第二十三話:交叉
「なんでお前は、なんでお前は其うやって言うんだ!!!!」
炎柱が下から噴出して止まらない。
「……僕も一回自殺した事が或るからさ。」
なんとなくその経験から此うされた方が嬉しかった、
てのが分かる。
あの時、此うして居れば、此うされて居ればってのが手に取る様に分かるのだ。
「……ははははは!!!!面白い冗談だな!!!!」
前に見た様な嘲笑をし、
口をひん曲げて不気味な笑みを浮かべて居る。
「そんな嘘で騙せると思ったのか!!!残念だったな!!!」
あぁ、此れは信用されて居ないな。
まぁそりゃあ普通信用はされないだろう。
どうすれば本当だと理解してくれるのだろうか。
僕が幾ら言っても此の状況じゃ信じては貰え無いだろうな。
(嘘じゃ無いのになぁ……。)
「嘘吐きは死ねぇ!!!!!」
まるで雷を槍の様に横に突いて来た。
咄嗟に屈んで避ける。
「俺はな……俺はな!!!!!」
其う言って水の刃を出して来た。
ヒュッと僕の顔を掠める。
「騙されたんだ!!!あいつに騙されたんだ!!!
親友が……親友だと思って居た奴が……!!!」
水の刃を四方八方に出して攻撃して来た。
僕は其れをギリギリで避ける。
ふと彼を見ると、何か顔を顰めて僕を睨みつけて居る。
「……其れで借金塗れに?」
僕は未だに続く攻撃を躱しつつ、
彼に訊いてみる。
其う言ってみると徐々に顔を歪めた。
「……何故お前に其処迄言う必要が或るんだよ!!!!」
其う言って風が僕の体に直撃する。
如何にかしようと思ったものの不意だったのと、
その風圧にやられてしまった。
僕は其の儘壁に叩きつけられる。
痛い。体がズキズキ言って居る。
けれど、こんな所で屈する訳には行かない。
只魔法を使う気力も無い。
そんな事を考えて居る間にも彼は躙り寄ってくる。
本当に、僕を殺其うとして居るみたいだ。
彼は僕の目の前に立って、
まるで兎を追い詰めた狼の様に
勝ち誇った顔をして居る。
「……終わりだな、この悪魔猫。」
と息をヒーヒーさせながら言った。
目が完全にイッて居る。
彼の背後に在る炎は未だ耐えて居ない。
もう、終わりなのだろうか。
惨めなカラカルの人生は終わりなのだろうか。
転生して、今迄生きてきて、
訳も分からず足掻いて、藻掻いて、
そんな奇妙な人生も終わりを告げると言うのだろうか。
……いや、何か或る筈だ。
僕と彼を繋ぐ、何かが。
僕は体を起き上がらせて右手を突き出す。
其うして、放った魔法は──
◇ ◇ ◇
何だろう、此処は何処なのだろう。
俺は立ち上がって辺りを見回す。
此処は……古代遺跡かなんかか?
綺麗な壁に、後ろには扉が三つ、
前には……なんだこれ、絨毯?
謎の字の様な物で書かれた絨毯が有った。
前には黒っぽい洋服を着た男性が、
異様に四角い鞄を持って前に在る硝子に激突した。
「ちょ……。」
只声を掛ける間も無く、
その硝子が勝手に開いた。
「えぇ!?」
驚いてしまった。
何か魔法の様な物で動いて居るらしい其れは、
如何やら扉の様だ。
俺は其れに恐る恐る近づいてみる事にした。
ゆっくり、ゆっくりと近づくと、
ブオンと音を立てて其れが開いた。
「うあっ!?」
又もビックリしてしまった。
俺は其の中に入ると、
奇妙な光景を発見した。
その部屋には男性が多いけれども沢山人が居て、
何か縁取られた写真立てみたいな物を見て
置いてある変な板を押して居る。
板からは何かボタンの様な物が飛び出て居る様に見えた。
……なにこれ?新手の牢屋?
まるで狂ったかの様にそれを延々押して居る。
時々、そばに有る楕円形の何かを掴んで。
そして、僕は又奇妙な光景を発見した。
その黒ずくめの男性が体格の大きな男性に胸ぐらを捕まれて居た。
「ちょちょちょちょちょ!!!!
そんな事してはいけないでしょ!?」
其う言うものの、彼は聞く耳を持たない。
「流川!!!お前此れで何回目だと思ってんだ!!!」
あぁ、成る程。
その男性の言っている事が分かった。
(きっと、この胸ぐらを掴まれて居る男性は何か重大なミスを、
それも何度もやって居るんだな。)
それだったらやり過ぎだとは思うけど、
理解は出来る。
只、その大柄は男性が言った言葉は俺の常軌を逸した物だった。
「その顔!!!なんだ!!!!俺を見下して居るのか!!!!」
と怒っている。
(……え……?顔?)
男性を見ると俺には怯えて居る様にしか見えなかった。
目はギョロギョロと動き、目の前の恐怖に屈しているみたいだった。
「……いい……え。」
男性は掠れた声しか出せ無い。
そりゃ其うだ、そもそも何で男性がこんな仕打ちを受けるハメに……?
「いっつもいっつも其うやって見て!!!!
俺はその目もその態度も気に入らねぇんだよ!!!!
このゴミ人間か!!!お前なんて此処以外でも要らねぇよ!!!」
……何この男性、人格否定までした。
え?普通、其処まで言うか?
只ちょっと分かった事が或る。
此処は何かの組織みたいだ。
で、この……大柄な男性は何かの上の役職の人なのだろう。
そして組織の下っ端の人がこの可愛其うな人間なのだろう。
けれど、俺がホルベに居た時はこんな事は無かった。
そもそもする意味が無い。
だって、そんな事で時間を喰って居たら、
組織が回せなく成るからだ。
只々生産性が落ちるだけだろう。
「…………。」
胸ぐらを掴まれて居る男性は何も言えなく成って居る。
「なんだその顔は!!!!!」
突然激昂したみたいで顔を思いっきり殴った。
おいおい、殴られた男性は相手を訴えて良いだろう。
おかしいだろ、如何見ても。
「分かったらさっさと仕事に戻れ!!!」
大柄な男性は捨て台詞を放って戻って行った。
いや、そもそも、仕事に移れないのも貴方が時間を喰っているだけでは?
……と云うか、此処、仕事場だったんだ。
今思うともうちょっとズルズルと書いても良かったかなぁと思います。
しょうがないし後のストーリーで又掘り下げましょう。




