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第三十七話:やいのやいのと

其の後は僕が反論する暇も無く言葉を畳み掛けられて一週間は此処に居るとか言って居る。


(お前さぁ……。)

心底其う思うがまぁヷルトともなんかかんや云って仲良さそうだし、

取り敢えずは良いかと其う思う事にした。


「そうだぜ〜〜〜だから八百屋で準社員として働きながら

 昼は学校へ行ってって感じでな。」

自信たっぷりに体験談を意気揚々と語る。


彼の話を聞いて居ると昔コンビニでバイトをしながら大学へ行って居た時を思い出す。

那の時は……必ず努力は報われるんだと思って必死に頑張って居たっけ。

此れで此の後の人生をしっかりとしたモノにすると頑張って居たっけか。


結局は自殺しちゃったけどね、ははは。




……笑え無い。


「其れって……体ガタガタに成らないか?」

彼も打ち解けて来たのかタメ口に成って来て居る。


「いやぁまあ、時にはやっばい時も或ったけど何とか平気だぜ。」

軽い感じでさらっと言う。

……だろうな。僕だって似た様な事に成った事が有るし。


「あぁ、兄貴、今日行かないのか?」

「……何処に?」

彼が顔をくるっと回転させて此方を見て来る。

何か疑問を感じた様な顔をして居る。


「魔物討伐とか。」

「今日は無理。そろそろ冬の魔術学会が開くし、

 其れに合わせて論文出さなきゃ行けないし……。」

其の言葉を聞くと耳をピクリと前に動かして、

僕の方を見て尻尾を馬鹿みたいに揺らし、

立ち上がって訊いて来た。


「ろ ん ぶ ん ! ?

 何ソレカッコいい!!!!見せて見せて!!!!」

僕の肩を揺らして居る。

僕の方が身長が低いから圧がとんでもない。


ヷルトがぽかんとした顔をして居る。


「いや、ちょっと……止めてね……一人でやりたいから……。」

多分あんたが居たら集中出来無い。


「良いだろ良いだろ!

 な、見せてくれよ未来の魔導士候補にさ!!!!」

目を子供みたいに輝かせてもっと揺する。

マリルちゃんが見せる(まなこ)と瓜二つだ。


(此の野郎……。)


* * *


「何か凄いな!!!何か此の地下室ワクワクするな!!!!」

那の地下室に来て騒がしくして居る。


「……お願いだから静かにしてね。」

正直後ろに人が居るだけで嫌なのだが。

集中し辛い。


「分かった!!!!」

大声を上げて小指を突き出した。

其の声の張り上げ方は分かって居ない奴だろ……。


僕の横ですらすらとブロック体を書く様子を眺めて居る。

何故か緊張するが、まぁ煩く無いから良いだろう。


数十分か経った後、耐えきれ無く成ったのか話しかけて来た。


「……なぁ。」

「………………。」


「……なぁ。」

「………………。」




「………………。」

「………………。」

万年筆のスルスルと云う音だけが聞こえる。




「何か喋ってよぉ!!!!」

耳元で喚いた。


「……っるせぇ!!!」

万年筆をガンと置いて大声を出す。


「なんでよ!!!」

「黙れって言ったろお前!!!」


「だって静かじゃ耐えられ無いよ!!!」

「だったらヷルトと話して来いや!!!!」


「なーんーでー!!!」

「あぁもう此の野郎!!!!」


「良いじゃん良いじゃん何書いてるか見せてよ!!!」

「見てるだろうがお前!!!」


「もっとよく見たいよ!!!」

「作業が進まねぇだろうが!!!!」


* * *


「あぁ……。」

「あ、リング……お疲れ様。」

結局ガルにはヷルトと料理を作らせに行った。

彼は立派にエプロンなんかして料理人の様な雰囲気がする。


狐と料理って妙に合う気がするのは自分だけだろうか。


「へっへへ〜〜〜ん、どうだ!!!此れ!!!

 俺が作ったんだぜ!!!」

あぁ、フ̇ィㇻ̇レニアットェㇰじゃないか。

此れは肉を衣を付けて揚げた物。カツレツみたいな。


只香辛料や香味料をふんだんに使うのと、

其処迄脂っこくは無い。


サラダ油じゃ無いからだろうか。


彼の作った其れは野菜等の盛り付けがしっかりして居て綺麗だ。


「おぉ〜〜〜、凄いじゃん、他には?」

「えー…………へへへ……。」

恥ずかしそうに頭を掻いて居る。

あぁ、だろうな。でも頑張っただろうし責めないでやろう。


料理、ドが付く程下手だから。


「はいはい座って、食べるぞ。」

まるで子供をあやす様に椅子をトントンと叩いて居る。

僕等は目を合わせてアイコンタクトを取ると、

そそくさと座った。


「じゃあ……。」

僕等が手を組むと、

ガルはやや戸惑って僕等の真似をした。


「「「日々の糧に感謝して、そして生き物に感謝し、神様がくれた食物を頂きます。」」」


先ずはヴューㇰ̏から飲んでみよう。


(おぉ……。)

あっさりとした味付けと根菜類が美味しい。

何か田舎の定食屋さんとかを想起させる。


「あ、てか今何してるの?」

やや豪快な食べ方をして居る彼に訊く。

豪快とは云うものの意外と綺麗に見える。


「無職!!!何もしてない!!!

 ランヴァーズに成ろうとしてるからな!!!」

清々しい位に其う言った。

其れは職に就いてる人間の言う台詞だぞ。


「何も!?」

唖然とした顔でヷルトが言った。


「何も。貯金は一応有るけどな〜〜。」

彼はニコニコして言って居る。

何故彼は其んなに明るく話せるのだろうか。


其んな彼を尻目にフ̇ィㇻ̇レニアットェㇰに手を付ける

名前は聞いた事が有るが何んな味がするのだろうか。


一口大に切って口に運んでみた。


(おぉ?)

ハーブや胡椒や塩っけの有る味がして、

衣は薄く肉はちょっとレアっぽいかも知れない。


思った以上に美味しい。

カツレツとかと味や食感が全く違う。


師匠を見て教えてもらって幾つか教えて貰ったのだが、

前世の記憶に或る物か其れしか作れ無い。


だから此う云う異文化から来た料理は作る事が出来無い。


「あ、美味しいよ、うんうん!」

何か話して居た彼に向かって笑顔で言う。


「お、やった!!!」

彼は得意満面に笑顔を浮かべる。

悔しいが彼が喜んで居る姿は此方も嬉しく成ってしまう。


「……まぁレシピを知って居たのはドヷルトだし、

 結構手取り足取りやって貰ったんだけどな。」

ちょっと悔しそうに言う。


「いやいや、しっかり教えた通りテキパキやってたじゃないか。

 多分経験が足りないだけだよ。」

彼を励ます様に言う。

ヷルトは結構お世辞を言う方だと思う。


「そっか!!!んじゃ頑張る!!!」

彼は笑顔で言った。

此の馬鹿っぽさが彼の良い所。

だから純粋に、そしてしっかりと努力をして

高等学園迄卒業出来たのだろう。


僕等は其の後何とも無い

普通で下らない会話をして食事を終えた。


やっぱり食事は人数が多い方が良いな。

其う思った。

リングさんとガルジェはやいやい言いながら何やかんや言って仲の良い感じです。

別に仲が悪い訳では無いのですよ?


ほら、喧嘩する程仲が良い、と謂うじゃないですか?

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