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第三十一話:化け狐

「新しい身体、どう?」

僕が皿を洗いながらリビングに居る彼に訊いて居る。


「いやほんと凄いよ!!ほんとに!!!

 臭いもめっちゃするし音が凄い聞こえるし、

 いやぁ、未だ慣れてないね……。」

自分の耳や鼻を引っ張たり触ったりしながら言って居る。


「それと目は悪くなったかも。」

自分の切れた目を右手で指した。


「あ、やっぱり?」

彼もそう成ったらしい。

人間って素の視力は良いのかも知れない。


「でもびっくりだよ、うん。

 目は悪い筈なのに暗い所は見えるんだもんね。」

「あぁー……。」

狐もそうか、見えるのか。

よく猫っぽい犬科と呼ばれるがあながち間違いじゃ無いのかも知れない。


其れか肉食目だからか。




……そろそろ本題に移ろうか。


最後の一皿を洗い終えた僕は彼と向かい合わせに座った。


「んじゃ、どうしようかね……。」

「如何するって?」

耳をペタンとさせて訊いて来る。

何か不安を感じ取ったのだろうか。


僕は声を整えて真面目な顔で彼に言った。


「幽霊から此方の身体に成ったじゃん?」

「うん。」


「つまりは僕が魂と体を錬成したって思われると思うの。」

「なんでだ?」

彼は耳をくるくるさせながら質問して来た。


「普通に考えて誰も居ない所から人が出て来た、

 ってのと……。」


「僕が悪魔だと思われてるみたいで、仮に体だけを作ったと言っても

 絶対に悪い様にしか受け取って貰えないから。」

何方かと言うと此方の方が理由としての比重は大きい。


「え、そうなの?」

「うん。」


「なんでそう思われるんだ?」

「さぁ……?見た目じゃない?

 自分でもよく分かんない。」

確かに転生当時自分でもそうだな、

って思ったけれどさ。


「だからちょっと子芝居を挟もうと思うの。」

「?」


「あ、名前……確か名字覚えて無いんだよね?」

「うん、恨み辛みに囚われてたら忘れちゃった。」

さらっと言ってるが中々に重い事を言って居る。


「よしじゃあ〈オッケー〉、んじゃ概要を説明するとね……。」


◇ ◇ ◇


「どうも〜〜、こんにちは、引っ越して来たヷルドント・ドヷルトです。

 家が放火されて無くなっちゃったので、

 急遽友達のカインドロフさん家に居候する事に成りました。

 此れから宜しくお願いします〜。」

次の日、俺は広場に居る彼等に向かってそう言って居た。


門から来て、こんな感じに挨拶をして、

態々荷物も詰めてそれっぽい恰好をして居る。


ずっと地縛霊だったら気づかなかったけれども、

村の家も古く成って居るし、皆年を取って居る。


……只、どうもリングの友達って事で怪訝な顔をされて居る。


まぁ、しょうがないか。

見た目も変わって居るし。


そうして俺は自分の……今はリングと俺の家の扉を開けた。


「あ、ドヷルトじゃん!!!ちゃんと来れたんだね!!!

 どう?やっぱ辺境だよね、此処。」

彼が家から出て来て目を一杯に輝かせた後、

苦笑して言った。


……リング、お前流石に其処迄やらなくて良いんじゃないか??


「う、うん、結構大変だったよ。」

俺も苦笑いしとこう。


荷物を持って家に入って行った。


「あぁぁぁぁぁ〜〜〜〜、疲れた……。」

肉体的には疲れて居ない。

精神的にだ。


「ごめんね、昨日から天幕張って準備してたし疲れたよね。」

違うリング、そう云う事じゃない。

確かに昨日村をこそこそと抜け出して、

舗装されて無い道に張って寝たけれども。


けれど彼なりに労って居るのか暖かい紅茶を出して来た。


「砂糖の香りめっちゃしない?」

此の甘い匂いは砂糖をたっぷり入れて居る様に感じてしまう。


俺の鼻がおかしいのか、

それとも彼の味覚がおかしいのか。


「そうだねぇ、けれどそんなに入れて無いから気にしないで飲みな。」

彼は目を細めて笑った。

如何やら俺の鼻がおかしかった様だ。


ズズズっと啜ってみるとほのかな甘さが舌に広がった。

寧ろもうちょっと甘さが欲しい。


……やっぱり、前の体との違いが慣れ無いな。


「此れでバレないのか?」

何かキッチンで作業して居るっぽい彼に訊いてみる。


「うーん、僕が情報を流して、そしてこっちにやって来たって成ると、

 多分悪魔が引き寄せて来たって噂に成ると思うから大丈夫だと思うよ。

 あ、砂糖足り無かったら此れ入れてね。」

と言って小さい木箱に入った其れを出して来た。

開けてみると中には薄茶色の粉が入って居た。


「え、リングって貴族とかなのか?」

砂糖は結構高い。

だから普通は麦飴や米飴を使う。


「いや?あ……。」

彼が何か考え込んで居る。


「いや意外とね、原材料は高く無いのよ。

 僕結構旅行するのね、すると原材料のコ̊ゥ̻゛ヱ̇リ̈が売って或ったりするよ。」

とんでもない事を言い出した。

まぁ、俺の精神世界に入り込んで助けようとする奴だし、

今更こんな事で驚く俺も俺だが。


「……へー……。」

もう此うとしか言え無い。


「へへへ……。」

何故か照れている様だった。

……時々此奴の感情が読め無いよ……。

村の人の事に付いて余り触れてませんが大体此んな感じの反応をされます。

何もして無いのに悪評が付き纏うって怖いですよ。

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