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Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション  作者: 鱗雲之
第三章『獣人国へ』
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第百四十八話:怒り狂うリング

珍しくリングさんが暴走します。いや、いつも暴走してますが、今回は毛色が違います。

人に依っては胸糞シーンかも知れません。でもリングさんは完璧な聖人では有りません。

只の一般獣人です。


一月十一日、細かい修正をしました。

「よし、じゃあ、行って来る。」

 僕は靴紐をがっちりと絞めて立ち上がる。

 後ろを向くと、彼は何故か焦った様な顔をして居る。


「ね、ねぇ。」

「……何?」

 彼は如何してか僕に抱き着いて来る。「うおっ」と思わず声をあげてしまった。

 僕は君の母親じゃないのだが。


「無事に、帰って来てね。ね? 死なないでね⁇」

「……大丈夫だよ、全員ぶっ倒して来るから。」

 声が上擦って居る。そして僕の眼を見て来る。

 僕が此処で死んで堪るかってんだ。


* * *


 僕は村の広場に向かって居る。後ろにはヷルトが着いて来て居る。

 家の後ろから覗いてみると昨日は居なかった灰色の狼みたいな奴と熊みたいな奴が剣を交えて居た。


 奴は此方に気付くと剣を交えるのを止めて、此方に(にじ)り寄って来る

 態々僕と目線を合わせる為かホスト座りをし、そして気味の悪い、憎たらしい笑みを浮かべた。


「やあ、こんにちは、()()()()()。」

 彼はニコニコとした笑顔で自身の手を差し出す。

 けれど、其の眼には、其の汚れた青色の眼には嘲笑が含まれて居る。

 明らかに僕を煽って居るのが分かる。


 後ろを見ると、ヷルトが怪訝な目で奴を見詰めて居た。

 言語は分からないとは思うのだが、何か気味の悪さを感じ取って居るのだろうか。

 でも、奴は其れに気付いて居ない様だった。


「こんにちは。」

 でも、僕は其の手を敢えて取ってやった。そして、にっこにこの大きな笑みを浮かべる。

 そしてぎゅっと奴の手を握る。奴の手は僕の手寄り二回り程大きい。

 彼は驚いたのか、其れ共予想が外れたからかは知らない。彼は驚いて居た。


「あぁ、其の後ろの狐も闘うの?」

 彼はこほんと息を整えると、立ち上がり、後ろに居る彼を指して言った。

 ヷルトは首を傾げて居る。ヷルトはジュデバ語は分からないものな、そりゃあ其う成る。


「いや、彼は付き添いです。」

「なぁ、何言って居たんだ?」

 すると、彼は僕の肩を叩いて口を開ける。


「あ、ヷルトも闘うか、だって。」

「あぁ、成る程。」

 後ろを向いて簡単に翻訳すると、彼は頷いた。


「あれ、外国人の方だったり?」

「えぇ。僕と彼はエカルパル国出身ですよ。」

 すると、彼は瞳孔を大きくさせた。驚くのはもう良い。

 さっさと戦闘に移らせてくれないか。ぶっ倒してぶっ転がす準備は出来て居るのに。

 何処かから例のライオンの奴がノコノコと出て来やがった。

 

「あ、本当に来たんだ。」

 腕を組んで僕を見下ろして居る。

 まるで来ないんじゃ無いかと思って居た様な口振りじゃないか。

 ああ? 覚悟を決めた僕に対し何と云う態度だ。

 此奴はきっと傲慢不遜(ごうまんふそん)と云う言葉を知らないのだろうな。


「で? 俺に頭を下げる準備は出来たのか?」

「いえ。」

 奴はニヤついた笑顔で其んな戯言を飛ばして来る。

 する訳無いだろう? もし其うだったら那の時に頭を下げてる。


「え」と呟くと、頭を掻いた。おい、何だ。何か困る事でも有るのか。

 お前等が喧嘩を売って来た癖して何をほざいて居るのか。理解不能だ。


「大丈夫でしょう、大将。此んな中型猫種何て一発で終わりでしょう。」

 熊みたいな奴は僕に剣を向けると、其うケラケラと(わら)った


 そうだな、其うかも知れない。絶対に僕は純粋な打ち合いでは負ける。

 俊敏さと、そして音を聞き分ける能力と、木を登る位しか取り柄は無い。

 然し、此の世界には魔法が有る。自分の俊敏さと其れを活用すれば勝てる(きざ)しは有ると思うのだ。

 残念だったな、生憎魔法には長けて居るんだ。すると、勝手に口角が歪む。

 

「おいおい、俺らに倒されるのが其処迄嬉しいのか?」

 はぁ、と奴は溜め息を吐いた。何を言ってる。

 途んだ妄言を言ってくれるじゃないか。

 其んな訳無かろう。勿論、お前等を倒したくてうずうずして居るに決まって居るだろう。


「まぁ、来いよ。」

 彼はにやついた笑顔の儘手をくいっとさせて広場の中央に行く。僕も其れに着いて行く。

 其処は、本当に何も更地の様な場所だった。草一本生えて無い。

 遠くには家が見える。後ろにはヷルトが立って居た。


「じゃあ、如何する?」

 三人は集まって話し合って居る。闘う順番を決めて居るのだろう。


「そしたら、自分から。」

 狼みたいな奴は手を挙げてスッと右足を出す。

 残りの二人は僕達から距離を置いて行った。

 ヷルトも距離を取って居るみたいだ。


「最初に俺の名前を名乗ろうか。

 ナド・デ・パドー。あんたは?」

 手を此方に向けて其う言って来る。

 相手が礼儀を払ってくれるなら、僕も其れに従ってやろうじゃないか。


「カインドロフ・クリングルス。宜しく。」

 僕は一礼をして奴の眼を凝視した。けれど、奴はびくともして居なかった。

 其れなら、只の腰抜けでは無いみたいな。

 憎いは憎いけれども、少し位は面白い戦いを期待しても良いだろうか。


 僕は奴の手を握った。すると、奴は僕の手を握り返して来る。

 然し、其の力は強く、握手を終えた頃には僕の右手はやや腫れて居た。


 ……何だ。結局正々堂々と闘う気は無いって事か?

 ならやってやろうじゃないか。此方は、正々堂々と。

 熊の奴が木製の剣を持って来た。僕は其れを拾い上げて構える。どっしりとして居て重い。

 そして奴をぎっと睨む。少し、奴が怯んだのが見えた。


 そして、鐘が鳴らされた。誰が鳴らしたのかは分からない。

 奴は姿勢を低くして僕に剣を振るって来ようとする。

 早速攻撃を仕掛けて来るのか。


 なら、此の儘立って居てやろう。奴が僕目掛けて綺麗に攻撃を振りかざして来た其の時、僕は其れを剣で受け止めた。

 僕等は張り合って居る、だが、奴の力は其処迄強くない。

 僕が押し返し、奴に剣を振った。


 あれ、僕が押し倒される事を想定して、奴のバランスを崩してやろうと思ったのに。

 案外奴は弱かった。其処迄僕も力が強いって訳でも無いからな。


 然し、僕が剣を振るったけれども、奴は其れをするっと躱した。

 だけれど、奴は攻撃を何度も振り(かざ)して来た。

 然し僕と云う標的が小さいからか奴の攻撃は僕には当たらない。


 するするっと、猫科特有の身軽さを活かしてしなやかに避けて行く。


 奴は攻撃を止めた所で、僕は奴に攻撃を仕掛ける。

 足元を攻撃するも当たらない。肩を攻撃しようとも当たらない。

 奴は背高のっぽの割には案外避けるのが上手い様だ。

 

 奴は僕が少し作ってしまった隙を狙って僕に剣を大きく振るって来た。

 そして僕は剣を持って奴の攻撃を受け止めた。


 バゴンと木材特有の音が鳴る。又、張り合いに成った。さっき依りかは強い。僕は口角を上げて居た。

 敢えて僕は力を抜いてみる。さっきと違う此の現象に驚いたのか、奴は其の儘バランスを崩す。


 僕は奴が倒れる前に股を潜って奴の背後を取った。

 そして、思いっきりジャンプをして──


「あがっ‼︎」

 奴の背中を大きく振った剣で叩いてやった。すると、奴は背中を摩りながら大の字にへたり込む。 

 先ずは一人撃破だ。此の調子で残り二人も倒してやる。


 倒れ込んで居る彼を他所に、僕は奴等に目線を向けた。

 すると、次は熊みたいな奴が闘うみたいだ。

 僕は剣を強く握った。


 熊の野郎は此方に近付くなり剣を僕目掛けて投げて来た。


「うわっ⁉︎」

 突然の事だったから驚いてしまったものの、僕は脊髄反射で其れを避けた。

 後ろを見ると、剣が地面に突き刺さって居た。


 奴は挨拶も何も無く、次はポケットに了って居ただろう投げナイフを取り出して来た。

 

 余りに唐突で、そして対応が困難だ。脚に一本、ナイフが刺さってしまった。


「あぁっ‼︎」

 痛みの余り声をあげる。痛い。僕はナイフを引き抜いて其処に手を当てる。

 恢復魔法のお陰で傷口は塞がったが痛みは消えない。

 おいおい、此れは剣一本で闘う決闘では無かったのかよ。


 卑怯……とは思ったものの、奴等は其んな事一度も言って無かった。

 つまりは、結局は僕の思い込み、と云う事に為る。くそ。


 しょうがない、此れでは(らち)が明かない。

 僕は右手を突き出した。


「ヅ̌ェㇻ̇ガヲ̇ゥーラ̈・ナ‼︎」

 すると、奴に無数の魔法の刃が飛んで行く。


「な、何だ⁉︎」

 突然の魔法に驚いたのか、奴の両脚に其れが刺さる。奴は魔法の刃を取ろうとする。

 僕は指をぱちっと鳴らす。青い半透明の刃が体から消え去る。


 ズボンに血が滲んで居たのが分かった。


「おあぁぁぁぁっ‼︎」

 けれど、奴は怒りの儘に僕に向かって愚直に走り出して来た。

 僕は其の場に立って剣を棄てる。


 其んなんじゃあ、戦闘だと一瞬でやられるぞ。

 僕が剣を棄てておいて良かったな。命は取られないぞ。

 余りにも鈍重な動きだったので、僕は股間を思いっ切り蹴ってやった。


「あひゃん‼︎」

 すると、奴は股間を押さえながら其の場に倒れ込んだ。


「うわあお、痛そ。」

 狼の奴の呑気な声が聞こえた。


 さて、最後はライオンの奴だけだ。僕は奴に近付くけれども。奴はぶるぶると震えて居る。

 何で? 如何して?

 元はと言えば喧嘩を吹っ掛けて来たのはお前等じゃないか。

 何故、震える必要が有るんだ。何だか、段々と怒りが込み上げて来た。


 僕は奴に近付く。そして、奴はぶるぶると震えたまんま後退りをする。

 走り出して、僕は奴の胸ぐらを掴んだ。


「おい‼︎ ふざけんな‼︎ せめて戦えよ‼︎」

 でも奴は僕の眼を見ない。小鹿の様に全身を震わせたまんまだ。

 僕の決意も、そして彼の苦しみも、其の怯えた様な態度でチャラにしようってもんなら其うは問屋が卸さないぞ。お前、決闘する意思が有ったんだよな。

 お前、其の心持ちで那んな行動起こしたのか。なら、最初からするなよ。

 結局、しっかりと戦おうと云う意思が仄かに有ったのは最初の狼の奴だけじゃないか。


 熊は明らかな卑怯者、そしてお前は戦おうとしない根無し草。

 其んな奴が、決闘しよう何て云うんじゃないよ。


「屑野郎どもが‼︎」

 僕は奴を地面に叩き付けた。奴は「あがっ」と情け無い声を発する。

 そして、僕は剣を投げ棄てて奴の顔面を力を込めて殴った。

 其の一撃で奴の顔は面白い程に歪む。


 もう一回殴ってやった。


 何だ、何だ何だ此奴‼︎ 僕が殴っても何も反応しないぞ。

「や……いや……」とか言って居るが嫌なら僕の顔面を一発殴る位しろ。

 おい、何だよ。此の、おい。お前も充分な卑怯者、今迄強者だった奴が弱者に成ろうとするな。

 其んな御伽草子みたいな事、赦されるか。


「此の‼︎ 此の‼︎ 屑が‼︎ 友人を虐めた罪だ‼︎ 此の位甘んじて受け取れ‼︎」

 僕は奴に馬乗りに為った。そして奴の顔面を思いっ切り殴って居る。

 奴は血塗れで口の中からも血を出して居る。

 だが、だが‼︎ だけどな‼︎ 僕の怒りが、そして奴の痛みが‼︎ 此んな物で済む筈何て無い……‼︎


 きっと、奴が受けた苦しみを思えば此んなの屁でも無い。

 僕は昔依りは精神が強く成った。然しな、奴は存外繊細何だ。精神が弱いんだ。

 おちゃけて、自分の意志を強く持ってそうだがな、意外と那奴は落ち込み易いんだ。

 だから、僕が此奴を殴らなければ為らない。


「やめ……‼︎ 止めて……‼︎」

 泣き叫んだとて赦す訳は無い。

 思いっ切り、思いっ切り何度も何度も奴の顔面を殴る。

 自分の手に血が付いて居るだろう。其れが如何した。

 黒い毛皮なのだから滲みが付く訳無かろう。


「ちょ、ちょっと⁉︎ 其れはマズイよ⁉︎ ね‼︎」

 狼の奴が叫んで居る。

 煩い、敵の話何て聞くものか。負け犬は黙ってろ。


「おいリング‼︎ 其れ以上やっちまったら死ぬぞ‼︎」

 ヷルトの言葉ではっと、我に帰った。自分の手を見る。

 紅い血がベタベタと付いて居る。黒い毛皮の筈なのに。


 そして、奴の顔は痣だらけ、血だらけ、顔面も腫れて居て酷い有様だった。

 僕は此んな事を仕出かしたのか。やり過ぎた。


「……あ、うん。」

 と僕は奴の首根っこから手を離した。奴ははぁはぁと息を吐いて居る。

 でも、何処かもやもやする。後一発、後一発だ。此れで止めてやろう。


「受け取れ。」

 奴は「キャイン」とか云う情け無い声を上げてぶるぶると震えて居た。


 僕は周りを眺めた。すると、何時の間にか群衆が居た様で、奴等は「わああああ」とか「やったー!」とか歓声をあげる。


「やったぞー‼︎ 黒い猫が勝ったぞー‼︎」

 誰かがカンカンカンとカウベルの様な物を鳴らしながらヒューヒューと口笛を吹く。


「な、何やってたの?」

「賭け事。」

「えぇ……?」

 賭け事? 僕の那の憎しみの籠った戦いを見て賭け事をして居たのか?

 逞しいと云うか……余りにも慣れ過ぎではないだろうか。驚くだろう、普通。

 此んな物止めたくなると思う。


 つまりは、此奴等は何時も此んな事をやって居た、と云う事なのだろうか。

 はぁ、もう、何やってるんだか。他人様に喧嘩を売って置いて、で、此んなに思いっ切り殴り倒される。

 余りにも格好が良くないのではないか。……でも、買ってしまった僕にも非は無い訳では無い。

 僕はライオンの彼の手を取った。

少し血の気が強くなった、ってレベルじゃないですね……。

リングさんは怒ると本当に周りが見えなく成ります。

最後ライオンの彼をボッコボコにしてますしね。


* * *


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モチベに成りますので、宜しければ。


其れと感想も気兼ね無くどうぞ。お待ちして居ります。

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