第四十二話:王に成るのは誰だ
何故か戦闘シーンより白熱してるシーンは未だ未だ続きます。
僕は如何してやろうかと思った挙句、
普通に僕の中で一番小さいカードを出した。
緑の四だ。
ヷルトは黒の五をさっと出す。
其の子は少し悩んだ様な顔をしてカードを指した。
「此れ?へいよ。」
出されたのは白の七だ。
(七かよ!!!)
僕の手札にはあいにく八が無い。
ならばもう此処で切り札を切ってしまおう。
黒の狼のカードと緑のメㇳㇲを取り、
狼のカードを下にして場に置いた。
ガルに乗って居る子以外、
皆ぎょっとして居る。
「おいおいおいおい…………。」
さっき迄威勢の良かったガルが眉を下ろし唖然とした顔をした。
ヷルトは場を進めるかカードを裏にして僕に二枚差し出し、
ガルは何か揉めて居る様だった。
「なんであげちゃうの?
此れ僕のカードじゃん……。」
ガルが差し出そうとしたカードを引っ張る様にして
不満げな顔をして居る。
「メㇳㇲの狼の組み合わせを出されたら、
狸と狐と狼のカードは出した奴にあげなきゃならないんだよ……。」
彼は語りかける様に言い、彼のカードを取ろうとする。
「でも…………。」
と駄々を捏ねて居る。
何時もだったら多分「あ〜〜いいよいいよ〜〜〜」
とか言って居たのだろうが、今回は本気だ。
本気でやってる。だから手加減はしない。
其んな調子を見て、ヷルトは溜め息を吐いた。
「未だ勝負は終わった訳では無いだろ、
後から巻き返せば良いだけ。だから今は出しな。」
ちょっと冷たい調子でヷルトが言った。
其の子は其の言葉を聞くと納得しきって無い様子だけれども、
渋々、と云った感じで其のカードを表向きで出した。
狐と狸のカードだった。
「……ありがとね。」
僕は彼を見て其のカードを有難く貰う。
ちょっと彼が可哀想だ。
ちなみにヷルトが出してくれたのは狐と狼のカードだった。
「えぇっと次は……ヷルトか。」
ガルが呟く様に言った。
ヷルトは何も言わずに手札を凝視すると、
白の三のカードを出した。
其んな危ない状況なのに何故顔色一つ変えずに
其んな冷静にして居られるのだろう。
其の子は其れを見てカードを指し、
ガルが黒の五のカードを出した。
僕は又山札から取る訳にも行かないので、
緑の七のカードを出した。
ヷルトはちょっと体を前のめりにして其れを見ると、
如何したのか一枚僕が裏っかえしにした其れの上に置き、
山札から一枚取った。
其れをシャッフルすると緑の十のカードを出した。
今度はガルが悩む彼に何か言い、
黒の十二のカードを出した。
十二なら十三のカードを持って居るから其れを出そう。
僕は緑の十三のカードを出した。
反対側の彼が又如何したのか一枚捨て、
山札から一枚取り又手札をシャッフルして二枚カードを出して来た。
「えぇ!?」
「うっそだろおい!!!」
僕とガルが同時に叫ぶ。
彼が出したカードは何方も黒の狸とメㇳㇲだったからだ。
「其う言われても別にルール違反はして無いからな〜〜〜。」
と言って山札から四枚取った。
又々手札をシャッフルして居る。
「えだってさっき巻き返せば良いとかなんとか……。」
彼が明らかに不満そうに項垂れて居る。
「……巻き返すのには多少の運も必要なんだよ。」
一枚カードを中指と人差し指で挟んで彼を見下す様に言った。
「だ、だいじょぶだ、うん、此処から!!!此処から巻き返せば良いから!!!
うん!!!!平気!!!!平気だ!!!!!!」
ガルが慌てて、そして自分に語りかける様にやや大きな声を出した。
「う、うん……。」
余りの其の焦りっぷりに彼が圧迫されて居る。
「えっと……取り敢えず此れ!!此れで良いよな?」
ガルが其の子を見ると首を縦に頷いた。
其れを見て彼は其のカードをバシッと出した。
白の二だ。
(う〜〜〜ん…………。)
しょうがない、白の九を出そう。
其れを出すと、ヷルトはカードを見て、
赤の十一のカードを出して来た。
「よしよし……。」
ガルが何か呟いてにやにやとして居る。
其の子はきょとんとして彼に耳打ちをした。
其れを聞くと。
「だいじょぶだいじょぶ。此れなら。ほいよっ!!!!」
カード投げの様に其れを飛ばし恰好付けた様にして居る。
出したのは黒の十二のカード。
十二か。僕は手札を見てみる。
今手元に有るのは緑の十四、白の九、赤の十六、緑の十一、
緑の狸、白の狼、黒の狐、白の狸、白の狐。
(うーん……緑の十四を出すしか無いか……。)
ゆっくりと其れを置いた。
其れを被せる様にカードが置かれる。
次は赤の十五だった。
「次は此れだよね?」
其の子はガルに確認して居る。
ガルは頷き、其の子がカードを出した。
白の十六だ。
僕の手元とには狸のカードが二つ在る。
何方が良いだろうか。其れとも余り変わら無いだろうか。
何となく直感で緑の狸を出した。
ヷルトが少し悩むと赤の狐を場に出された。
……何だろう。何故か頭にはカップ麺が思い浮かんで居る。
「う〜〜〜〜〜ん…………なぁ、捨てるなら何れにする?」
ガルが彼と目線を合わせて訊いた。
彼は何かを指してガルは其れを捨てた。
そして山札から一枚取った。
「あぁ…………駄目だこりゃ…………次進んで……。」
ガルが深く腰かけて其う言った。
多分出せるカードが無いんだな。
「うん、分かった……。」
とは言っても、僕が出せるカードは一つしか無い。
僕は白の狼のカードをさっと出した。
思ったよりもゲームはあっさり終わってしまった。
此のゲームが終了する条件は二つ。
誰か一人の手札が全て無くなる事、
それかもう出すカードが無くなった時だ。
「「「「…………。」」」」
僕等は其れを魂切れた様に見て居た。
不意に、ヷルトが口を開く。
「取り敢えず、皆見せようか……。」
「だね……。」
「うん……。」
「?」
僕等は手札をほぼ同時に見せた。
「じゃあ、集計。狐は十七点、狸は十八点、狼は二十点だからな、
あ、メㇳㇲは二十点じゃ無くて零点だからな。」
彼が視界の様に場を回す。
「へいへーい。」
「うん。」
僕の残ったカードは白の九、赤の十六、緑の十一、
黒の狐、白の狸、白の狐。
だから……。
「よし、計算出来たか?じゃあ先ずは俺から。八十五点。」
ガルが其れを聞いて悔しそうに牙で唇を噛む。
「……五十一点。」
残念そうな顔をして言った。
「兄貴は?」
ガルが何かを悟った様に僕に顔を向ける。
「あ、えっと…………ちょっと待ってね。」
僕はカードをもう一回見てちょっと呟きながら数える。
多分ヷルトには負けて居るだろう。
(……あれ。)
幾ら計算しても何かおかしい。
此れってもしかして……。
僕はカードを置いてゆっくりと口を開いた。
「……八十六点。」
「え?」
「へ?」
「……??」
まさかの僅差で勝って居た。
彼等が驚いた顔をして此方を向いて来た。
「うっそおぉぉ〜〜〜〜〜マジかよぉ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
ヷルトが本当に悔しそうに腰を後ろに曲げ、
右手で目を覆う。
(あの時に狼のカードを出したのが良かったのかな。)
「けーっ、つまんねぇ、結局兄貴が勝ちかよ〜〜……。」
彼が悪態と付いて居る。
(つまんねぇとは何だつまんねぇとは。)
口には出さ無いで於いた。
「あ。」
何となく窓を見ると、
もう雨は上がって居た。
「……キリ良いし、此処で終わろうか。」
机に並べて居るカードを回収すると、
僕は彼の方を向いた。
「ホントに一人で帰れる?」
僕が言うと彼がゆっくりと頷いた。
「んじゃ、此の子帰るって。」
* * *
「えっと、其の……有難う御座いました……。
あぁと…………さようなら?」
彼は玄関に居て靴を履き、
僕等に向かって手を振った。
「さよなら。」
「おう、またな。」
「…………さよなら。」
僕等が其う言った後、
彼は僕等をちらちら見ながらゆっくりと出て行った。
名残惜しいのだろうか。
(あ。)
僕は重要な事を思い出した。
(名前、聞いて無ぇや……。)
裏話的な話なのですが、一応彼等の手札を仮想的に作って動かして居たのですが、
まさかヷルトとリングが一点差に成るとは思ってませんでした……。
作ってて自分がびっくりしました。




