第六十一話:非実在的な
「…………。」
今日は昼間っから暇だ。
マリルちゃんも居無いし、ヷルトはホルベに行ってるし、
何をしよう。
論文はもう一回見直して欠陥が無いことを確認したし、
学会に行く前に荷物は纏めれば良いし……。
時間が余り無いとは言え、今するべき事では無い。
(……あ〜〜。)
チケットって有ったっけ。
一応、研究成果を発表する場では或るものの、
チケットが無いと発表出来無い様に成って居る。
……同人誌即売会かよと。
あぁ、そもそも僕が此の村に来たのも其の研究をする為なんだけど……。
結局出来無かった。
此んないざこざに巻き込まれる何て思って居なかったから。
無駄骨だったかも知れない。
僕は収納魔法をごそごそとやって其れを探す。
(あ、あった。)
まさか直ぐに見付けてしまうとは思って居無かった。
……本当にやる事が無く成ってしまった。
何をしよう。
………………。
………………。
(ホルベにでも、行こうかな……。)
僕は一応書き置きを残し、
しっかりと装備を着て玄関から出て行った。
* * *
「あ、リングさーん! こんにちはー!!」
受付嬢が小指を突き立てた手をして手を振って来る。
「あぁ、こんにちは。」
僕も右頬の近くで同じポーズをする。
「今日はですねー!!! リングさんにめっちゃくちゃ良い依頼が入ったんですよー!!」
彼女はボードに貼って有る紙を一枚剥がして僕に見せて来た。
「これ!! これです!!!!」
彼女はちょっと興奮した様子で其れを見せて来る。
……なんだろうか。
僕は其れを凝視してみた。
(ゴンフ̇ァェドㇻ̇ラの……討伐?)
ゴンフ̇ァェドㇻ̇ラは確かワイバーンみたいな魔物の筈だ。
身長は大体四メートル程で炎の様に真っ赤な長い尾が特徴的だ。
確か全身は赤っぽくかなり翼は大きかった記憶が有る。
鱗は魚みたいだっけ。
(うーん…………。)
けれど僕は其れを疑問に思った。
「あの……此の……此れって、本来……夏とか、春とか……
暖かい季節にしか出現し無い筈じゃないんですか?」
僕は自分の記憶を確かめながらゆっくりと言った。
「後……此処等辺って見た感じ森許りで砂丘とか……サバンナとか有りませんよね?」
そうなのだ。コイツ、自分と生息域が被って居るのだ。
何故コイツはサバンナに居るんだ。其処は僕等のテリトリーだ。
しかしながら、相性の良い相手と言え無くは無いかも知れない。
「そうなんですよね……正直私達もビックリしてます。」
本当に困った様な苦笑いをする。
「冬の時期に、増してや此処に、普通現れる筈の無い魔物が出て居ますから……。」
そりゃそうだ。明らかに此処に居ては行け無い奴だ。
其んな渋い顔をするのも頷ける。
「でも、でもでも! 多分リングさんならイケると思うんです!」
彼女はなぜか焦って居るみたいで、僕を強く見つめて来る。
「うーん…………。」
僕は難しい顔をする。
「む、村の人が……危ないですし!! ね!!」
口を大きく開けて僕の同情を揺さぶって来る。
其う言うものの、僕は村の人に良くはして貰って無いし、
助ける義理は無い。クズだが、自分の命の方が大事だからだ。
正直、怖いのだ。異常な事に踏み込む事が。
「お願いしますぅぅぅ〜〜放置してたら絶対にヤバい事に成ると思うんですぅぅぅ〜〜〜村を救う事とホルベの存続を願ってお願いしますぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜。」
彼女は僕の腕を掴んで僕に泣き付く様に頼み込んで来る。
……止めてくれ、断れ無いじゃないか。
「……はい。」
僕は渋々頷いた。
「……えーっと、取り敢えず……依頼の報酬は何んな感じですか?」
意地汚いかも知れないが淡々と僕は訊いた。
「もう!!!もう倒してくれれば其れで良いので何でも!!!」
彼女はぶんぶんと顔を縦に振り大きな声で其う言った。
じゃあ……そうだな……。
* * *
僕は今報告の有った場所へ赴いて居る。
「…………。」
にしてもやたらと崖が近く地面はかなり凸凹で足の悪い場所だ。
もしかしたら靴を脱いだ方が歩きやすいかも知れない。
あまりやりたくは無いけれども。
何となく。
木の根を踏み、草は余り無く、風に煽られて土埃が舞って居る。
其れにしてもやはり冬の時期に吹く風はやたら寒い。
元々暖かい地域に住んで居る種族何だからもうちょっと優しくしても良いじゃないか。
其んな馬鹿みたいな空事を考えて居ると木が燃えて居る場所を発見した。
僕は上を見上げて其れを傍観する。
目の前には高い崖が有って、
其処の上に生えて居る木は燃えて居るのに現在僕が居る方は全く燃えて居無い。
なんだ此の奇妙な光景は。
僕は高いジャンプ力を駆使して其の壁を登る。
まるでボルタリングみたいに。
多分明らかな証拠が有るのだから此処等辺に居る筈なのだけれど……。
やや焼け焦げた大地を踏みしめ、
音を集中して聞く。
確か何んな鳴き声だっけ。
中々特殊な声をして居た気がするのだけれども。
『ギュルン…………ギュルオ……。』
後ろからドリルの音を引き伸ばした様な声が聞こえる。
今かなり遠くを巡回して居るみたいだ。
……如何しよう。
僕は其の場に座り込んでより音を聞く。
風切り音と砂の巻き上がる音等の環境音も聞こえる。
其れに混じってさっきの音が聞こえて、
耳を澄ますと其の音が此方に近づいて来て居た。
僕は立ち上がって準備を整える。
剣を背中から引き抜いて構え、
魔法をしっかり放てる様に全身に魔力を巡らせる。
僕は崖の方をずっと見て居ると那の音がどんどん近付いて来て、
鳴き声もどんどん大きく成って来る。
……そろそろ普通の人間でも聞ける音量だろうか。
風はどんどん強くなり、土埃は舞い木は激しく揺れて隕石みたいな炎が此方に向かって来た。
「ギュリリリリリルォォァァァァァァァ!!!!!!!」
大きな鳴き声を上げて真っ赤な炎を纏った奴が目の前に現れた。
今回はちょっと短めのお話に成ってしまいました。
此れからがっちがちに書いた戦闘シーンが始まるので成るべく早く投稿したいですね。




