第三十二話:マリルとドヷルト
「狐さんだー!!!!」
あれからマリルちゃんが来て無かったから如何したかと思ったけれど、
今日は僕達の家に来て居た。
久々……と言っても一週間位だけど。
「なぁ、リング、俺あんまり子供の世話苦手なんだけど……。
如何にかしてくれない……?」
尻尾を触られて居る彼が困惑して居る。
「良いじゃーん、可愛いし。
気に入られて居るみたいだし良かったじゃん。」
こんなに困惑して居る彼初めてみた。
ちょっとからかってやりたい。
「いや俺無理なんだよ……。」
三角耳がぎゅっと後ろを向いてしまって居る。
「ねぇ、良いよね?マリルちゃん。」
微笑ましい光景を見ながら尋ねた。
「うん!」
元気一杯に返事をして来た。
「いや此奴じゃなくて俺に訊けよ!!??」
その犬歯をガッと見せて居る。
「もふもふ〜〜。」
まるで尻尾を枕の様にして寝転んで居る。
「ねぇ、守護神サマ何処行ったのー?」
唐突に、彼女が爆弾発言をして来た。
僕は如何言い訳しようとちょっと時間を置いた。
「あぁ、契約切れて帰っちゃった。」
此処は守護神にも契約概念が在るとしてしまおう。
「え?契約?」
勿論首を傾げて居る。
「そう、期間が有るんだよ。
一生憑いてくれる訳じゃないんだよ〜。」
そう言った後、彼をちょっと見てみるとクスクスと笑って居た。
この野郎……!
触られて居る事なんて忘れて居るみたいだ。
彼が読書を始めてもふもふを堪能していた彼女は、
不意に僕の方を見て口を開いた。
「ねぇねぇ、成ってみたい。」
(……成ってみたい?)
僕は其の言葉に何故か不安に成った。
「……何に?」
恐る恐る訊いてみる。
「……獣人。」
彼女は如何にも真面目そうに言った。
(え゛っ!!!)
この子まで!?
「……ダメ?」
澄んだ瞳で訊いて来る。
(其れは……卑怯だろ……。)
でも駄目だ、成長途中の体を弄ったら如何なるか分から無い。
今度の発達に影響が出るかもしれ無い。
僕は心を鬼にして断ろうと決めた。
「駄目、君の体に何か有ったら困るから。」
異形に成って両親にバレてみろ。
僕一人じゃ責任を負えない。
二人でも無理だ。
「うん……そうだよね……。」
と本当に悲しそうな顔をして居る。
「いやいや!!!さっきの嘘!!!!
出来る出来る!!!!」
ごめんなさい、駄目でした。
ドヷルトが驚いた顔をして此方を見て来る。
「本当?」
彼女が下げていた顔を上げた。
「そう、けれどちょっと時間くれないかな?
明日迄、お願い!」
僕が頼み込むと彼女はにっこりして言った。
「うん!!!分かった!!!」
* * *
「え、リングお前さ、又身体でも作るのか?」
僕が必死に術式を描いて居る後ろでそう言って居る。
「違う違う、流石にリスクが高すぎるからしないよヷル。」
もっと言えば、あの行動をしたのは文字通り命懸けてやったのだ。
死ぬかもしれなかった。
「じゃあ何するんだ?」
僕の隣に座った。
「変身魔法。」
「ヘンシンマホウ?」
動揺して居るのかカタコトに成って居る。
「そ、変身魔法。そのまんま体を変身させる魔法だよ。
僕単体の魔力じゃ五分が限度だけど……。」
「多分魔法陣を使えば一時間位は行けると思う。
まぁ其れは僕の魔力を全部使い切った時の換算で
身体が壊れない範囲だったら三十分位かな。」
もうちょっと体験させた方が良いとは思うけど、
此ればっかりはしょうがない。
「やる時俺が魔力分けてやろうか?」
彼からまさかの提案が出て来た。
「え、ホントに!?」
嬉しい、もしかして本当は子供好きなのだろうか。
「あぁ、あのガキに獣人が何れだけ人間と違うのか分からせてやりたいからな。」
黒い笑みを浮かべて居る。
……そっちか。おい。
けれど、理由は如何なる物でも協力してくれるなら嬉しい。
「はははは……。」
やっぱり此奴、好きだ。
ドヷルトは子供が苦手……と云うか嫌いなのに、
結婚してるんですよね。
不思議。いや態々其う云う設定にした訳ですが。




