第六話:村に行く迄の※
今回で第零章は終わりに成ります。
六話で終わりですが此れで大体世界線は伝わったでしょうか……?
簡単に言ってしまえば架空言語の或る結構ガチガチのファンタジーかと思われます。
既存のファンタジーとは違う点が有るとは思いますが、一応異世界のお話なのでファンタジーです。
なろうっぽい要素はホルベとか転生とか其処等だけでしょうか?
七月十五日、七月十八日、鱗雲之式日本語表記も間違って居たので直しました。
今回は其れ以外も間違ってました……。
十月十三日、物語を修正しました。
一月四日、物語を修正しました。
一月十八日、軽微な修正を施しました。
「ふふふ。」
僕は日記を眺め、転生してから今迄の事を見返している。先週十八歳に為った。
何故此んな事をしているかと言うと、今日は僕がこの家を立ち去る日だからだ。
僕は家を買ったのだ。勿論自分で貯めたお金で。十八歳で家が買えるなぞ思っても無かった。
研究……と云うか調査、と言うべきか。其の様な事を三年前位からやって居る。
其の為に家を買った方が良いと思ったのだ。近い場所で調査した方が絶対に良いだろう。
交通費の節約に為る。此の国、交通機関が馬車位しかないしおまけに矢鱈値段が張るのだ。
此の家を離れるのはやや名残惜しいけれども。
おっと、其んな事を考えて居ると夜が明けるぞ。さっさと眠ってしまおう。
* * *
「うわうわうわうわ‼︎」
今僕は馬車に乗って居る。例の村へ行く為だ。
只、馬車が揺れてしょうがない。吐きそうな位には。
三半規管、此処迄弱かったっけか。
「お兄さん珍しいね、那の村へ行くなんて。」
操者が僕の方に顔を向けて話しかけて居る。
「えぇ、まぁ、そうでしょうね。」
吐き気がして真面に受け答えが出来ない。
ガダガダと馬車が揺れてもう本当に……一種の拷問か此れは。
「あそこはお兄さんみたいな獣人は気を付けた方が良いと思いますよ。」
「えと、それは……如何云う……意味でしけい?」
ちゃんと話を訊きたい気持ちと胃の腑から得体の知れない物を吐きそうな気持ちが混ざって変な言葉遣いに成ってしまう。
あぁ、早く終わってくれ……!
「あそこはま〜〜何と言いますかね、お兄さんみたいな人が嫌われ易いと言いますか……。」
かなり重要な事だと思うのだが、気持ち悪い所為で頭が回らない。
言葉が右耳から入って左耳から抜けてしまう。何も残らない。
「あぁ、へい……成る程……。」
掠れた声で其う言った。早く着いて欲しい。其の思いで一杯だった。
一ヶ月程度掛かって村の前の街にやっと着いた。
道中特に何も無く、気持ち悪さ以外に障壁は無かった。
早く何処かの宿屋でも借りて一休みしよう。
* * *
「はぁ……。」
那れから宿屋ではベッドで一時間程度突っ伏して居た。
やっと吐き気が収まって来たし此れで動ける。
ベッドを摩ってみる。柔らかくは無い。
昔は此んな粗悪だろう寝床では眠れる筈が無かったのだろうがな。
此の宿屋では如何やら食事が無く、本当に宿泊場としての機能しかないみたいなので夕飯を買うか食べに行こうと思う。
僕はルームシューズを脱ぎ、何時もの革の靴に履き替えた。
そして宿屋の主人に鍵を預け、僕は夕食に行って来ると言って其処から出た。
外に出ると周りに屋台が連ねて居る。少しアジアっぽい。一見西洋風に見える此の国とは少し毛色が違う様な。
此の情報は宿屋のおっちゃんから聞いた。
だからだろうか、宿屋を中心に屋台街が形成されているみたいだ。
前世のホテルやだと朝と夜で食事が出されるが、此方だと朝、昼、若しくは朝だけ、が多いらしい。
成る程なぁ、だから屋台街が形成されて居るのか。面白い文化だ。
僕は幾つかの屋台を眺め、何れが良いか探ってみる。
其の中の一つに僕が気に為った店が有った。
僕は空いている席に座り、屋台のおっちゃんに雑音でも聞こえる様な声量で話しかける。
「あー、あのお兄さん?」
すると鱗で覆われた爬虫類みたいな彼が此方に目を向けた。
長い舌をシュロロロ、と音を立てて出して居る。
前世だったら化け物が街中に潜んでるだのと騒ぎ立てるのだろうな。
上にかけられている木片を見詰める。其れにはエカルパル語で料理名が書かれて居る。
縦書きの場合は大文字小文字の区別は無いみたいだ。
品数はかなりの量が有る。考えて居るだけで楽しい。
思い倦ねた結果、もう好きな物を注文しようと結論を付けた。
「カ̊ーグ̏ㇻ̈・フ̇ォブリ̈ア・ゴーㇻ̇デー、一つ、と……紅茶とゴーフ̇ォェㇻ̇バお願いします。」
「あいよ。」
無愛想に注文を聞くと直ぐに作り始めた。おぉ、良い料理人じゃないか。
無口な料理人は美味しい食事を出してくれる証拠だろう?
何分か経った時、此方をチラッと見て来た。
出来た合図に違いない。
「はい。」
僕は懐から硬貨を差し出す。
「あいよ。」
少し硬貨を数えるとお金が足りているのが分かった様で、それを受け取ると買った商品を出してきた。
カ̊ーグ̏ㇻ̈・フォブリ̈ア・ゴーㇻ̇デーはフォブリ̈ア・ゴーㇻ̇デーと云うロブスターみたいな物を素揚げした物。
ゴーフォㇻ̇バは茶碗蒸しみたいな物か。
具材を敷き詰めて作るからかなりボリュームが有る。
只ちょっと甘いのでスイーツっぽい感じも有る。
僕がそれを席に持ち帰り如何やって食べようか迷って居ると、
「おいおい、ネコちゃん、それ全部一人で食べるのか?」
隣に座っているファール族の男性が話しかけて来た。
ネコちゃんと云う言い方にムッと来たはしたが、悪い人では無さそうなので僕は食べながら応える。
「獣人なんて此んなもんですよ。大抵大食らいなんです。」
僕が言うと彼はヘーっと言って未だ話しかけて来る。
距離を此う甚も簡単に詰めて来る此の所業は見習う所は有るな。
「そしたら子供とかもそんな食うのか?」
疑問に思った様子で右手に持っているお酒を飲みながら言って来る。
「……まぁ、そうですね、親は大変だったみたいですよ?」
師匠は結構家計をやり繰りしていた様で、魔法を覚えた時にかなりの頻度で一緒に狩りに行っていた位だ。
家系が特殊だから、一概には言えないけれども。
「やっぱりぃ? んでもネコちゃん食べ方綺麗だな、
すんげぇ美味そうに食うじゃねぇか。」
褒めてくれた。いや褒めてくれたか如何かは分からない。
けれど彼は僕の所作を指差して其う言って居る。
「え、そうです?」
気付かなかった。てっきり普通かと。
普通に頭と尻尾を取って、殻を取って食べているだけなんだが。
逆にそんなに食べ方って汚い人居るか?……いや、居るな。
ガルでさえ昔は汚かった様な。
とは云え、成長するに連れ直ってはいったが。
僕が嫌だったから何とか直しただけでは有るが。
「そうそ、俺ぁ世界各地の食いもん食ってるけど、余り食い方綺麗な人って見掛け無くてよぉ。」
摘みを美味しそうに食べている。
しっかりフォークを使って、決して汚そうな食べ方では無い。
「まぁ分からんでも無いんだ。
きったねぇ食い方って、美味しいもんな。
俺も丼物とかつい掻っ込んでしまう。」
お酒を呷りつつ言う。とろんした眼で其んな事を言って来るもんだから、何だか妙な空気が漂う。
そうなのか? 僕は余りそんな事をした事が無い。
気を使って居る訳では無い。
「……そうなんですか?」
「へ〜〜ネコちゃん見た目に反して結構育ちが良いんだな。」
僕はははは、と苦笑いをした。
其うか……其うだよな。悪魔みたいな見た目だものな……。
そりゃ其んな事を云われるのも無理は無い。
此んな紅い眼で見詰められたら怖いよな。
所作に付いては……如何だろう。
師匠は其処迄厳しく無かったな。前世の母親は本当に厳しかった。
多分シングルマザー、だったから責任感も有ったのでは無いかと思う。
僕は紅茶を一気飲みした。そして彼の眼をじっと見てみる。
「そうなん……ですかね?」
すると彼はギョッとしたのかゔっと変な声を上げる。
お酒を気管に詰まらせたのだろうか。
「……う、うまぁ……はは…………。」
彼は曖昧な返事を返す。頭をぽりぽりと掻いて一体如何言ったら良いか分からない、と云う感じだ。
「てかネコちゃんの食ってる其れ、美味そうだな。
おいおっちゃあん! 此れ一つ!」
其んな微妙な空気を吹き飛ばしたかったのか、彼は突然立ち上がって其う言った。
鱗を纏った彼はぎっと彼の眼を睨んだ。
あ、地雷を踏んだな。お兄さんと言って置いて良かった。
* * *
「…………。」
僕はベッドに寝転んで居る。
そして今日の事を振り返るみたいに夢想して居る。
今日は色んな人に会ったな。
其れにしてもあの食通のおじさんは中々に強烈だった。
僕とはきっと違う世界線に住んで居る人だろう。
明日はどんな人に会うのだろうか。村の人が僕に対し好意的だと良いな。
けれど那の人が僕が行く村は僕にとって危ない、と言って居たな。
……まぁ良いか。考えるだけ無駄だろう。今日は寝てしまうのが一番だ。
そうして僕は眠りに就いた。
夢を見る様に明日の事に不安と期待を抱きながら。
因みに此処だけの話、ファール族の男性は即興で出したのですが中々に良い感じのキャラをして居るので今度も出すかもしれません。




