第六十一話:クロベン村※
九月二十二日、一部書き忘れが有ったので修正しました。
現在村の役場の様な所でノルマが役人と話して居る。
今は陽は大して沈んでは居無いものの、
此れから天候が悪く成ると予想した為此処で休憩する事にしたのだ。
僕等は長椅子に座って返事を待って居る。
「……よし、許可取れた。今日は此処で休憩だな。」
彼がカウンターみたいな所から戻って来て紙切れを持ちながらやって来た。
「お、ありがと。」
彼は其う言って立ち上がって、
僕は何も言わずに祈る様なポーズをした。
僕達は役場の人に挨拶をして其の場を去って行った。
「へー、此んな村在ったんだね、知ら無かった。」
彼は馬車を停めるらしいので一旦離れて、
僕達は村を探索して居る。
「リングでも来た事無いのか?」
ヷルトがやや後方から話し掛けて来る。
「其うだねー、那の村に来る時は別のルートだったしね、
此のルートは始めて通るや。」
体をくるっと彼に向けて後ろ歩きみたいな状態で其う言った。
「おいおーい! 其処の兄ちゃん達ー!!!」
誰かが僕等に話し掛けて来る。
くるっと其方に耳を向けて前を向いた。
かなり若々しい好青年みたいな声だ。
頭は小さく元来其うだと思うのだが、目の辺りとからマズルに掛けて白っぽい民族的な模様をして居る。
くるくると巻かれたポニーテールの様な物を頭からぶら下げ、
内側に湾曲して居る長い角が一対在った。
其んな彼が黒褐色の右手を挙げて僕等を呼んで居た。
僕等は取り敢えず彼に近付く。
「……あれ? 其の右の方の角如何したの?」
右の方の其れが何故か先が欠けて居たので気に成って行ってみた。
「あぁ……へへへ、子供ん頃喧嘩した時に折っちゃった、
お陰で生涯童貞だよ。」
鼻を擦って舌ピアスをべろんと見せて来る。
彼は彼なりにふざけただけなのだろうが、
バスケットボールでもやって居そうな高身長なお陰で途轍も無い恐怖を感じる。
一体、何んな喧嘩をしたら其んな事に成るんだろうか。
「……んで、お兄さん達は如何して此処に?」
彼はちょっと座り込んで僕等に目線を合わせた。
ポニーテールみたいなのがぶわっと靡く。
ちょっとだけ、ちょっとだけだが格好良い。
「あぁ、魔法学会行くんだ、俺等。」
ヷルトが親指で僕等を指して
「へー、あ、其の経路でって事ね、
あーあー成る程、確かに雪降って来そうだもんね〜〜。」
空をくるくると指しながら
「てかお兄さん達その模様な〜に〜? 染めたの〜?」
彼は笑いながら僕の額を指して居る。
何だろう、此の明らかに悪い人では無いのに何か妙に鼻に付く感じは。
「いや、元からで……。」
僕は自分の模様を指して声で反論した。
「え〜〜〜、元からぁ? 嘘っしょ〜??」
態とらしく手首を振り目を瞑って居る。
「いやホントだ。」
ヷルトははっきりと否定する。
「うそぉ?」
全く信じて無い様で漫画みたいに眉を釣り下げて額には皺が寄って居る。
嘘みたいに表情がコロコロと変わるな。
「ホント。」
「は〜〜〜、妙なもんもあんだね〜〜。」
ヷルトがもう一度念押しして
納得した様に腕を組んで
「あ、そだそだ、取・り・敢・え・ず、空き屋有んから其処に泊まりなよ〜。」
何故か一部分だけを強調して立ち上がって前を向いた。
「いやちょっと待て、お前一人で決めて平気なのか?」
ヷルトが腕を突き出して彼を静止させた。
「僕が何とかやっとくよ、へーきへーき。」
「あ〜、てか何人いんの?」
一旦後ろを向いた彼は親指と人差し指を立ててにっと片方の口角を上げ、
走る様なポーズで体を静止させて言った。
「三人。」
僕は親指と人差し指を曲げて言った。
「うぃ、じゃ!!!」
彼は其う言って右手を上げた後、ぴょんぴょんと兎みたいに跳ねて何処かへ行って了った。
砂利道にやや砂埃が舞って了う。
「……取り敢えず、村回る?」
「其うだな。」
* * *
僕達はノルマと合流して村を適当に眺めて居た。
見た所、此の村は獣人やヅィー族が特に啀み合う事も無く、
寧ろ助け合いながら暮らして居るみたいだった。
今も木で遊んで居る子供達が
ジャガーっぽい獣人の子がヅィー族の子を抱いて木を登って居る。
少し其の光景を見て居たから分かるのだが、
如何やら其の子は上手く木に登れ無いみたいで、
すると獣人の子が降りて来て一緒に登ろうと話し掛けたみたいだった。
子供達でさえ、だ。
那の村も此う成れば良いのに。
心の底から願う事だ。
「あぁ!! 此んな所に居たんだ!! へーい許可取って来ーたよー!!!」
奴が嬉しそうに跳ねながら手を振って此方にやって来る。
「お、あ? 有難うな。」
ヷルトが気さくな感じで彼を向いて言った。
「あ。」
僕は右手を挙げて掌を空と垂直にやる。
さらさらとした雪の粒が僕の掌に移った。
冷たい何てモノは感じ無いものの、ふわっとした感触がする。
「……雪降って来たね。」
「あー。」
ノルマが上を見上げて同調する。
「だな。」
「えー、雪ぃ?」
ヷルトは同じ様にして空に手を挙げて雪を感じて居る。
けど彼は項垂れるみたいにして下を向いて嫌がって居るみたいだ。
「……あの、其の家の方へ案内してくれる?」
僕は腕を戻すとちょっと首を右に動かして頼む様にして言った。
「おぉ、良いよー良いよー!!!」
と言うとさっきみたいにぴょんぴょんと跳ねて彼方へ消えて了った。
……追い付け無い。
余りの速度に上手く目で捉える事が出来無い。
「ちょ、あの、ま…………。」
右手を伸ばして何かを掴む様なポーズをする。
けれど僕が其処迄言った所で何か黒い点が此方にやって来て居るのが分かった。
……もしかして彼、戻って来てる?
ズダダダダと云う音と共に其の黒い点はどんどんと近付いて来る。
そして砂埃を上げ、僕等の方へと戻って来た。
「あぁ、ごめんごめん、そっか。
忘れてた。普通の人が追い付けねぇの。」
膝小僧辺りに手を当てながら
「其んなに早いのか。」
此の時はノルマが言った。
表情は一切変えずに。
「まぁね〜〜〜、チーターとかじゃねぇと追い付かねぇもん、
最も、僕が勝つけどさ!!!!!ぜってぇ!!!!」
自分の脚力に相当自信が有るのか太股辺りを態々捲り、
パンと其れを平手打ちした。
中々に筋肉質で鍛え上げられて居る脚をして居る。
アスリート依りも凄いんじゃないだろうか。
「あぁ待ってさみぃさみぃ〈ヤバいヤバい〉!!!!」
でも其れをした後、直ぐにズボンの裾を戻した。
そりゃあ其う成るだろう。普通に考えて。
……あれ、待って、ヤバい?
此奴、今ヤバいに相当する単語でも無く、
多少は訛りが有るもののしっかりと『ヤバい』って言ったぞ?
「リングも脚力有るんだから出来るんじゃないか?」
歩きながらも顔を此方に向け僕の脚を指して言って来た。
勿論冗談だろう。
「え、あー…………。」
僕は那の事に付いて考えて居た為、
ヷルトに其う言われて首を数回其方に向けたり、
ちょっと歩みを止めたりして挙動不審に成ってしまう。
「流石に……那れは……無理かな。
僕は上方向にしか跳べないのよ。」
ちょっと耳の後ろを掻き、
腕を上げて垂直にぴよん、と跳ぶ動作をしてみせた。
「えーお兄さんどんくれぇ?」
ニヤニヤしながら奴が訊いて来る。
「うーんと…………。」
僕が考える為に上を見上げると四角いデザインの魔力灯が有った。
ざっと見積もって高さは三メートル半位だろうか。
昔のガス灯みたいに棒が二つ出て居るデザインみたいだ。
「此れ位?」
僕は其れを指して言った。
「えーお兄さんやってみなよー。」
茶化す様にふざける様に僕に目を合わせて来る。
「其れは……迷惑掛かるし……あんまやりた……。」
僕は其う云う度胸試し的な行いは好きでは無い。
正直、何故其んな事をするのか理解に及ば無いし、
もし万が一壊して了ったら修理費も払わなくては成らないし。
けど、其れは其れとして、
「…………ん?」
僕が其れを見て居ると何か黒い点みたいな物が此方にやって来て居るみたいだった。
其れはどんどん近付いて来て居るみたいだった。
何か大きな風切り音がする。
那れは一体。朧けて居て
「……伏せろ!!!!」
ヷルトが大きな声で叫んだ。
其の言葉にはっとして蹲る様に其の場に座り込んだ。
頭の上をブオンブオンと云う音が掠めて行く。
「ゴブゲジャアアアアアア!!!!!!」
水色の透き通る程に美しい鱗を持った体を斜めにさせて其の四つの目で此方を睨んで居た。
偶蹄類系獣人のお手々如何するか問題、
本当に如何しましょうかね。
五本指だと動物感は薄れるしだからと云って二本指にすると絶対に不便でしょうし、
足は二本指でお手々は五本指が一番現実的かも知れません。
一応、進化したって設定が有るのでおかしくは無いと思います。
ファンタジーに現実を求めるなと言われそうですが或る程度理由が有った方が良いじゃないですか?




