第四十一話:狼の王
何故狼の王、と云うタイトルが付けれられるかと言うと、
ネタバレには成るのですが、
ウイㇻ̇ロ・アリ̈・ヂェンク゚が狼の王、と云う意味だからです。
「ま〜〜〜だ雨止ま無いなぁ……。」
ガルが机に顔を乗っけて不満そうな顔をして居る。
「此れじゃ今日中に帰れ無いかもね、
自分のお家は分かる?」
僕が訊くと何も喋らなかったが、こくんと頷いた。
「じゃあそっかぁ……なら見送りする心配は無いけど……
如何しよっかねぇ……此んな土砂降りじゃ僕等も出たく無いし。」
僕が頬杖を付いてちょっと困った顔をした。
毛皮がびっしょびっしょに成って色々と大変だし……。
何となく変な気がして窓をちらっと見ると、
ピカッと黄色い光が射して同時にズドンと云う大きな音が鳴った後、
ゴロゴロゴロ……と雷鳴が鳴った。結構近い所で落ちたみたいだ。
「……こりゃ当分帰れ無さそうだね。」
僕は頬杖を離して机に置いて在る紅茶を飲んだ。
「おーいヷルト、大丈夫か?」
机に突っ伏して居た彼が顔を上げて、
反対側に居る彼を見て不安そうに言った。
「あ、いや……平気、うん。大丈夫……。」
顔は平気そうな顔をして居るが、
目に見えて毛が逆立って居るし、
耳もへたれ込んで居て尻尾も驚いた様に立ち上がって居る。
「いや大丈夫じゃ無いだろ。
明らかに耳とか尻尾とかびくついて居るし……。」
彼は彼の事も知らずにズカズカと言って行く。
今回に付いては余り詮索し無い方が良いと思うのだけど。
「いや、あの……ははは……大丈夫だよ、うん。大丈夫……。」
彼は其れを受け流す様にして笑って居る。
けれど何か、本心で笑って居るって依りも、
乾いた笑いで、何処か死んだ様な笑顔だった。
「……そうか。」
流石に何かを感じ取ったのか彼は詮索を止めた。
そして気の不味さを感じ取ったのか、
其れを隠す様に別の話題を話し始めた。
「あぁあ、えっと、あの、あんたさ、
如何して其の……あぁ、雨宿りするまでっつうか……
なんか此う……経緯っつうか? 何で此処に来ちまったんだ?
此処って……結構遠いぞ? 村の入り口だし……。」
彼は其の子供に向かって言葉を荒っぽく紡いだ。
「……あ、えっと…………ロ̇ㇷ゛リ̈カしてたら……
多分ココなら……バレないだろうと思ってたら……
そのまま……雨降って来ちゃって……帰れ無く成っちゃって……。」
其の顔に驚いたのか分から無いが、
ちょっとしどろもどろにやや下を向いて
出来事を捻り出す様に話した。
「すいません……。」
顔をもっと下に向けて弱々しく声を放った。
「あー、そっかそっかぁ……何かごめんな……。」
彼は其の大きな手で頭をわさわさと触る。
「ううん。」
顔をちょっと上げて首を横に振った。
「あーっと、んじゃあ……んーっと……なんかさ、
リング、遊べるもんって無いか?なんか此う……卓上のさ。」
彼が手で四角を作って
「うーん……ちょっと待ってね。」
僕は収納魔法を漁り始めた。
* * *
「あ、ㇰ̊ンデㇻ̇ラなら有ったよ。ウイㇻ̇ロ・アリ̈・ヂェンク゚でもやる?」
「あ、やるやる!!!」
ガルが食い気味に手を上げて子供っぽく声をあげた。
ㇰ̊ンデㇻ̇ラはトランプみたいなカード。
一から十六、狸、狐、狼、そしてメㇳㇲのカードが有る。
ウイルロ・アリ・ヂェンク゚では、
一を配られた人が其れを出し、時計回りに順番を進める。
そして其れに対して大きいカードを出す。
狸、狐、狼は其々十七、十八、十九に成る。
此処だけ見ると大富豪みたいだ。
けれど違うのは此処から。
勝利の条件は持って居るカードに書いて有る数字の合計。
其の数字の合計が一番多ければ勝ちに成る。
メㇳㇲは何も能力が無いけれども、
狸、狐、狼と一緒に出すと其の能力を発揮する。
狸は手札を四枚増やせる。
狐は相手の手札を取り替える事が出来る。
狼は動物の手札を全て奪える。
「あ、俺コイツと一緒でも良いか?」
彼が其の子を抱き上げて膝に乗せて言った。
其の子は気難しい様なちょっと嫌な顔をした。
「あぁ〜〜…………そうだね。
子供にとっちゃ難しいかもね、良いよ。」
僕が其う言うとヷルトはキッと此方を睨み、
何か不満げな顔をして居る。
「なぁ、其れは不公平何じゃ無いか?」
「……へ? 子供何だしさ〜〜〜、其の位許してやってよ。ね?」
僕が彼に頼み込む様に言うと、
「……はぁ。」
彼が尻尾と耳と肩を落として溜め息を吐いた。
「おいおーい、やろうぜ〜〜!!」
ガルが手招きをし嬉しそうな顔でやや大きな声をあげる。
ヷルトは椅子をズラして座り、
僕は反対側に座った。
「じゃあ、十三枚で良い?」
「あぁ。」
ガルは言葉に出し、
ヷルトは頷いた。
僕は其のカードをシャッフルし、
彼から順にカードを配って行く。
彼は其れには触らず、ガルは子供と一緒にカード捲ってを見て居る。
十三枚配り終わった後、
僕はカードを全て捲って確認する。
右から緑の十四、緑の四、赤の三、緑の狸、黒の狼、黒の二、緑の十三、
赤の十六、赤の七、緑の十一、緑のメㇳㇲ、白の九、緑の七だ。
お、ラッキー。メㇳㇲのカードが有った。
時には一発逆転が狙えるかも知れないから大事にしなければ。
「じゃあ、一持ってる人居る?」
僕が言うと其の子がガルが持って居るカードを指して、
ガルが顔を合わせて其れを出した。
机に置かれたのは黒の一のカード。
時計回りだから次は僕だ。
僕は黒の二のカードを差し出した。
ヷルトはちょっと迷った様な表情をして赤の三のカードを出した。
「これ。」
膝に乗ってる其の子がカードを指して言った。
「あー、いやいや、同じカードは出せ無いんだよ。」
彼が其の子に優しく言い、
左に在る最後のカードをちょっとだけ出して居る。
「じゃこれ?」
其の子が違うカードを指した。
「あ〜〜〜、確かに其れでも良いね。
でも此れならえっとね……。」
彼が何かカードを指し、
アイコンタクトをすると二枚のカードを出した。
(げっ!)
其れは赤の狸と赤のメㇳㇲのカード。
置いて在るㇰ̊ンデㇻ̇ラから四枚取って行った。
(クソ……。)
如何しよう。
取り敢えずメㇳㇲは大事な時に取って置きたいから、
今は僕の中で一番数字の小さいカードを出そう。
僕は一枚カードを取り、
赤の三を出した。
ヷルトは其れを見るとさっさとカードを出した。
赤の四だ。
膝に乗って居る彼はカードを指し、
会話をしてカードを出した。
黒の五だ。
僕はちょっと首を傾げて何方のカードを出すか悩む。
赤の七か、緑の七か。
僕は緑の七を出した。
彼は其れを見るとちょっと唸って考え込んだ後、
緑の八を出して来た。
ガルは其れを見るなりニヤリとした表情に成り、
其の子に耳打ちをして居るみたいだ。
彼の顔はカードで隠されて居てよく分から無い。
すると、又二枚のカードが場に出された。
何かと思って見ると緑の八のカードと其の上に緑の二のカードが出されて居た。
(嘘だろおい!?)
そうか、下と同じ色なら出してもよいのか……。
もしかして此奴、僕を徹底的に潰そうとして来てないか?
其う思うと何か焦りに似た対抗心が湧いて来る。
絶対に此奴に勝ってやらないと。
何故毛皮がビショビショに成る癖して雨が好きと言って居るのは、
彼曰く『雨の“音”は好き』……だそうです。




