第六十話:目の色が変わる
那れから僕と彼も動ける様に成ったので、
今は圧倒的に足り無い食料とか、後はおみやげ何かを買って居る。
にしても此処は賑やかな街だ。
何時も危険と隣合わせだとは思え無い。
建物は都会並に高く物流は行き交い至る所で人々が世間話をして居る。
そして──
「此の野郎ァ!!! 盗ったな!!!」
店主の声にビビったのか目の前で豹の獣人が走り出そうとする。
僕は野菜を見る振りをして然りげ無く奴に脚を引っ掛けた。
奴は足元を見て居無かったのか其の場でズサーッと転ぶ。
盗んだのだから擁護する気はさらさら無いが、
煉瓦で出来た此の道では腹部とかが痛そうだ。
鬼の形相の店主が彼の目の前にドンと立つ。
「うおっ!! 待てよ!! 俺何もして無いぜ??」
くるっと体を半回転させて受身みたいなポーズで両手をやや後ろに置いて居る。
僕はもう良いだろうと商品の入った箱に目を向けた。
「あっそう……!!!!!!!!」
完全に店主の声が怒りで満ちて居る。
「……取り敢えずキミ、コッチ来ようか。」
さっき聞いた様な声がしたので振り返ってみると、
那の爬虫類のお兄さんが背後から近付いて彼の肩を叩いた。
「おい止めろ!!! 俺は何もしてない!!!!
結局は冤罪擦り付けて自分の点数稼ぎにしたいだ…………!!!!!」
彼に首根っこを掴まされた彼は饒舌な口で早口で弁解しようとする。
「……毒入れるよ。」
奴の話を眼を瞑り聞いて居た彼は、
点数稼ぎ云々の所からゆっくりと目を開け、
其れがギッと釣り上がり奥歯を此れでもかと見せつけて居る。
其処からは黒い液体の様な物が出て居るのが見えた。
「あ、あ、止めてくれえええええあああああああ!!!!!!」
奴はぶるぶると身を震え上がらせると、
狂乱して暴れ出す。
けど彼は鼻に一発パンチを加えた。
(うわぁ痛そう。)
猫科の急所をピンポイントで狙って居る。
奴は鼻を押さえて静かに成り、
其の儘引き摺る様にして連れて行く。
嬉しいのか悲しいのかは分から無いが、
黄色の輪っかみたいな模様が付いた尻尾をぶんぶんと揺らして居た。
そもそも、那の豹の獣人は何故同じ様な獣人の前で盗んでバレ無いと思ったのだろう。
僕何かは動体視力が良いから分かって了うのに。
此処の店主がそっとボヤいたを聞いて了ったのだが、
如何やら此の街は他の街に比べ比較的犯罪が多いみたいだ。
「リングー!!! そろそろ行くぞー!!!」
ノルマが門の前で其う叫んだ。
「……あぁ、はい……。」
僕はちょっと困って弱々しく其れに返事をした。
だって、此んな大勢の前で其んな事して欲しく無いもの。
恥ずかしい。
「じゃあすいません、此れと──」
* * *
「そしたら次は……アレストロ県迄だな。
道のりに大きな街とかは無いから、村を何個か経由する事に成ると思う。」
彼は此方に顔を向けながら地図を見せ指でルートを擦って居る。
僕等は頷いた。
すると彼は前を向いてフォトフルーを走らせた。
パッカパッカと云う軽快な音は鳴らさず。
ドダドダドダと重い音がする。
「……お前さ。」
静まり返った車内の中で彼が此方は向か無いで急に話し掛けて来る。
「あ、僕ですか?」
自分を指して彼に訊く。
でも其れは勘違いだったらしく彼は言葉を詰まらせる。
「いや……ヷルト。」
「あぁ、うん。何だ?」
唐突に言われた為か少し挙動不審だ。
「お前……其んなに眼紅かったっけか?」
ヷルトが雷に打たれた様にビクッと体を震わせた。
まるで訊かれたく無い物を訊かれたみたいに。
「……いやー……ははは……。」
左の口角を上げてかなり歪な笑みを浮かべて居る。
首に手を当てたまんま黙りこくって了った。
「……正直俺にもよく分かんない。」
かなりの時間舌を向いて居た彼はのそっと顔を上げて額に手を当てながら言った。
「額の其れも……。」
彼が追求する事にヷルトがどんどん落ち込んで行くのが目に見えた。
耳は垂れ下がって紅い目が黒ずんで見えた。
此処は……フォローして置いてやろう。
僕は黙りこくって了った彼に代わって話し始めた。
「あの……那の街に入った時、倒れ込んで了って……
そして彼が目覚めたと思ったら此んな感じに成って了ってて……
理由は其の……はっきりして無いんですが……多分自分みたいな紅眼に成って了ったんだと……。」
僕はゆっくりと、言葉を選んで話した。
流石に元幽霊で僕が体を創った所為で、魔力が多過ぎたのか此う成りました。
なんて口が裂けても地獄で針山に突き刺されようとも言え無い。
「……紅眼、って何だ?」
……知らないのか、ヷルトは知って居たのに。
「えー……えっとですね──」
僕は其処から紅眼が何故起きるのか、
何故紅く成るのか、紅眼は珍しいモノなのか、
と少一時間程度ゆっくり説明した。
正直、かなり大変だった。
全く知ら無い人にとっては只の色の違いに過ぎない事がよく分かった。
意外と、其処迄気にする必要は無いかも知れない。
すると那の村の人達が僕を嫌って居る理由がますます分から無い。
何か紅眼以外にも理由が有りそうな、其んな感じがする。
「へー…………魔力がすんごい多い奴等、って思っとけばいい?」
結構色々と話した筈なのにかなり雑な理解の仕方を示す。
「……んまぁ、うん……うん…………はい……。」
正直納得は出来て居無いが、説明するだけなのに異常に疲れたから此処迄にして置こう。
其れから車内は又静かに成って了い、
僕がうとうとし始めた頃に彼が話し掛けて来た。
「あのさリング。」
彼は何故か額にぐりぐり手を当てながら訊いて来る。
「……なぁに?」
僕は目を何度もぱちくりさせて彼を見る。
「此のアホ毛直らないんだけど……。」
彼が手を話すとぴろんと其れが現れた。
ちょっと面白い。
「ん? ほら此うやって……。」
適当に掻き分けて毛に馴染む様にしようとしたけれども、
バネみたいにピンとハネて元の位置に戻って了った。
「あホントだ……ひっどい寝癖付いてる。」
何故此んなぶっといアホ毛が付いて了ったのかは分から無いが、
少なくとも紅眼の所為じゃ無い事は分かる。
「何か嫌なんだけど……此れ……。」
何度も其れをピンピコピンピコさせて如何にかさせたいみたいだ。
「まぁしょうがないよ、明日には直ってるでしょ。」
僕は又眠く成って来た所為かかなり無責任な返事を返した。
「……ホントだな?」
瞳孔をがっと開き目をぎっとさせ
かなり迫力が有る目だ。
紅眼なのも相まってかなり怖い。
「え、あ、いや…………保証はしかねます。」
「してくれよぉ……。」
ごめん。
今迄獣人に対して多分好意的な事許りしか書いて居なかったので、
今回は最初に獣人でも此う云う事する奴は居るんだよ、
と云うシーンを挿入しました。
何の種族だってやる奴はやるんです。現実でも其れは一緒です。
只元々軽蔑されて居る人は悪い事だけが広まり易いだけで。
* * *
尋問をして居る最中のワンシーン。
例の悪さした奴:「ほ、ホントに!!! ホントにすいませんでしたちょっと魔が刺しただけ何ですお願いです毒だけは刺さ無いでお願いしますうううう!!!!!」
モンボレラ:(まぁコモドドラゴンでも無いから私の毒は其処迄でも無いんだけどね……精々のたうち回る程度何だけどね。)
※メキシコオオトカゲは人間の場合死ぬ事は稀とされて居ますが死ぬ時は死にますので迂闊に近づか無い様にしましょう。動きはかなりゆっくりなのでしっかりと注意すれば逢わ無い筈です。情報が間違って居たらお教え下さいね。




