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第六十七話:占い

「アー、ツイタゾ。」

奴はバサバサと翼を大きく振り地面と斜め四十五度にして着地する。

上手く掴まって無いと擦り落ちて了いそうだ。


「……凄かったわよ。」

やつの頭をポンと叩いたと思うとスタッと忍者みたいに降りた。


「ありがと。」

僕は奴の顔を見て其の儘二本足で着地した。

少しぎこちないかも知れない。


「君は如何するの?」

降りた後、もう一回顔を見て訊いてみた。


「ウーン、スミカモドル。」

奴は少し考え込んだけれどもきっぱりと断った。


「……いえ、どうせなら一泊して来なさいな。」

僕の後ろから少し歩いて来ると奴を見上げて言った。


「ヴュエ?」

奴は素っ頓狂な声をあげた。


「回復したばっかで戻る何て危ない。

 今日、豪雪降るじゃないの。」

強い声で彼女は言う。確かに、彼女の言って居る事も分かる。

只、奴は暑い所は苦手だと思う。


「……ベツニ、ヘイキ。」

彼が冷属性の魔物だからだろうか、

其れ共強がりなのか彼女見無いで言った。


「いいえ駄目よ!」

彼女は語尾を強めて否定する。

奴は気不味そうな、微妙な顔をして居た。


「……あの、さっきさ、『降る』って……確定した様な言い方してたけど、如何して?」

其んな光景を見て僕は話題を逸らそうと少しだけ疑問に思った事を投げ掛けてみた。


「あぁ、占い得意なのよ? ちょっと先の未来なら、だけど。」

奴の方を見るのを止めて此方を振り向き、

キツかった目が少し柔らかく成って居る気がする。


「……ヤレルナラセントウデツカエバ?」

奴が当然の事を訊いて来た。


「けどねー、其うも行かないのよ。

 精神的な集中と魔力の集中も必要だし……。

 精神が乱れてる戦闘中だと出来無いのよ、如何しても。」

彼女は腕を後ろにやって不服そうな顔をして居る。


「ハァ〜。」

納得した様に息を吐いた。


「……やってみる?」


「オウ。」

彼女が奴に其う言うと奴は少し間抜けな顔をして頷いた。


「えぇっと……有ったかしらねぇ占い道具……

 収納魔法に確か……。」

緑っぽい魔法陣を出して其処から折り畳み式の円机を出し、

次は正方形の形をした上に魔法陣の掛かれた何を出して来る。

壁面を覗く様に見るとまるで額縁みたいな装飾が書かれて居た。


装飾に使われて居る金属は分から無い。


「あぁ、此れって……那れ? フ̇ェリ̈ッㇰで出来てんの?」

僕は其れを指して訊いてみる。

フ̇ェリ̈ッㇰってのは此の世界に存在して居る金属だ。


「そ、持ってみる?」


「……良いの?」

彼女は其れをスッと差し出して来た。


「うおっ、軽っ!!」

其れを優しく受け取ると其の重厚な見た目に反してかなり軽かった。


絶対に怒られるからやりはし無いけれども、

多分お手玉出来て了うんじゃないだろうか。


僕は其れをじっと眺めると彼女に返した。


「じゃあ、早速やってみるわね。」

其れを机にスッと置くと魔力を流して居るみたいだった。

魔法陣は兎も角、壁面の模様迄緑色に光って居る。


「よしよし、ねぇ、あんたどっか取って良い?

 髪とか……髭とか。」



「エ……ウーン……。」



「じゃ、鱗一枚持ってくわね。」

彼女は奴の背中からブチッと其れを取って行った。


「ヴルギィ!!!!」

間抜けな声を出して全身を震わして居る。

目をぎゅっと瞑ったからか眼に少し涙が貯まって居た。


「ぶ、ぶち切ってだいじょぶなの……?」

何故此う言うのかと云うと、

鱗は奴等の象徴で有り誇り。

鱗の大きさが大きければ大きい程モテるのだ。


もし鱗を取って了ったら雌からモテ無く成るのだ。


……強さは変わら無いのだけれど。


「マァ……タシカニソウダガ……。」

奴は尻尾を左右に振ってぷんぷんと怒って居る。少し可愛い。


彼女は下の隙間の様な所に紙を何枚か入れ、

其れを立方体の上に置くと手を払って大きく一息吐き、

上面に掌を当てると何やら呪文を唱え始めた。


彼女は目を瞑って何かを視て居るみたいだった。


「トゥデェ̇ㇰ̊マギア・ペス̌ィズード・ヺ̇ㇻ̇トゥナ̊ーㇷ゛!」

呪文にしてはかなり長い詠唱だ。

短縮魔法では……多分駄目何だろうな。


すると緑色はどんどんと濃く成って行き、

ふいに其の光はぱっと消えた。


彼女が手を離すと奴の鱗が無く成って居るのが分かった。


其れの下からシュッシュとさっきの紙が出て来て、

彼女は其の紙を取るとじっくりと真剣に目をやって居る。


「何? 其れ?」

其の頓痴気な見た目の物は初めてみた。


「一年先位の大体の筋道が書かれた物。

 勿論、彼本人が此れから行動を変えれば又変わるんだけどね。

 後は私が視た光景から大体の未来を占うのよ。」

ちょっと見せて来た其れは何か呪文の様なみたいだった。

何だろう、緑色で焼かれた文字みたいな、其んな物。


那れは魔力で書かれたのだろうか。

今迄此のテの物は気に成ら無かったけれど、

構造が気に成って了う。


彼女は再び其の紙を眺めると顎を手にやって結果を話し始めた


「うーん……?? 如何やら何か良く無い事が起きるわね。

 もしかしたら、近々殺されるかも知れないわね、

 信用して居る人は気を付けた方が良いわ。」


「……ホカハ?」

奴は少し首を上げてちょっと嬉しそうに言って居るみたいに見えた。


「其れと、何か大事な人が出来るかも。

 ……恋人かも知れないわね。もしかしたら。」

彼女は少し笑って其う言う。


「フーン……。」

奴は訊いたのにも関わらず殆ど気にして居無い様だった。


「……僕もお願い出来る?」

彼女等の話を聞いてもし僕も何か出来るのかと思って興味本位で訊いてみた。


「あぁ、はいはい、出来るわよ。」

面倒臭がらずに手を差し出して来た。


僕は頭の毛を触ってほんの少しの其れを彼女に渡した。

彼女は紙を再び入れてもう一回同じ動作をして出て来た其れを眺めて居た。


「……え。」

其の紙を見て度肝を抜かれた様に驚愕して居る。


「何?」

僕はやや不安そうに彼女を見上げて訊いた。

彼女は腑に落ちたみたいで顔を上にやって細かく頷いて居る。


「凄い、何も分から無いわ。」

僕の目をしっかりと見て其んな事を言って来た。


「え?」

僕は口をぽかんと開けて了った。

嘘だろ、其んな事有るのかよ。


「分から無い……と言う依り未来がごちゃごちゃし過ぎて何が何だか……情報が断片的過ぎるのよ。」

彼女ははぁと大きな溜め息を吐くと耳の後ろを描いて居る。


「其れでも……何か……無いの?」

断片的とは云え流石に何か有るんじゃないかと思った僕は重箱の隅を突くみたいに訊いてみた。


「まぁ、危ない?」

首を傾げて本当に曖昧で抽象的で何も分からない事を言った。


「ホントに其の程度なんだ……。」

もう落胆するしか無い。


其の後はヷルトが帰って来て、

奴ともう一回空を泳ごうと思ったら彼にかなりこっぴどく叱られた。

リングさんが那んな事をして居たのは、

純粋に興味本位です。


……此う云う奴何です、はい。

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