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Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション  作者: 鱗雲之
第四章『不穏、不穏、不穏』
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第百八十四話:ねがえれば──

※三月四日、誤字を修正しました。


ごめんなさい、フォードネイクのお話、もう少し続きます。次のお話で終了はしますのでどうか御覧頂けますよう私から申し上げます。描かないといけないコトが多すぎる……!

 情報を手に入れた俺は早速敵の基地へと潜入しようと思った。

 俺は知っている。ソコ等中に掘っ立て小屋が乱立している事を。


 きっと、奴等は其処で研究をしているのだと思う。

 此処からは俺の憶測では有るが、きっと銀狼教の奴や転生者を誑かして研究させているのだろう。

 此れ位なら俺でも予測が付く。


 掘っ立て小屋を目指して歩いていると、何か白い石の様な物が足元にやってきた。

 ……何だ? コイツ? だが、俺に攻撃は加えまい。まるで誰かと間違えたみたいだ。

 解った。きっとリングと間違えたのだろう。つまりは、此奴もアイツの手先か。


 俺は白い石みたいなヤツを追い掛けていく。

 其の小さな小さな体だからだろうか、ヤツはやたらとすばしっこい。


 だが、どんどんと距離は狭まっていく。奴は他の石ころと合流した。まるで蟻の様にわちゃわちゃと沢山の石ころがごろごろと逃げ回っている。俺は集合体恐怖症(トライポフォビア)には在らぬ筈で有ろうが、そんな俺でも気持ち悪いと思う程には集まっている。

 なんだ、コイツらは。一つだけ判る事は敵には有ろう。


 俺はヤツらを追いかけていく。剣を振るうとヤツらはビリビリに引き裂かれる。

 ヤツらの残骸を踏み付けながらヤツらを追っていく。ふにゃふにゃとしたスポンジの様な感触が靴底から伝わる。心地は()くは無い。


 だが、唐突に俺の脚は進まなくなる。おい、何故だ、何故だ‼︎

 鞭で打つ様に太腿(ふともも)をパンと叩くが、神経がビリビリと痛みを発するだけで何を解決はしない。無性に呼吸が荒く為ってくる。理由は分からない。俺は其の場に両手を突いて垂れる様に倒れて了った。


 はあはあと何度も肺腑に息を送る。

 が、肺は熱い空気を回し込むだけで疲れは取れやしない。


 ゆっくりと立ち上がった。やはり、脚は痛みを発している。

 ああ、そう云うコトなのか。俺には体力は無いのか。

 人間依り速く走れる代わりに、人間依り体力は劣る。──と云う事なのだろうか。

 自分の力を過信するのも()くは無いな。


 だらだらと出る唾液を袖で拭いて後ろを振り向いた。


 * * *

 

 そうして小屋の目の前に迄来た。本当に、只の粗雑な小屋にしか見えない。

 だが、其れが同時に隠れ蓑にも為っているのだと思う。


 俺は知っている。此処は只のダミーだと云う事に。

 勿論人は出入りはしている。だが、此処で研究している物はキメラでは無い事を。

 だから小屋の中に入り込んだとて情報は有らぬのだろう。 


 掘っ立て小屋の中に人は居る。

 蝙蝠の奴から貰った薬の様な物を飲んだからか、目を凝らすと小屋の窓から炎が視える。

 赤や青等の淡い光が漠然と視えている。


 掌に暖かい魔力を流し、小屋に向ける。

 すると、あっと云う間に其れは燃え上がった。煌々とした炎が小屋を包む。

 此処は森には非ず。故に燃やしても平気だろう。


 アイツにやらせる訳にも行かないからな。汚れた俺が出来る仕事だと思う。

 俺はまた、人を殺しただろう。ソレも沢山の人を。

 だが、其れで善い。俺は人を殺す事に躊躇は無い筈だ。寧ろ今迄がおかしいのだ。

 ヤツの為に成るならば手段何て選ぶまい。


 * * *


 何個も小屋を燃やし尽くした後、ジュデバ国近くの小屋に来ていた。が、

 痕跡しか残っていない。小屋の壁や屋根は黒く焦げて山積している。

 此処は何かに()された様だ。仲間割れか内輪揉めでもしたのだろうか?


 俺は黒く焦げた板を払い除け小屋の土台を探し当てる。

 有る程度退けていると地下への入り口なのだろう、下へと続く階段が出てきた。


 興味本位からで有るが其れを降りてみる事にした。

 壁や床に炭か灰か判らないが何か黒い物がへばり付いている。


 つーとなぞってみると指先に其の黒い物がべとりと付いて了う。

 俺の毛皮は白いからか、汚れが目立っている様な気がする。

 何度払っても他の指に付くだけだ。


 溜め息を吐いた。興味本位で触る物では無かった。

 

 拳を握り、ゆっくりと階段を降りていく。すると、地下室の様な所に繋がった。

 燃やされていて原型は分からないが木製の何かは朽ちており、床にはガラスの様な物がべたりと付いていた。灰色の靄の様な物が掛かっていて視界は良いとは決して言えない。

 それにしたって此処は異臭が酷い。

 何と表現すれば良いのだろうか、肉の様なモノが焦げて腐った様な臭いと、鼻に付く様な硫黄の様な刺激臭が鼻腔を掠める。


 鼻を摘んでいないと先に進めやしない。部屋を見回すと通路が有るのに気付いた。

 俺は其の通路を進んでみる事にした。


 恐る恐る進んでいくと両側の壁には鉄格子が嵌められている。牢屋として想像するアレ其の儘だ。

 いや、牢屋にしか見えない。牢屋が在る、存在すると云う事は誰かを此処に収容していたのだろうか。

 だからって、此処を燃やす意味が見当たらない。すると、もしかしたら俺の様な叛逆者が居ると言った方が辻褄は合う様な気がする。何時(いつ)か逢えるのだろうか。


 一つ、牢屋に近付いて中をよくよく確認してみる。


 ──だが、俺は恐ろしい物を発見して了った。




 …………中には黒焦げた誰かの死体が横たわっていた。

 ヅィー族の様に見える。流石の俺でも「ひっ」と声をあげた。

 余りにも惨い死に方だ。一体全体誰かやったのだろうか? 俺が言えた事では無いな。

 

 唐突に、俺は妙な寒気を感じ取った。心の(ずい)迄冷え切る様な途轍も無い悪寒だ。

 ……もしかして。嫌な予感がした。


 俺は振り返った。そして、牢屋を眺めた。


 


 其処には獣人の様な物が自分の腕を噛み千切りながら死んでいた。勿論全身が黒焦げだ。

 流石に二回目だからか、俺は特に恐怖は感じなかった。だが、何故此奴は腕を噛み千切っているのだろうか? よくよく、眼を眺めた。瞳孔が開きっぱなしで分かり辛いが、完全にイッて了っている様に見えた。


 全身を見ると歯形が至る所に付いている。つまりは、日頃から自傷癖が有ったのだろうか?

 分からない。


 如何やら此処は様々な人種や動物を収容していた牢屋の様だ。

 (うずくま)って亡くなっている人、鉄格子を掴みながら今にも何かを叫びそうに成りながら亡くなっている人、皆が皆、異様な死に方をしていた。

 収容していた理由は俺でも判る。きっとキメラを創る為だろう。

 本当に命を(もてあそ)びやがって。

 犯罪者、増してや殺人犯にそう思われる気分は如何だ? ええ? 自称神様よお。

 と煮えくりかえっていても何も解決はしまい。


 俺は先に進む事にした。すると、部屋に繋がっていた。

 だが、やはり手掛かりの様な物は見付くまい。


 後ろを振り返る依りも前に耳がピクリと動いた。何かの気配を察知している様だ。

 恐る恐る振り向くと、誰かが剣の腹で俺を()ち叩こうとしていた。


 金の色をした短髪に、俺を苛立ちの様な恨みの様な殺気で見詰める三白眼。

 何依りも特徴的な余りにも歪み切った笑顔。


 ──さっき感じた悪寒はコレか!

 とはっとしたのも束の間、俺は頭を殴られて意識を失った。


 


 俺が目を覚ますと目の前には三白眼の奴が居た。ニタニタと笑いながら棒の様な物を自分の(てのひら)に打ち付けている。


「オラァ‼︎」と云う怒号と共に棒を俺の頬に打ち付ける。

 ギリギリの所で躱せず、頬を掠って了う。掠る、とは云えども持っている物は木の棒だ。

 頬がヒリヒリと痛みを発する。

 

 逃げようと思ったものの、俺は両手両足が動かせない事に気が付いた。

 後ろを向いて現状を何とか確認する。


 如何やら手首を縄で縛られ、脚は折り畳まれ床から生えている拘束具の様な物で押さえ付けられているみたいだ。


「……は〜、やあーっと目覚めたか。で、如何? 目覚めは?」

「善かねえよ。」

 俺は眉を(ひそ)めながらへっと鼻を鳴らした。


「だろうなあ⁉︎」

 すると、何故か口角を目一杯上げてニヤついた笑みを浮かべる。

 そして足をドンと床に打ち付けた。


 何だ、コイツ。目を見た。奴の眼は黄色の様に見えたが、俺には如何してか闇の広がっている(くろ)い眼の様にしか見えない。


「お前さ、俺等の事を裏切ろうたって考えたみてえじゃん?」

「い、いや…………違っ……。」

 睨み付けられた所為か、俺は尻窄みする。弱々しい声を発して了う。


「嘘吐くな‼︎」

 奴は立ち上がると俺の喉を掴んで来た。首を絞められた所為で「あ……がっ……」としか声が出せない。

 頬の筋肉を思いっ切り上げて(いや)らしくも恐ろしい笑みを浮かべている。


 唐突に手を離された。「はあはあ」と何度も何度も肺腑に息を送る。

 何度送っても整えやしない。


「お前がやったって証拠は挙がってるんだ。」

「なら、殺すしかねえなあ⁉︎」

「……だが、俺も悪魔じゃないんでね。もし、そう、俺等の所に戻る、って言うのなら、五体満足で助けてやる。」

 嘲笑しているのだろうか、奴は「ひっ」「ひっ」と(しゃく)り上げる様な声を発している。

 (さなが)ら獣の唸り声の様だ。


 俺は心の中でニヤリと笑った。勿論、表情には出さない。

 なら、彼等の元に()()()()()()をしよう。

 すると、少々小芝居が必要だ。拷問されて、しょうがなく、もう反骨心すら無い様に演じぬと行けない。


「け、けど……。」

「ああ⁉︎」

 と激昂すると、次は棒で俺の腹を叩いてきた。

 痛い、肋骨が折れた音はしないが、(えず)く程度には苦痛を感じる 


 俺は其の後何度も何度も叩かれ、殴られ、首を締められた。


「……はあ……はあ…………」と呼吸をしている。此れは本物だ。

「どうだ? 此方に戻るか?」

 流石にもう駄目だろうと思ったのか、彼は満足気に、只汚ならしく薄ら笑う。


 俺は奴の眼を見詰める。うるうるとした眼で、頼み込む様に。

 奴の眼はやはり(くら)い。


 生憎此の様な目をするのは得意なんだ。何かを懇願しそうで、もう精神が参っていそうな目をするのは。


「はい……。」

 俺はおずおずと頷いた。虐待されていた価値が有ったな。


 * * *


 俺は砦の様な所に連れていかれ、働かされている。

 ()れも此れも情報を集める為だ。頑張らねば為らない。


 如何やら此処がキメラを創る本拠地の様だ。

 キメラを創るには「賢者の石」とやらが必要で其れを錬成する為に素体に成る人を集めているのだとか。

 だが、其の賢者の石は俺は嘘っぱちだと思う。何故なら、幾ら試してみても作れないからだ。


 其れに、魔術を起動する為の〜、とか言っては居るが、義務教育を終えたエカルパル人で有らば魔法は一種の奇蹟的現象だと知っている。そして、魔素と魔力、と云う存在も知っている筈だ。

 ボンドードル教ではボンドードル教に入らない人間は道徳を無くした、若しくは人としての道を踏み外した人とされている様だ。

 だから全世界の人をボンドードル教に入らせる事を理念としている。


 つまりは人を攫い、拷問をし、其れでも従わない人間を「賢者の石」を創る為と云う有りもしない大義名分を被せて殺している。

 彼等のやっている事は微塵も辻褄が合わないのだ。


 俺が知らないだけで此んなにも人を殺す事を躊躇(ためら)わない殺人鬼達が居たのか。

 驚きだ。親近感は湧かない。俺とは殺す理由も何もかも違うからだ。


 俺は部屋の前に居る。今日は拷問をする誰かを連れてきたみたいだ。

 壁越しに俺は中の声を盗み聞く。


 幾ら拷問をされても、罵倒をされても、泣き言一つ言わない。

 強い人だ。と思った。そして時偶に「……此れでリングちゃん達の時間稼ぎに為るならば」と言っている。

 耳を疑った。今、リング、と云う言葉が出たよな。つまりは、リングの仲間なのだろうか。

 だが、俺は此れを開ける鍵を知らない。教えてもくれないだろう。


 目星は付いている。きっと地下室に有るのだ。けれども、俺は地下室には入れない。

 地下室に入れるのは此処の砦の頭を務めている「ベイ=カインドロフ・スリュシャード」只一人だけだ。

 苗字が彼と同じなのが妙に気持ち悪い。ベイはボンドードル教の信者で有る事を表す。


 奴は俺を信用していないのか俺の話を聞こうともしない。「拷問をしてみたいんです!」等と言って入る行為だって出来まい。

 俺が死んで了っては助けるも元も子も無い。俺は彼を助けられない事に無性に腹が立った。


 ならば、明日、明日に願いを賭けよう。きっと、アイツは正義感が強い。

 明日にはきっと来るで有ろう。絶対、其うだ。希望を天秤に賭けながら俺は部屋に戻った。

過去の話だけをするつもりが何故か膨大な量に。

一応、その、此れも過去のお話なのでと云う事で許してください。


* * *


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モチベに成りますので、宜しければ。


其れと感想も気兼ね無くどうぞ。お待ちして居ります。

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