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Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション  作者: 鱗雲之
第四章『不穏、不穏、不穏』
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第百六十七話:再現と歓談

 僕は取り敢えず外に出て来た。今回は再現性の検証だ。黒化と紅目が同じだ、と云う証拠を取る為に行う。

 今回はきっとマリルを連れて行っても大丈夫だろうと思い僕は彼女の手を引いて居る。


「何処行くの?」

 狐の様な彼女は僕の眼を見て来る。僕は頷き「広場に行くんだよ。」と言うと彼女は目を輝かせ尻尾をぶんぶんと回す。


「遊ぶの⁉︎」「……うーん、ごめんね、実験だよ。」

 すると、彼女は尻尾を下げ顔を下げ耳は垂れ下がり明らかに落ち込んだ表情をする。

「遊びたかったのに……」と。ああ、ごめんよ。

 僕は腰を下げて彼女を抱き上げる。すると彼女は声を上げる。


「わはははーい‼︎」

 暗い声から明るい声へと様変わりする。

 ヷルトは其の光景を見て「ふん」と鼻を鳴らす。

 如何したのだろうと彼を見ると何処か恨めしい様な笑顔を浮かべて居る。


「お前、本当に子供が好きなんだな。」

「んまあね。」

 僕は一通り抱き上げると、彼女を胸の辺りで(いだ)く。

 其れだけ言うとヷルトは目線を僕から外した。


「ヷルト、あんまり好きじゃないもんね。」

 僕は彼を見る。すると、彼はゆっくりと顔を此方に回してぽつりと呟く。


「……だな。」




 さて、再現性の検証とは云っても、何をすれば良いか正直分からないのだ。

 何故ならば、僕は黒化から戻った事が無いからだ。那れは偶々だから除外する。

 つまりは、僕が黒化状態と普通の状態を使い分けられる様に為らねば行けない。

 なら、練習有るのみだ。……問題は、其の練習方法が全く以って分からないのだ。


 只、偶然とは云えども一回は出来たのだ。だから其の感覚を頼りにして如何にか此うにか再現しないと行けない。

 戻る感覚は何とは亡しには分かる。だから黒化状態を解く事が出来れば良いのだが。

 早速、やってみる事にする。如何にか上手く戻れない物か。 


 体の血管と云う血管に何か生暖かい物が流れて行く感覚が分かる。

 血液では無い。其れとは違う物が流れて行く。


 さて、此処から如何やって紅目を戻して行こうか……皆目検討も付かない。

 確か那の時は何かが吸われた様な感覚が有ったのだよな。

 其れを如何にか上手く再現して行ければ良いのだが。


 僕は目を閉じて考える。そして、集中し、脳内でイメージを浮かべる。

 然し、脳内に思い浮かんだのは白い僕の様な誰かがナイフの様な物で刺されるイメージだった。


 僕は其の場に座り込んだ。駄目だこりゃ。頭を搔き毟る。

 バクダから言われた事が脳裏にこびり付いて離れない。


「おーい、リングー?」

 唐突に誰かに話し掛けられた。頭を後ろに向けると、其処にはバクダが立って居た。

 顔は少しだけ元気そうだ。


「……あ、バクダ。体調は大丈夫なの?」

「うん、村長から少し位なら其処等を歩いても大丈夫だって言われてさ。」

 と彼は目を瞑って笑う。此うして見ると何だか膿が取れた様な気もするが何処か凛とした雰囲気を感じる。

 ヷルトに近しい雰囲気を感じる。


「なら良かった。」

 僕はゆっくりと立ち上がる。


「……あのさ、無理じゃなければ良いんだけど……実験に協力してくれない?」

 彼を見て成るべく真摯に言う。彼は首を傾げて渋い顔をする。


「へ? 実験? ……危険な事は嫌いだぞ。」

「ううん、其処迄危険な事では無いよ。只、魔法を発動して貰いたいだけ。」

 僕は首を振る。


「ふーん。じゃ、分かった。で、何れだ?」

「其れなら良いか」とでも言うのだろうか。彼は腕を頭の後ろに回す。


「コレ。」

 とある魔法文字の書かれた紙を彼に手渡す。

 彼は其れを眺め、「ん?」と声を発した。そして顔を上げる。


「……何だ、コレ。」

 眉が八の字に成って居る。分からないのか?


「あれ、魔法文字ってジュデバ国で普及してないの?」

 純粋な疑問を投げ掛けてみた。エカルパル国なら小等学園で学ぶのに。

 おかしいな。僕は後ろの毛を掻いた。


「ああ、俺は一応ジュデバ語とエカルパル語なら読めるけど……けど、其れは自分で勉強したからね。普通の人は文字すら読めないんだよね。だからだと思う。」

「あー…………。」

 淡々と彼は彼は言った。僕は右上を見る。其うか。ジュデバ国は其うなのか。

 一体如何やって国を回して来たのだろうか。


「つっても、正教会とかでずうっと使われて来た文字だから聖職者とかは知っては居るんだけどね。」

「え、じゃあ、聖職者と一般人で貧富の差が出来ちゃうんじゃ……。」

 其の問いに彼はうんと頷く。なら、ジュデバ国の経済格差はかなりの溝が出来て居そうだ。余り中間に属する人は居ないのでは無いか。


「其うだよ。でも国が教えようとしないからさ、しょうがない。」

「職は此れでもかと有るから食いっ逸れる事は無いのは良いんだけどさ〜……。」

 彼はへへと苦笑いを浮かべて其うぼやく。


「獣人ってご飯無くなると急に暴走し始めるもんね。」

「いや本当に其う。怖いよ、獣人の食の恨みは。」

 眉を曲げた笑みを浮かべて彼を見ると同調する様に頷いている。


「エカルパル国は人数も多い所為か案外スラムも多いからな。

 一日一食食べるのが限界な人とか、浮浪者とか、案外其処等にうろちょろして居る。」

 と、其処にヷルトも話を割り込ませてきた。僕は彼の方を向く。

 彼はマリルを高い高いさせながら其う言って居た。彼女はきゃっきゃと喜んで居る。


「え、本当?」

「お前も偶に見なかったか? 路上で物乞いしてたり料理店の廃棄物を貰って生活している人。」

 彼は高い高いをするのを止める。そして僕を見て来る。

 脳の海馬を引き摺り出して考え込んでみる。


「……あ〜…………前者なら。」

「お前、都会出身だろ? なら普通は見掛けるだろ?」

「う〜ん。」

 僕は首を捻って居る。正直覚えが無いのが実情だ。

 そうすると彼は眉間の辺りに大きな皺を寄せる。視線が痛い。


「はあ、お前、魔法のやり過ぎだ。少しは政治や世間に目を向けろ。」

「……はい、ごもっともです…………。」

 僕はしょんぼりと体を縮める。彼が言った言葉は僕の心臓を狙い撃ち。

 其れを言われたら受け容れるしかない。


「え、エカルパル国に居るんだ、其んな人。てっきりこっち依りは全然贅沢な暮らししてるかと思ったよ。」

 バクダが喉元を震わせて言葉を突き出す。驚いて居るみたいだ。


「ああ。けどな、今の首相はスラム出身らしい。少しづつ変わってくのかもな。」

 ヷルトは又高い高いを始める。彼は顎に手を当てて居る。

「じゃあやっぱり将来はエカルパル国住みたいなあ」と云う言葉が顔に滲み出て居るが。


「良い事許りでも無いぞ。才能の無い奴はばっさばっさと切り捨てられて行くからな。」

 其んな彼にヷルトは冷淡な言葉を投げ掛ける。でも其んな事を言われても彼は平然として居る。


「そんときはリングに如何にかして貰うよ。リングは魔導師なんでしょ? なら顔が広い筈だからさ。俺が職を失った時は宜しくね。」

 何故にやにやしているのかが分かった。僕は溜め息を吐いた。


「何で僕がしなきゃ行けないの。自分で見付けてよ。精々ランヷーズ位しか紹介出来ないよ。」

「ま、其れでも良いや。」

「戦闘職だよ?」

 すると、彼は僕から目線を逸らす。


「う、其れはちょっと…………。」

「……いや、ちょっとだけやってみようかな。」

 と思ったが、彼は僕に目線を戻した。あれ、さっきは絶対に嫌だ、死んでもやらぬと云う表情だったにも関わらず今は何故か受け容れて居る表情に変わって居る気がする。


「へ?」

「うん、後で剣術でも教えてね。」

 目を閉じて温和な顔で其んな事を言うのだから度肝を抜かれた。


「……ほら、やるんだろ。実験。」

 ヷルトが後ろから話し掛けて来た。其方を向くと彼は僕等に怪訝な目を向けて居た。


「あ、忘れてた。」

「……ま、今回は俺も話に割り込んだから他人の事言えないがな。さっさとやって終わらせような。」

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