わ無いって言うか……使え無いんだよね。」

僕は自分自身の皮肉と言わん許りに笑顔を作って言う。


本当だったら僕も色々な魔法を使いたい。

だけど、其れは望まぬ願いと云うモノ。


努力で如何にか成るなら良いが、

努力では如何にも此うにも上手く行か無い。


其れにしても、彼は座高も高いみたいだ。

覗き込んで居る筈なのに僕依りも上から見て来る。

角で身長が(なまじ)大きく見えると云う事も関係して居るのだろうか。


「闇属性と無属性位しか使え無いみたいよ。」

彼女は再び前を向いて絨毯を少し横へと移動させる。

僕達も其れに釣られて体がやや横へと動かされる。


「ふふふ〜ん、其んなんじゃ、まともに戦え無いんじゃないの?」

僕を其う言っておちょくって来る。


実際まともには戦えて無いから否定は出来無い。

本当に、まともに戦えて居たら何れだけ戦闘が楽だっただろうか。


「……基本属性まともに使えるのに戦わ無い奴も居るけどね。」

彼女は蔑むみたいな目をして怖い顔をして居る。

毒だ。完全に毒を吐いて居る。毒の無い動物なのにとても恐ろしく感じる。


「う。」

彼は何も言え無く成って下を向いた。


……何か、途轍も無く険悪な雰囲気に成って居ないか?


「あぁ、あえっと、ほら、森見えて来たよ!!

 捜そ!? ね!?」

其の険悪な雰囲気を何とかして壊そうと注意を逸らす為に其の森を指して言った。


「ん? あ、そうね。降りてみましょ。」

さっきの毒っけの有る表情は何処へやら、

真面目に森を凝視して居る。


僕等を乗せて居る絨毯はどんどん地面へと近付いて、

少し低空飛行をした(のち)木々の無い丸い広場へと降り立った。


「じゃあ、私はあっち捜して来る。」

彼女は其う言って前の方面へとパパパーっと走って行って了った。


「じゃ、じゃあ、こっち行って来る! うん!」

彼は少しおどおどとしながら右の方へとビョンビョンと走って行って了った。


「分かった、そっち行って来るね!」

じゃあと彼と反対方向へと向かう。


僕は彼等依り足は速く無い。

だから枝を伝って行こうと思う。


目視する場合は如何するんだと言われるだろうが、

其処は音でカバー出来る。


元々視力は悪いのだから今更だ。


僕は飛び上がって枝を掴むと上から音を頼りにして子供を捜す事にした。




「う〜〜〜ん……。」


僕は木の上で考え込んで居る。


あれから何分か経ったのだけれど、ちっとも見付から無い。

何か音がすると思って木から降りてみたのだけれど、

特に害の無い魔物だったり只葉っぱが擦れる音だったり、

子供どころか人間らしき人は全く見掛け無かった。


「…………おー…………。」

何処か遠い所から男性らしき人の声が聞こえる。

此の妙に高めな声は誰だろうか。


「ど、どこいったじゃんねアイツ……。」

声はかなり早い速度で近付いて来た。

僕は其の訛りの有る声を聞いてやっと気付いた。


木の幹に爪を引っ掛けて消魂(けたたま)しくあわあわと降りた。

くそ、此の爪は登るのに適して居るのに降りるのは本当に向いて居無い。


最後は階段で一段飛ばしをする様に勢いよくぴょんと降りた。


「あ、あぁ! 居た!! えっと……。」

其の素早い脚で木の下迄来ると僕の顔を見る。

覚束(おぼつか)無い目で言葉を喉に詰まらせて居る。

……もしかして僕の名前を呼ぼうとして居るのだろうか。


「クリングルス。渾名(あだな)はリング。」


「う、うん……あの……リング……? 子供らしき子、見付けたんだ!」

僕の名前を確かめる様にゆっくりと言い、

那のへらへらした感じでは無く、凄く真面目な表情だった。


「えほんと? 分かった、行く。」

其の知らせに少し驚いたけれど、

其れならと彼が走る後に付いて行った。




「あぁ…………あぁ……うぅ……。」

其の子供は何故か木の幹の下でわなわなとして居る。

身長から鑑みるに六〜七才と言った所だろうか。


多分、親から離れて森を彷徨って居たからだろう。

そりゃあ、怖いに決まって居る。


「……大丈夫?」

僕は其の場にそっと座り彼の目を優しく見る。

彼はぶるぶると震えながら僕の手をそっと取る。


其の手から伝わる感覚はどんどん強く成る。


「うわああああああん!!!!」

そして彼は僕に抱き付いて大粒の涙を流し始めた。

僕は何も言わずに彼の頭を撫でてやった。


* * *


「見付かりましたよー。」

其の後は彼女と合流して貸り家に戻って来た。


「あぁ、有難う御座います!!」

彼女は土下座みたいなポーズをして手を後ろにやって居る。

……其れは王様とかに敬意を払うヤツじゃないか。


「もう!!! 何処行ってたの!!!」

彼に目線を合わせて体を掴む。

言葉は完全に怒りの其れだが顔からはぼろぼろと大粒の涙が零れて居る。

ブルラが其れを微笑ましく見て居た。


彼女は其れを見てもつんけんとして居る。


「……ほんとに、あんたが見付けたの?」


「ふふ〜ん其うだよ!!!」

猜疑的に訊いた彼女に角を立派に見せてどや顔で言う。


「むぅ……流石に今回は貴方のお手柄としか言い様が無いわね……。」

彼女は不服そうでは有るものの仕方なく受け入れた様に見えた。

彼はかなりにやにやとして居る。少し鬱陶しい。


「……取り敢えず、大丈夫かしらね?」

そして座り込んで彼をじっと見る。


「う…………うん……大丈夫、おねぇさん。」

眼を見て恐怖するみたいに驚くと目線を逸らして言った。

理由は分から無いが気不味いのだろうか。


「……おねぇさん!? やだ、ちょっと……何時も呼び捨てなのに〜〜??

 うそ〜〜〜〜〜????」

彼女は尻尾を立て明らかに喜んで彼の体や顔をわしゃわしゃと異常な迄に撫で回して居る。

……と云う事は此の子はかなり……言い方は悪いがガキだったのだろうか。


「…………うぅ。」

其れに対し口から絞り出すみたいな声を出した。


「……いや、本当にすみませんでした……

 見付けて頂き本当に有難う御座いました……!!」

祈る様なポーズをして目を輝かせて居る。


「あ、いや……。」

僕達に大して言われただろうに思わず否定したく成る。


「ふふ〜ん。」


「あ、コイツは基本ビビリなんで。」

彼女が彼を指して厳しい目で見た。

当の本人は口をぽかんと開けてあたふたして居る。


「けど、もっと頼って貰っても良いからね?」


「はい……はい、有難う御座います……!!」

ぺこぺこと腰を折って赤い目元で笑顔を作る。

そして母親は子供を連れて此の家から出て行った。

因みに彼、ブルラは有る程度人間の心理を理解してます。

けれど、彼女、ユードグリフは人間の心理を総ては理解はして無いみたいです。

理解しようとしては居るのですが、完全では無いです。


何時か、お互いに完全に分かり合える様に成った時、

其れは多分、種族間の戦争が無く成る日です。

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