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第三十九話:就寝迄の※

八月二十五日、一部ルビの振り忘れが有ったので修正しました。

「「「今日も食料をくれた神様に謝恩して、有難う御座いました。」」」

僕達は両指を組んで其の言葉を言うと、夕食を終えた。


「ん〜〜久々に風呂入れるかぁ……。」

ちょっと背伸びをして其う言った。

ガルも来たし、入らせてやりたい。


此の国で風呂に入る習慣は一応或るが、

其うは云っても銭湯みたいな、

大衆浴場に入るだけで一家に一台は無い。


「……え、家に有るのか?」

ガルは訝しむ様に聞いて来た。

尻尾も同じ様にゆっくりと横に揺れて居る。


「有るよ有るよ〜〜一人位しか入れないがな。」

ヷルトが嬉しそうに広角を上げ、

耳をピンと立て、やや尻尾を上げて言って居る。


「どんなもんなんだ?」

関心を持った様にズイズイと訊く。


「見るか見るか??」

彼は立ち上がって風呂場の方へ案内した。


……彼等は何か騒いで居るし

多分ワイワイやって戻って来ないだろうから、

此の間に食器洗いでもしてよう。


僕はお皿を持って、

革手袋をして桶の様な物に水を入れ、

皿を束藁(たわし)のみたいな物でゴシゴシと洗う。


そして其れを立てる大きな水切り籠に入れ、

二段目三段目も埋まって行く。


其れを終えた後、

彼等がキッチンにやって来た。


「あ、リングごめん!」

ヷルトが僕を見て其う謝る。


「ううん、別に如何とも。」

僕は基本的に、自主的にそして自発的にやっただけで、

別に謝られる事何かして無いと思うのだが。


正直言って此う云う時に何て言ったら良いか分からない。


「多分兄貴は自主的にやっただけだと思うから、

 謝る事無いと思うぞ。感謝した方が嬉しがると思う。」

と後ろから言う。

お、流石家族。分かってるじゃないか。


「え?あ、うん……あ、ありがとう。」

と両手をずらして合わせて握った。


「……どういたしまして。」

僕も同じ様なポーズをして彼に微笑む。


「あ、風呂、入れて来たぞ。」

ヷルトがお風呂の方向を親指で指して

其う言った。


「ありがと〜〜〜……て如何やって?」

「? 普通に魔法で。」

平然とした顔で言う。

あ、そうか。普通は水特性や炎属性が使えるもんね、

僕は使え無いから忘れて居た。


「多分其の内沸くからな待っててな。」

「うん、分かったよ〜。」


* * *


「ふい〜〜〜〜〜あ〜〜〜〜〜きもちいい〜〜〜〜。」

やはりおっさんみたいな声を出して風呂に入って居る。


……何時もの疲れが取れて行く様な其んな気がする。

本当は入浴剤とか入れられれば良いのだけど。


前世ではありきたりでは或るが、あの五文字の入浴剤が好きだった。

あ、けれど五文字の入浴剤って二つ在るな。


其んな如何でも良い事を思いながらぶくぶくと風呂に沈んで行く。

……最後だし、此の位やっても良いだろう。


風呂の中で自分の毛が浮いて居るのが分かる。

もし前世でも此の姿で有ったら銭湯とか大浴場に行った時は大変だっただろうな。


もし仮にあの世界に獣人が居たら、

世界は如何成って居たのだろうか。


其う思考を巡らせてみるが答えは出ない。

……本当に如何でも良いな。


其の後はゆっくりと風呂に入りながら、

適当な事を夢想しながら浸かった。


* * *


「あぁぁぁぁ……気持ちよかったぁ……。」

僕はタオルで熱心に身体を拭く。

全身が毛皮で覆われて居るから余計拭かなければ行け無い。


……あぁ、此う云う時に魔法が使えれば良かったのに。

男同士だとは云えあいつ等にやって貰うのも何か嫌だ。


プライドか、プライバシーか。


僕はしっかりと拭くと寝間着に着替え、

扉を開けると彼等が見えた。


「ほい、出てきたよ。」

タオルを首に掛けて其う言った。

火の音が弱いからと暖炉の方を見てみるともう火が消えそうだった。


「あ、ちょっと薪取ってくる。」

僕は彼等に手を見せてドアを開けた。


「うぅぅぅぅあぁぁぁ!!!」

寒い。とてつもなく寒い。

さっきお風呂に入って身も心もぽかぽかに成ったのに

身体の芯まで冷えそうだ。


さっさと薪を取って戻ろう。


外に置いて在る薪を何本か取って家に戻る。

僕は其れを置いて収納魔法から火打石を取り出す。


かなり炎が弱く成って来たみたいで、

薪を追加しただけでは如何にも成らなさそうだ。


火打石で何度も火を付けてみるのだが、

何故か今回が上手く行かない。


心の中で舌打ちをして居ると突然右の方からびゅんと音が()こえ、

暖炉に炎が着いた。


「あ、もしかしてガルが?ありがとね。」

僕が其う言うと彼は唖然とした表情をすると、

直ぐに何時もの顔に戻って此う言った。


「ははは……気づかれずにやろうと思ったんだがなぁ…。」

と参った様に手を振って、

置いて在った飲み物を飲んだ。


「ゴフッゴフッ!」

……何故か咽せた。


「え!?あ……。」

「大丈夫!?」

ヷルトが背中を擦って居る。


「あぁ、大丈夫……。」



其の夜。



彼は僕の部屋で布団を敷いて寝て居た。


自分から此の部屋を選択し、

熱狂的とも言える態度で「兄貴と一緒に寝たい!!!」

と言われてしまったからだ。


断れ無い。


「……なぁさ。」

ランタンの明かり一つだけが光る此の部屋で、

顔を反対に向けながらも呟く様に僕に話し掛けて来た。


「如何したの?」

一応、ちょっと腰を上げて彼の方を見つめる。


「……兄貴って魔力が視えたりするのか?」

唐突過ぎる質問だった。


「うーん、余り言語化は出来ないけど……それなりには感じ取れる……かな?」

ちょっと首を傾げて言った。


正直自分でも何で視えてるか分から無いが、

何故其れが魔力なのかも分から無いけれども、

何となく直感的に分かるのだ。


「……やっぱりか。」

聞こえるか聞こえるか微妙な声で彼は言った。


「…………。」

彼に何か言おうともまるで電話線が混線してるかの様に、

言葉がぐちゃぐちゃに成って喉から出て行か無い。


「……俺さ、昔からずっと馬鹿で阿呆で、

 何するのにも人一倍掛かる奴だったし、

 だから其の差を埋めるべく努力して頑張って来た筈なんだよ。」


「でも、学園入ってから努力じゃ如何にも出来無いのかな、

 って思い始めちゃって……でも其れでも、此う、

 縋る様にやって来た筈なんだよ。」


「圧倒的な才能の差を見せつけられちゃって……

 うん、俺はずっと二位だった。抜かす事は出来無かった。」


「兄貴を抜かして立派なランヴァーズに成るって決めてた筈なのに、

 何やってんだろうな……俺…………はぁ。」


「もう何か……俺って才能無いのかな……って……

 魔法も……勉強も…………。」


「………………。」

僕の脳裏にはがむしゃらに、只純粋に頑張って居た学生時代の記憶が浮かんで居た。

那の時は何を考えて居たっけ。


レポートを書いて、授業に参加して……。

そしてテストで良い点を取って……。


アルバイトも頑張って……。


其れなのに、其れだったのに、

結局報われ無かった様な其んな気がする。


社会は余りにも不条理だった。


だから今此処で第二の人生を歩んで居るのだろうか。


多分……多分だが……経験上……此れが言えると思う。


「……努力出来るのも才能の内だよ、きっと。」

「…………そうなのかなぁ……。」

此の寒く長い冬の夜に飲まれるかの様に僕等は黙ってしまった。


「……ショㇻ̇ㇳ゛消して良いか?」

顔を此方に向けてベッドの横に有る棚の上の照明を指して言って居る。


「うん。」

僕が頷くと淡い光の様な物が其れに向かって放たれて行き、

其れがスッと消えた。


彼はそっぽを向いてしまって居た。

ガルはバリバリ陽キャのイメージで書いて居るのですが、

意外と彼は苦労人だったりします。


苦労人と云うか……努力家ですね。

苦労人だとするならばリングさんの方が苦労人です。


元々其んな才能が無いのを自覚して頑張ってますからね。

努力の才能の内と言いますが本当に其うだと思います。

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