第百五十六話:そんなの、助けるに決まって居る。
重い話が続きます。
「何で死なせてくれなかったんだよ‼︎」
「俺は死にたいんだよ‼︎ 死にたくて死にたくて、堪らないんだよ‼︎」
「お前、自殺しただろ‼︎ 自殺したなら、自殺したい人の気持ちは分かるだろ! だったら──」
彼は僕を見て激怒した様に其んな事を言う。
其れを言った後、彼は疲れたのかはあはあと肺腑に何度も息を送って居た。
僕は、ゆっくりと口を開いた。
「だから、だよ。だから、君には死んで欲しく無いんだよ。」
僕は首を振る。そして、彼の眼をじっとみる。彼は驚いた様に僕を見る。
本当に君は死にたいのか? 本当に、死にたいのか? 其の覚悟が有ったのか?
君の眼は、本当は死にたく無い人の眼に見える。如何しようも無く死ななければ行けない理由が有る様に見える。本当に百パーセント、自分で自死を選んで居るとは思えない。
すると、彼は僕を見て悔しそうに顔を歪める。
そして床を思いっ切り叩いた。
「……お前は何時も自分勝手何だよ‼︎ 魔法の事教えろとか言って来たり、昔だって俺を連れ回したり、今は俺に死ぬなとか言って来たり‼︎」
「何なんだよ……何なんだよ、お前は、お前は狡いんだよ‼︎」
彼は怒号を浴びせて来た。其の目は必死だ。今にも僕の胸座を掴みに掛かって来そうだ。
「……其うだね。狡い、うん。だろうね。
自殺して、挙げ句の果てに君に死ぬな、って言ってるのだものね。分かるよ。分かる。」
僕は目を閉じた。ゆっくりと頷いた。彼の言って居る事は分かる。
「そしたら──」
僕は彼が言った言葉を遮る。
「其れでも、だよ。僕が狡かろうと構わない。今は、君を助けなきゃ行けない。」
「友人なら、友人の死ぬ所を見逃せ、ってか?」
僕は彼の眼を又強く見る。彼はうんともすんとも言わずに黙って居る。
「ふざけるな‼︎」
僕は目一杯声帯に力を込めて言った。彼は目をぎゅっと瞑った。
「君は如何思ったんだ、僕が死んで、如何思ったんだ!
なのに、其れを又繰り返そうとするのか!」
「悲しくなかったのか? 僕が死んで虚しくなかったのか? 」
「僕がやった事を君迄する必要何て無いんだよ‼︎ 僕で充分、那んな悲劇を起こすのは‼︎」
僕は何故か息を切らして居た。完全に頭の血管が切れて居る。後ろを見ると、ヷルトは居なかった。
もう一回、彼の方向を向き直す。
「……取り敢えず、どっか行こう?」
「えちょ──」
僕は彼の言う事も聞かずに無理矢理、扉を開けた。
其処にはヷルトと、如何してか体を震わせて怖がって居るマリルが居た。
あぁ、僕の大声を聞いて、か。ごめんな。
「……大丈夫か?」
「うん、大丈夫。一寸彼とどっか行って来るね。」
僕は其れだけ言って、彼を連れてそそくさと歩いて行く。
「あぁ、じゃあ、コイツの事見守ってるから。行って来い。」
後ろから其んなヷルトの声が聞こえて来る。本当に、彼には頭が上がらない。
* * *
僕等は茶店の様な所に来て居る。甘味処、と言った方が正しいか。
窓から外を眺めると雨がざあざあと降って居た。何時から降って来たのだろう。
土砂降りだ。彼の憂鬱な気分を表すみたいに。
目の前には団子の様な物が二つ、皿に乗っかって置かれて居る。僕が頼んだ物だ。
僕は其の串を取って食べるものの、彼は其れに手を付けようとはしない。
「食べて良いんだよ?」
口角を上げてにかっと笑顔を作って彼を向いてみるものの、彼の顔は陰って居る。
僕が彼の顔を覗きこむ様に見ると、彼は「はぁ」と溜め息を吐いて僕の目をゆっくりと見る。
其の緑色の眼は濁って居る。
「……なぁ、何でお前は友人が死のうとした所を見て、其んな平気で居られんの?」
「平気では無いよ。でも、其処で説教臭い事を繰り返したって君は益々落ち込むだけでしょ。」
僕は団子を食べるのを止めて問いに答える。彼は微かに首を振った。
「…………。」
そして彼は顔を腕に埋めた。僕に目線を合わせようとしない。
「……ねぇ、如何して死のうと何てしたの?」
「言えない。」
僅かに顔が揺れたのが分かった。
「言えないかー。」
僕は机に目線を向けた。
本当は曝け出すのが一番だとは思うのだが、彼が言ってくれないのならしょうがない。
僕は団子を食べ終えてしまった。串を皿の上に置く。
「んー、言えないとはしても、其れ以外の道は絶対に有るよ。」
「……無理だ、絶対に無理だ。俺は死ぬか、其れか、お前を殺すしか……。」
すると、彼は顔を上げて、顔を顰め、そして喉を細めて言う。
「いや、何其れ? 僕は殺さなくても良いでしょ?」
「俺が自殺する事に為ったのもお前を殺せなかったからなんだよ。」
「はい?」
言ってる意味が全く以って分からない。何故、僕を殺す必要が有る。
もしかして、彼は自殺者を殺す執行人みたいな役割だったのだろうか。
其んな頓珍漢な事を思ってしまう。
「……村で、お前を殺そうとしたろ、覚えてないの?」
「いや、全然。有ったっけ? 其んな事。」
一体何時何処で其んな事が有ったのだろうか。確かに知らぬ人の殺気を感じた事は有ったが、那れは結局僕の勘違いではないか。
「はぁ。」
彼は溜め息を大きく吐くと又腕に顔を埋めた。
雨のざあざあと云う音だけが僕の耳に届く。未だに止んでない。
「……もしさ、もし君が何か困って居る事が有るのなら、僕は助けに成るよ。絶対に。」
僕は彼の手をぎゅっ、と握った。すると、彼は少し顔を上げた。でも、目線は僕には合ってない。
「はん、姿形も変わってるのに?」
彼は自虐的に、嘲笑する様に其う言う。顔は引き攣った笑いを浮かべて居る。
「其れが親友じゃない。魂が同じだったら、助け合うのが親友じゃない。」
僕は彼の眼を見た。彼の眼は、やはり濁って居る。でも、何処かに光が入って居る様に見えた。
すると、彼はおかしくなったのだろうか、はははははと狂った様に笑う。
「ふん、自殺者の言う事かね。」
「其れを言うのはどっちもどっちでしょ。」
「はぁ、まぁ、其うだね。分かった、何か遭ったらこき使ってやるから。」
「こき使うのは止めてよ。」
僕は少し眉を曲げた。彼は僕の姿を見て益々笑って居る。
一頻り笑った後、彼は呼吸を落ち着かせて僕の眼をじっと見詰めた。濁りは消えて居る。
「でも、お前のお陰で裏切る準備が出来た。あぁ、逆らってやる。」
「……裏切る?」
「あぁ。」
窓をもう一回見た。恐ろしい程に綺麗に、太陽の光が射し込んで霽れて居る。
見ると、彼の顔は少しだけ、少しだけだけど霧が霽れて居る様に思えた。
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