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第五十一話:朝食

「……あ、おはよ。」

僕は起きて来た彼に顔をクルッと向けた。

ややふらふらとよろついて居る様な感じだ。


「ん?うん……あぁ……。」

ガルが額を押さえて気怠げな感じで答える。

明らかに調子が悪そうだ。


「……大丈夫か、お前?」

一晩経って酔いが醒めたヴァルトが紅茶を啜るのを止めて彼に訊いた。


「大丈夫じゃな〜〜〜い…………。」

頭をぶんぶんと降り。其の青褪めた顔を此方に見せて来た。


「……だろうな。うん。」

ヴァルトが呆れた顔をして紅茶を啜った。


「朝食如何する?」

僕達は未だ食べて居無い。

僕の起床が遅かったのも相まってお腹が空いてしまって居る。


「食べたく無〜〜い…………。」

「うーーーん……でもねぇ……。」

本当に調子が悪そうだ。

うーん、けれど朝から空きっ腹だと良く無いし、

頭も余り働か無いだろう。


「せめて其んなこってりして無いもんが良い〜〜…………。」

彼は椅子に座り辛そうな顔で僕等を見て来る。

さっぱりしたもの、か。


「……どする?」

「うーん…………。」

僕の頭では良いレシピが思いつか無いので訊いてみたのだが、

彼も彼で顔を渋って居る。


右上を見たり下を見たりして考えて込んで居るみたいだ。


「……あぁ、此れ……此れなら良いかもな、

 リング、手伝ってくれないか?」

何か思いついた様で顔を上にやり、

僕の方を向いて其う言った。


「あ、うん、分かった。」

彼が其う言うと彼が立ち上がり、

僕も其れに続く様にして立ち上がった。


彼が地下室に居るみたいで、

ガサガサと音を立てながら何かを探して居るみたいだ。


彼が地下室から箱を持って上がって来た。


「あ、やるぞリ……うおっと!!!!」

彼がバランスを崩し箱を落としそうに成る。

まるで其の光景を僕はスローモーションの様に知覚し、

落とされたソレに手を伸ばして床に落ちるギリギリでキャッチした。


「ごめん!!」

彼が後ろに手を合わせて謝って来る。


「あ、いや、大丈夫。」

僕は立ち上がりちょっと困った顔で右手をあげて、

其の儘耳を触った。


「……取り敢えず、此処に置いとくね?」

僕は其れを台所の上に置く。


「おう。」

彼は其う云うと早速作業を始めようとする。

けれど、其の儘だと毛が入ってしまわないか?


「ヷルト、手袋忘れてる。」

僕は掛けて在る手袋を取って彼に渡した。


「あ、そっか忘れてた。ありがと。」

黒い其れを受け取って僕にちょいと見せるように腕を上げると、

両腕に嵌めて料理の続きをやり始めた。


「えっとな、此れから作るのはビョーマェㇻ̇って料理何だが……。

 うーん、何て言えば良いかな……あぁ、何だ、あれだ、

 〈おかゆ〉とか云う奴か? お前が体調悪い時に食ってた。

 其れに近いかもな。」

あぁ、成る程、おかゆか。結構ふやかした料理なのだろうか。

彼が断片的では有るけれども僕の記憶を知ってて良かったと思う。

イメージがしやすい、


「うん、分かった〜〜〜。」

僕は其う言ったけれども、

何をして良いか全く分から無い。


ちょっとの間、誰も何も喋ら無い空白の時間が生まれる。


「まぁそんなにやる事は無いんだけど……。」

首の後ろ辺りを触って彼が言う。


「そうなの?」

僕は彼に訊き返してみる。


「うん、そ。」

ちょっと眼を横にやって頷いた。

恥ずかしいのか、其れとも気不味いのだろうか。


「じゃあ……鍋出して、あ、其んな深く無くて良いからな。」

眼を此方に戻し自分のマズルを弄りながら僕に指示を出した。


彼は(かまど)の方へ行き、

魔法でぱっと炎を点けた。


棚から其れを出して居た僕はちょっと彼の方を向き、

其の光景をほんの少しだけ見た。


正直、結構うらやましい。

薪を持って来てへーこらへーこら言いながら炎を気にして、

其れに比べると何と楽だろうか。


……僕は使え無いからしょうが無いのだろうけど。

愚痴を言ってる暇が有るなら鍋を出して指示を待とう。


彼は火の様子を確認すると其れを見るのを止めて鍋が置いて有る事を確認した。


「じゃあ、そうだな、其の中に袋に入ってるコ̊ㇻ̇ミーの袋を出して、

 コップ三杯位の量空煎りしてくれないか? あ、焦がすなよ。」

彼は其れだけ言うと何やら棚を漁って居る。

後ろからガラガラと音がした。


僕は箱から其れを出し、

早速鍋の中に入れて空煎りを始める。


木箆(キベラ)で其れを煎って行くとバチバチと派手な音を鳴らした。


「うおぅあう!」

喉から勝手に変な声が出る。

多分此う成ってしまうのはカラカルの耳が特殊なんだろうが。


ビク付きながら炒めて行くと次第にパンが焼けたみたいな独特の香ばしい匂いがして来る。

白かった色がどんどん茶色っぽく成って行って居るのが分かる。


「あぁ、もう其の位なら大丈夫だな。

 ……水入れるぞー。」

彼が其の音を聴いて此方に近づいて、

鍋を覗き込む様にして其れを見た。


「あぁ、はいよ。」

僕はちょっと其処から離れ、

やや斜めに寄る。


「……ホキ゚キ・フ̇ィヸ̇。」

彼の呪文に合わせて其処からみるみると水が湧き上がって来る。

……何か、本当に魔術を使って居るみたいだ。


僕が今の今迄魔法を使って来て其れらしい事をしたのは魔法の刃を出した時位だろうか。


「じゃあ後は塩とかヅァㇺカ゚とか適当に入れて味付けして、

 其奴が膨らんだらもう良いから火ぃ消しちゃってな。」

彼は棚からお皿を取り出して置いて居る。

キッチンを傷付け無い為だろう、木製の鍋敷を置いてくれたみたいだ。


と云うか、膨らむのか。まぁお米だって水を吸って膨らむし当然か。


「分かった〜〜。」

僕はちょっと手を止めて彼の方向を見る。


「んじゃあ何か別に付け合わせみたいなのでも作るかなぁ……。」

彼がフライパンを出して何か作業を始める。

僕は其れには注意を向けずに自分の作業に専念する。


今鍋の中にはコ̊ㇻ̇ミーが在って、

沸騰して来たのかふつふつと音がして来て居る。


只何も変化が無い。

僕は塩とクリスタルみたいなヅァㇺカ゚を切って其処に入れた。


お、ヅァㇺカ゚のちょっと生姜みたいな良い香りがする。


其の儘見て居ると、急にぷくーっと二倍位の大きさに成って行く。


(……何だ此れ。)

声は出さなかったけれどもビックリした。魔法みたいだ。

其れ迄大きくは無いけれどもポップコーンみたいにどんどん鍋の中の其れが膨れ上がって行く。


遂に浅い鍋が殆ど埋め尽くされてしまった。


水はもう殆ど吸われたみたいだから、

もう火は止めてしまおう。


僕は那のボタンを押しに木箆(きべら)を置いて、

中央に向かう。


其れを押すとジジジッと何か機械音の様な音がして、

火が消えたのが分かった。


あぁ、何時もジジジカジジジカ聞こえて居たのって此れだったのか。

てっきり温めて居るのかと思って居た。


「……出来たけど如何すれば良いの?」

僕は何か作って居る彼に僕は尋ねてみる。


「あ〜〜……あぁ、ちょっと待ってな。」

彼は僕にちょっと渋い顔をして其う云った。

手際良く何かを作って居る。


「ほい、じゃあ盛り付けよっか。」

そうしてさっさと作り終えると、

お皿に其れを盛り付け始めた。


さっと炒めたロ̈ーン゜ヲ̇ーやスィーㇰ゛ザーやゼㇻ̈ディーンを盛り付けて居る。

するとお玉みたいな道具を取り出して鍋に入って居るを中央に置いた。


意外と見た目はちょっと固そうに見える。


「……よし、じゃあ、食おうか。」

其う言ってニコニコと笑顔を作りながらお皿を持って運んで行ってしまった。

……結局余り手伝え無かったかな。


「……あ、お? 出来たのか……?」

ガルが其の怠そうな眼で此方を見て来る。


「そうだ、ちゃんと食べろよ。」

言い方こそキツいが、其の声色と其の光景はさながらお母さんみたいだった。


「あ、お茶要るか?」

彼がもう一回立ち上がって訊いた。


「あー、お願い。」

僕は右手を上げやや握った様な手をして彼を見た。

ガルは何も言わずにこくんと頷いた。


「あいよあいよ〜〜。」

彼は小指を突き出すとキッチンへ向かって行った。


此処迄やって貰うのは正直言って申し訳無い。

僕が火を点ける為にはわざわざ外に行って薪を取らなければ行けないからしょうが無いと思うのだけれど。


けれど其う暗示を掛けてもやっぱり脅迫概念の様に纏わり付いて来る。


「はいよっと。」

彼は僕等に陶器のマグカップを配った。

蒸気が嘘みたいにもくもくと上がって居る。


僕等は言う迄も無く手を組み合わせる。


「「日々の糧に感謝して、そして生き物に感謝し、神様がくれた食物を頂きます。」」

「あ、日々の糧に……感謝して……そして……生き物に感謝し、神様がくれた……食物を……頂きます…………。」

ガルはやや言葉を詰まらせながら言った。


僕はスプーンで其れを食して行く。

口にはちょっと柔らかいお米の様な食感が伝わり、

ハーブのヅァㇺカ゚がちょっとピリッとする様な唐辛子では無いちょっと刺激の有る優しい味がした。


(あぁ、成る程、此んな味なのか…………。)

結構日本人は好きなのかも知れない。


僕が食べてる最中、ガルをちらちらと見てみたのだが、

最初こそゆっくり食べて居た彼だったけれども、

途中からはガツガツと食べる様に成った。


「……おかわり。」

まさかの僕が食べ終わる前に食べきってしまった。


「はいはい。」

ヴァルトは其れを聞くとお皿をキッチンに持って行って、

ビョーマェㇻ̇をよそって持って帰って来た。


ガルは其れを受けとるとガツガツと胃の中に収めて行く。


「あの……ガル? 大丈夫?」

余りの豹変っぷりに心配した僕は彼に尋ねてみる。


「う、あ、うん、」

何が如何したのか、さっきの青褪めた顔は何処へやら、

食事を食べたからか、調子が悪そうな感じは無く成って居る。


「頭痛とかは?」

僕はお皿に乗って居た其れを食べ終わった。


「無〜〜〜い。」

何だろう、途轍も無く単純過ぎる奴だ。

そもそも酒をがぶ飲みして此う成ったのか。


(はぁ…………。)

心配したのが悪かったのだろうか。


ヴァルトはにやにやして此方を見て居た。

止めてくれ。

此の回、四百字詰め原稿用紙十枚位使って居るんですよ。

何故戦闘シーンより料理シーンの方が枚数が多いのは何なんでしょうか……。

私の小説の七不思議です。


因みに他は、


壹、何故かやたら短い一話一話。

貮、主要人物がほぼ獣人。割と本格的なタイプの。

參、此処、其処、那処、何処、等代名詞が大体漢字。

肆、戦闘シーンより料理シーンの方が枚数が多い。

伍、変な片仮名表記。

陸、誤字脱字がやたら多い。


あ。漆は無いです。此処は学校の七不思議とかに倣って作ってません。


* * *


作中で話す暇が無かったので此処で言うと、

一週間は八日なので、彼は八日は此処に滞在する事に成ります。


後ロ̈ーン゜ヲ̇ーはフキみたいな物です。

中は空洞ですが成長した場合アスパラガスみたいに花を咲かします。

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