第一話:転生※
やや導入がおかしいですが、
まぁ導入ですのでちょっと位は強引でも許して下さい。
十一月八日、本文を改稿しました。
一月八日、細かな部分を修正しました。
「……ただいまー。」
扉を開け、コンビニの袋を持ち、誰も居ない部屋にそう言って居た。
俺はコンビニの袋を机に置き、会社のジャケットをソファーにボン、と投げた。
コンビニで買ったケーキとビールを置いて缶の蓋を開けた。
プシューッと音が鳴り、其れを飲み干す。
やや苦い其れを喉へと伝わる。
──美味い。
俺は空に成った缶をぼうっと眺めた。
コンビニで買った安いビールだが、久々に飲むと良いものだ。
其れを机にコトンと置いた。
俺は一切れのケーキを容器から出して、付属品のプラスチックのフォークで啄む。
「……美味しい。」
今日は自分の誕生日だから少し位贅沢しなければ。
自分へのプレゼントも有るのだし。
世間一般で謂う『社畜』だしお金も無いので余り豪華では無いが。
其れを食べ終わり、俺は風呂場へ向かった。
椅子を持って来て、縄を出し、上のカーテンレールに括り付け、俺は椅子の上に立った。
「さよなら。」
俺は首を吊って椅子を蹴った。
首が絞まる感覚に興奮を覚えた。
あぁ、やっと死ぬ事が出来る。
此んなクソったれな世界からおさらば出来る。
そう考えるとワクワクするな。
最高のプレゼントだ。
其の儘俺の意識はブラックアウトした。
* * *
目を覚ますと、其処は見知らぬ場所だった。
上にはカンテラみたいな照明と木材の天井が見える。
余りにも眩しい。
あれ、失敗したのだろうか。
其れとも、此処が地獄とやらと云う場所なのだろうか。
「ナー? ファーヷ、アイ、ヒオーヰ̇?」
すると、骸が目の前にぬっと現れる。
知らない言語で急に話しかけて来た。
「え、え、え、あ……あぁ……!!」
俺は過呼吸気味になり、パニックを起こして居た。
後退りをして彼の全身を眺める……骸骨が動いて、そして服を着て居た。
何だよ、何なんだよ、地獄だよな? なぁ、此処は其うだよな?
何も分からない現状、不気味な骸骨、そして死んだ筈なのに生きて居る此の今。
発狂してもおかしくないだろう。
「ナーナーナー?……ヤガ̏ンガ̏ェオ?
ヅィア、シェㇽギ̏オェキ゚……。」
骸骨が低い男性声でぎゅっと抱きしめて来る。
何を言ってるからすら分からないが、僕を心配してる事は分かる。
腕は冷たい筈なのに暖かい。
僕は何とか逃げ出そうとじたばたとする。
「……フォェンマーㇲ、ヤガンガ̏ェオ?」
二足歩行の犬みたいな奴が此方を見詰めて来る。
幼い顔で、自分より年下だろうか。
其の時に、大量の記憶が流れ込んで来た。
自分とは違う、誰かの記憶だ。
「いででででででででで!!」
頭が八切れそうに成って強い頭痛がする。思わず頭を押さえた。
何だ、何だ此れ? もう訳が分から無いぞ。
「ヤガ̏ンガ̏ェオェ? 大丈夫か??」
骸骨は僕の頭を擦って来る。
あぁ、分かった、分かったぞ。
僕はどうやらカインドロフ・クリングルスと云う人物に転生したみたいだ。
猫獣人で全身は黒く額と目の上には縦に青い線が有って紫色の眼をして居て低身長。耳は異様に長いし鼻は潰れて居る。気持ちの悪い見た目だ。
で、この骸骨はカインドロフ・ヷール。
捨てられた僕を六歳まで育ててくれた人物みたいだ。
そして、この犬みたいなのはカインドロフ・ガルジェ。
同じく捨てられたらしく、僕の血の繋がってない弟みたいだ。
年齢は三歳。
「う……うん……大丈夫……うん……。」
いや、大丈夫では無い。
過呼吸とパニック状態は収まったが、頭の中は混乱で一杯だ。
ぐるぐると考えが巡って居る。
「……本当か?」
見抜かれてる。
まるで本当の父親みたいに接してくれて居る。
けど、其んな彼の善意を唐突にぶち壊したく為った。
お前に自分の痛みが分かるか。
「いいや……転生した。」
きっと歪だろう笑みを浮かべて俺は其う言った。
「へ、へへ…………。」
俺は何だかもう如何でも良く成って転生した事が口から出てしまった。
別に、問題無いだろ? 地獄だったら本当の事を言わねば為らないだろうし、死の間際に見せてる幻覚だったら何も残らないだろ。
「……ぶっ。」
僕が言った言葉に対し、彼は噴き出した様に笑った。
……はい? 一体如何して? 本当の事なのに。
「あぁ、そうかそうか……あぁ。」
彼は僕に気を使って居るのか何なのか、否定し無いで肯定しようとしてくれて居る。
何だよ、もっと嘲笑って恐怖して投げ棄ててくれよ。
がっかりとした。嫌われたいのに。
「あーあーごめんごめん、な?」
彼は僕の肩を叩いて慰めて来る。……何なんだ、コイツ。
「……気分晴らしに散歩でも行くか! ガル、お前も行くか?」
骸骨は犬っぽい彼に向けてそう言って居た。
「いくー!」
幼い声を上げて目を輝かせる。
* * *
「ほらほら、見てみろ、ありゃヸ̇オディㇲㇲ゛って魔物だ。」
彼の白い指が指した先には、大型猫みたいな猛獣が居た。
全身は赤く、全長はかなり長く昆虫みたいな目を持ち、背中からは黒い触手の様な物を生やして居る。
「え、何アレ⁉︎」
僕は子供みたいに興奮して居た。
此の儘身を投げ出したらバクっと喰われるんじゃないか。
凄い。そしたらあっさりと死ねるな。何だか心臓がバクバクとして来る。
「那奴はな、ゲード属性の魔法を使うんだ。」
奴を指して言う。嘘、魔法が有るのか? 凄いな、僕が生み出した精神世界はファンタジーなのか。
けど、一つ疑問が有る。
「ねぇ、ゲード属性って、何?」
ゲードなんて初めて聞いた。
混同している記憶の中でも知らない。
「あ〜っと。言ってなかったっけ? えっとな……。」
彼が言うにはこうだ。
先ず基本四属性と云う物が有り、熱属性、冷属性、雷属性、風属性だ。
尚評細は省く。
ゲード属性は変則三属性に含まれる。
地属性、ダーベイ属性、ゲード属性だ。
ダーベイ属性、ゲード属性は対になっており、ダーベイがプラスの事で、ゲードがマイナスの事らしい。
此等を無理矢理日本語に訳すのなら光と闇、陽と陰、だろうか。
「えー、でな、他にまだ属性が分かっていない魔法や、
属性の無い魔法も有るのだけど……えっと、えー、大丈夫……か?」
となるべく分かり易く、優しく言って来た。
ああ、そうか。僕が子供だから其う聞いて居るのか。
「うん。」
僕は小指を突き出した手を出して居た。
如何してかは分からないが、多分此方では此う返事をするのだろうか?
「ほ、ほんとかぁ??」
本当に分かったのだが、彼は懐疑的な調子で聞いて来る。
「ほんとだよ。」
だって分かり易かったもの。
……もうちょっと専門的な事も話しても良いと思うが。
「お……僕も使える?」
何だか無性にわくわくし来た。
只、勢いで言ってしまった。やや後悔をした。
「あぁ、使える、使えるぞ。」
と俺の頭を撫でながら優しく言ってくれた。
使えるのか、え、本当なの? 少しわくわくして来た。
「ぼくもちゅかいたい!!」
と彼を肩車をしているヷールを見て言っている。
「ガルはまだ早いぞ〜、もうちょっと歳経ってからだな。」
ヷールは彼の頭を擦りながら其う言った。
彼は何だか嬉しそうな表情をして居る。
なんで使ったら行け無いのだろうか。
そんな仲睦まじい光景とは別として、其れとは別にさっきから気に成って居る物が有る。
風切りの様な音が聞こえるのだ。どんどんと此方に近付いて来て居るみたいだ。
やたら煩く耳がぶち切れそうだ。
彼に質問をしてみようか。
「ねぇ、なんかすっごいぶおんぶおんって聞こえるんだけど……。」
「……ぶおんぶおん?」
彼は其の異音に全く気付いて無い様子だった。
見上げると翼の様な物が見え、其れはヸ̇オディㇲㇲ゛の前に立った。
其奴は途端に怯えた様な様子に成ってヴヮルヴヮルと唸り始めた。
那れって……ドラゴンなのか……?
「あ、なにアレ!」
僕は指を指して彼に訊く。
「あぁ、那れは、ヅェㇻ̇バ。
多分熱属性を主にする奴だな。」
俺の答えに微笑んで答える。
おぉ、かっこいい……。
翼をバサバサとはためかせ、爬虫類の様な鱗を持ち、オレンジ色の目を其奴に向けて居た。
「ギュルギャアアァァァァァァ!!!!!」
顔を上に向けて、大きな咆哮を放つ。
相手はズルズルと引き下がり、怯える様な様子で逃げ帰って行く。
「〈すげー〉……。」
いつの間にかそうポツリとつぶやいて居た。
その後、其奴は又翼をはためかせて飛んでいき。
僕等の視線から離れて行った。
一度死んだ身では有るし、此んな事言っては何だと思うが。
此の世界なら生きてみても良いかもしれない。何かの幻覚だろうしな。
死ぬ前に少しだけ良い物を見させてくれ。何が何だか今も良く分から無いけれども。
其う心に決めた時だった。
因みに此処だけの話、クリングルス……もといリングさんは、
生前は流川昭って名前だったらしいですよ?
あ、誤字脱字が有ったら教えて下さい。一応推敲はして居る筈なのですが、一人でやって居るが為に何か間違えて居るかも知れません。ですので遠慮無く報告して下さいね。




