第四十話:子供が雨宿りしに来た
久々のクソ長タイトルです。
「よし!!終わった!!」
僕は朝っぱらからお風呂掃除をして居る。
……二人共起きて来ないし。
あのポンコツ二人は後で起こすとして、
今僕は其れよりも気に成って居る事が有る。
「あぁ……。」
扉を開けて、其の光景に思わず手を額にやってしまう。
マン゜ギアが何か棒に括り付けられて居る。
周りには何かの血が入ったグラスみたいなのが飾られて居る。
(最近収まって来たのになぁ……。)
何か深夜にごそごそと音がしたから其うだとは思ったけどさぁ……。
しょうがないからさっさと片付けよう。
と、僕が其奴を如何しようとか考えて居ると、
後ろからガルジェが現れた。
「あぁ、兄貴、おはよう……。」
「おはよ。」
彼が欠伸をしながら言って来た。
ふわあと犬科らしく大きく口を開けて居る。
「……何其れ?」
目をパチパチとさせて僕が持って居る其れを指差した。
「あぁ、何か……時々ね、此うやって物とか魔物とか玄関に置いて在る事が有るんだよ。」
「え、何でだ?」
不思議そうに腕を組んで訊いて来る。
「さぁ……? と或る親子がやってるのは分かるんだけど……
多分僕を悪魔と誤認してるみたいで……。」
正直、何故誤認してるのって訊かれたら、
『見た目』と答える他無い位には理由が不透明だ。
那の子供に注意したのが悪かったのだろうか。
「注意したのか?」
彼は未だ気に成って居るみたいで、
耳をピクピクとさせて訊いて来る。
「そもそも付き合ってくんない。」
「あー……。」
僕が吐き捨てる様に言うと、
渋い顔をして目を細めた。
「あ、おはようございまふわあああ…………。」
やはりと云うか欠伸をし口を押さえ、
眠たそうな眼を擦って居る。
「あ、おはよう。」
「おはよ〜〜。」
僕と彼がほぼ同時に言った。
「あ、其れ?迷惑だ、って言ってたのって。
何で此んなもん送りつけてくんだろうね。」
「ねぇ……良い加減止めて欲しいねぇ……多分食べれもしないだろうし。」
そう云えばヷルトって一度も見た事無いっけか。
僕も溜め息を吐いて魔法を放った。
「ケンザ̂イ・ハゥ」
僕が其う言うと亡骸が虚無に消えて行く。
まるで元々其処に無かったかの様に。
「よし……まぁ此れでいっか……。」
右耳の後ろ辺りを掻き、
後は残された何かの器具を片付ける。
「何か勿体無い気もするけどな。」
彼は残念そうな顔をして言うが、
此んな長時間放置されて居た物食いたいのか?
「取り敢えずご飯にしましょ?」
ヷルトが何時もの笑顔を浮かべて言う。
* * *
「あ。」
僕がㇰ̊ル̇ケッツォを切り分けて居ると、
外から雨が降る音がした。
ザザーっと大きい音が聞こえ、
多分かなり大雨なのだろうと思う。
「あぁ、こりゃ今日は外出は無理そうだなぁ……。」
彼が耳を後ろにやってやや牙を見せながら其れを頬張る。
隣に居るヷルトと見ると、耳を其っち此っちに動かしながら、
何か不安そうな顔をしれ居る。
「……如何したの?」
雷の音も其うだし、
雨とか其う云う類の物が嫌いなのだろうか。
「あ、いや……いや、うん……何か……其の……。」
耳を触り顔をやや後ろや横を向き、
唇を噛みながら嫌な顔をして居る。
「雨の音嫌いなのか?俺も好きじゃ無いけど。」
其れを言うとこくんと頷き、
余り食事も進まない様だった。
「其う?綺麗じゃない?」
雨のポツンポツンと落ちる音や、
ザーッと降る音、其の儘激しく壁を打ち付ける音とか、
結構素敵に感じるのだが。
「……やっぱ兄貴変わってるよな……。」
彼は口に含んで居る其れを飲み込むと、
やれやれと言った感じで其う言った。
「其うなのかなぁ。」
僕は大きく切り分けたㇰ̊ル̇ケッツォを口に運んだ。
僕等……ヷルト以外が食べ終わった後、
トントン、と玄関扉が叩かれた。
誰だろうか。
僕が彼に断って扉を開けると、
土砂降りの大雨が降って居るのが確認出来た。
ちょっと目線を下に向けると、
赤髪で短髪の、黒い眼を持った僕より背の低い子供が居た。
其の子は僕の姿を見るなり震え上がり涙を堪えても出てしまう様で、
ひっくひっくと咽び喉から絞り出す様に声を出した。
「あ、あの……えっと……。」
「…………如何したの?」
僕はしゃがみ込んで彼と視線を合わせる。
「あ、あぁ、其の……あま……あぁ…………えぇっと……。」
「……あま?」
多分此の状況だし何となく目星は付くが。
「雨宿り…………。」
僕を畏怖する様な眼で見つめ、
掠れた声で言った。
「あぁ……そっかぁ……じゃ、おいで。」
成るべく優しい声で言い、
扉を開けて家の中に誘導する。
「あ、あぁ…………いやえっと…………お邪魔します…………。」
驚いた様におずおずと入って行く。
「ヷルト〜、ガル〜、此の子雨宿りしたいって〜〜。」
僕が彼等に其う云うと、ガルは口を開けてやや頷き、
ヷルトは嫌そうな顔をして居る。
「あ、雨だもんな。」
「…………。」
ガルは立ち上がって此方に来て、
ヷルトはそっぽを向いて不貞腐れて居る。
「あ、ちょっと待ってね。」
其の子に其処で待機して貰う様に、
手を握って言った。
「あ、ヷルト、何か拭くの持って来て〜〜〜。」
彼に其う言うと態々牙を見せて嫌な顔をし、
洗面台の方へ向かってタオルを取り出してきた。
「ほい。」
僕に向かって投げて来た。
其れを迷いも無くキャッチする。
よく見ると、しっかり複数枚在った。
子供が嫌いなだけで、此う云う所は気が利く。
先ずはびしょびしょに成った靴を脱がして来客用のスリッパを履かせ、
そのタオルで全身を拭いて行く。
人間は体毛が無い分拭くのが楽だ。
其れを終えた後は、
彼が熱属性で髪の毛等を乾かしてくれた。
勿論靴下も。
雨に打たれた等もう微塵も感じられ無い彼を
一番暖炉に近い所に座らせ、
僕は紅茶を淹れて差し出した。
「……え、なんか…………其の……毒とか……入って無いですよ……ね?」
彼が其れを見て訝しげに訊いて来た。
目も怖がって居る様に思える。
其の突然の言葉に僕等は黙り込んでしまった。
「ぶほっ!!!かはーーーー!!!!はっはっはっはっはっは!!!!!!!」
其の沈黙が余りにもおかしかったのかガルがお茶を吹き出して、
顔を上に向けてワイルドに笑う。
「……ふふふ……へへへへ……あはははははははは!!!!!!」
僕は何とか笑わ無い様にしたが、
釣られる様にして僕も思わず笑ってしまった。
「っ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
ヷルトは如何してるか隣を見ると、
口を押さえて身体を縮こめて笑って居た。
「???」
当の本人はきょとんとした顔をしたが、
僕等が笑った所為かにっこりと笑顔を浮かべて居た。
「だいじょぶだいじょぶ、毒なんて入って無いから。」
僕が笑いを押さえられず時折含み笑いをしながら彼に言った。
其れを聞いて安心したのか紅茶を飲み干してしまった。
「……おかわり。」
コップを差し出してあどけなく言った来た。
個人的にガルの笑い方好きです。
ハイエナだから顔は怖いっちゃ怖いので、
其う云う人が笑うと何か惹かれるモノが有ると思ってます。
只基本的にガルは笑顔なので余り怖くは無いでしょうけれど。




