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第四十六話:関係性

僕等が朝食を食べて何気無い会話をして居た頃、

不意にドアがドンドンと叩かれた。


(またか……。)


此の臭いと足音は多分あの親子だろう。

今度は何んな面倒臭い事が待っているのやら。


其う思いながら扉を開けると、

何か麻袋を持った彼女が昨日の赤髪の少年を連れて立って居た。


「あ、あの…………悪魔さん?」

彼女が気不味そうに僕を見下ろして来る。

其れが失礼だと思ったのかちょっと腰を下ろして僕と目線を合わせた。


「はい……何ですか?」

又何か面倒な事でも起こるんじゃないだろうか。


「あの、家の息子によくしてくれたと云う事で……

 えっと、其のお礼です。此れ。受け取って下さい。」

彼女は其の麻袋を僕に差し出して来た。

思わず受け取ってしまう。


僕は驚いて中身を確認すると、

焼き菓子のべリィーウャが入って居た。


丁寧に一つずつ紙で包装されて居る。

かなり失礼だが、僕は匂いを嗅いてみた。


……毒は入って無さそうだ。


彼女は其れを渡すと祈る様なポーズをして膝を床に着けた。

やや頭は下がって居る。


……いや、其の感謝の仕方は最高限度の感謝の仕方じゃないか。

礼拝とか、神に祈る時のポーズじゃないか。


何処と無く居心地が悪い。


「ほら! ヴュンフェルもやって!!」

彼女に言われるが儘に彼も同じポーズをする。

何だろう、お礼を言われるのは嬉しいが此処迄されると……。


「えっと、取り敢えず顔を上げて下さい、

 僕は其んな……其んな感謝される事はしていませんから……。」

僕がホスト座りの様な恰好をして、

彼女に顔を上げて貰う様に願う。


しかし彼女達は其れを聞か無い。

正直、僕の居心地は悪い。


何分か其れをじっくりとやった後、

満足したのか顔を上げて僕の方をしっかりと見つめて来る。


「じゃあ、さようなら、悪魔さん!!」

「あ……さようなら……?」

彼女達はにっこりと笑って帰って行った。

……一体、彼女等に何の心境の変化が有ったのだろう。


僕は其れを持って家に入り、

袋毎机に置いて彼等は此う言った。


「あのさ、何か例の親子が来て此れ……

 べリ̈ィーウ̻̇ャなんだけれどさ、あの赤髪の子を助けてくれたから、

 って持って来てくれたみたいだよ。」

僕が其う云うとヴァルトはかなり怪訝な顔をした。

耳がおかしい位に後ろにひん曲がって居る。


「まぁまぁ、平気だろ、何か美味そうな匂いするし食おうぜ〜〜〜。」

ガルは麻袋の中の包装された其れを取り出して、

包装紙をべりべりと剥がして口に含んだ。


「あうんま〜〜〜!!!」

と本当に美味しそうに頬張って居る。

其れを見て僕も其処から一つ取り出して口に運ぶ。


「あ、ほんとだ。ヰ̇ーㇲ゛ポォㇻ̇かな、此れ。」

あの独特な酸味と甘味が口に広がる。

何処で入手して来たのだろうか。


彼はちょっと溜め息を吐き其処から一つだけ其れを取り出して、

口に持って行くと不安そうな顔をしてちょっとだけ齧る様に食べた。


「いや、此れメㇻ̇モーㇳ゛じゃないか?」

そうだろうか。

メㇻ̇モーㇳ゛にしてはやけに甘いと云うか、

其れだったらもっとさっぱりした味に成りそうだ。


「へ?」

「もう一個もーらい。」

僕が手を伸ばす前に彼が其処から取り出した。

包装紙の向き方がかなり汚い。


「あ、いや、えぇ……? 此れちがくね?

 何かこう……あ、ケ̊ㇻ̇ㇰレ̈イㇻ̇じゃねぇか?」

彼が自分の口の周りにに付いてしまったムース状の其れを指で取りながら言って居る。

全て取ると指を口に入れて舐めてしまった。


……汚い。


僕ももう一つ取ってみる。


口に含んでみると爽やかな酸味が口に広がった。

あ、此れはメㇻ̇モーㇳ゛だと思う。


もしかしてだけれども。


「……中に挟まってるのって何種類か有るんじゃない?」

普通に考えて此れしか無いんじゃ無いだろうか。


「あー……。」

「てことは三つは有るって事か?」

ガルは右上を見上げて


「多分。」

僕等はそうして何個か食べ進めて行った。


「あれ。」

もう無い。

……そういや一番ガルが食べて居た様な気がする。

まぁいいか、其んなに日持ちする物でも無いし。


さて、じゃあ……やろうか。

昨日決めた事をしなければ行けない。


「あぁ、そうだ、此れからちょっと外出して来る。」

「お、おい……?」

僕は其う言って玄関へ行き、

何かを感じ取った彼らを尻目にコートを着て外に出て行った。


* * *


僕はと或る家の扉をドンドンドンと叩いて居る。


「すいませーん。」

しかし中の人物は中々出て来ない。

何かガサガサと音を立てて居るみたいだ。


金属音のカンカンと合う音がした。

あぁ、嫌な予感がする。


「はいはーい。」

彼にしてはやけに素直な返答だ。

少し待って居ると扉が開けられ、

其処から金属の何かが此方に向けて飛び出して来た。


僕は其れを屈んで回避する。


「ヒューテ̣ㇺメㇻ̈・ヰ̇!!!!!!」

(げっ。)

まさかの魔法も放って来た。


「……ヘレ̈メリ̇ㇰ・トベオン」

僕は例の防御壁みたいなのを作り頭上からの雷を防いだ。

彼は其の光景を見てちょっと驚いて居る様に見えた。


彼は其れでも諦め無いのか、

其の剣をぶんぶんと振り回して僕を攻撃してくる。


其の攻撃は決して鈍い物では無く、

僕をしっかりと狙って来て居る様な気がする。


其れをスレスレで避け、やや距離を取りながら反撃の機会を伺う。


其れでも何度も長剣を振るって来る彼に、

僕は那の収納魔法から大剣を取り出して剣で其れで受け止めた。


ギガン! っと云う金属の派手な音がする。

何故他人(ひと)の家の前で乱闘騒ぎを繰り広げて居るのかは自分にも良く分から無い。


「うぐぐぐぐぐぐぐぐ…………。」

彼は歯をギシギシとさせ僕を其の儘押し倒そうとして居るみたいだ。

此奴、中々に力が強い。


ギギギギギ……と擦れ合う嫌な音がする。

僕はちょっと力の入れる方向を変えて彼の剣を下にやろうとした。


徐々に左に倒れて行く彼は力を入れて元に戻そうとするものの、

力を入れ方を失敗したのかガンっと変な音がし、剣が勢い良く後ろへと飛んで行った。


幸い、家から離れて居たお陰で家の前に有る花壇へと剣は突き刺さった。

彼が唖然とした顔で其の剣を見つめて居る。


流石に諦めたと思った僕は剣をしまうが、

彼はいきなり僕の首根っこを掴もうとして来る。


しかし其う成る前に彼の両手を掴み、

僕は溜め息を吐いて言葉をちょろちょろと出して行く。


「いや……お父さん…………暴力は止めて…………。」

しかし目を細めてもの凄い形相に成って居る彼は其れを聞こうとしない。


「取り敢えず…………。」

彼の腕を徐々に捻らせて行く。


「一旦…………。」

「ちょ、ちょ、お前!!!!」

徐々にだがゆっくりと彼の腕はクロスされて行く。


「話し合いましょう…………?」

「いでででででででで!!!!!!!!」


「ごめん!!!!!ごめん!!!!!!分かった!!!!分かったから!!!!!」

完全に彼の腕が絡み付いた所で、彼は(ようや)く話を聞く気に成ったみたいだ。

……出来れば此んな方法、取りたく無かったのだれども。

今回で進展が有りましたね。リングさんは自分の事に成ると一歩引きがちですが好きな人や相手の事に成ると一気に何でも出来ちゃう人です。或る意味恐ろしいかも知れませんね。

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