第百四十七話:見違えてしまった友人
「……よし、出来た。」
僕はメモ帳をペラペラと捲って居る。
そして、其れを鞄に入れると慌てて其の家から出て行った。
「おーい、帰るぞー。」
入り口の前にはヷルトとバクダと村長が居る。そしてヷルトは手を振って居る。
彼はリュックサックの様な物を背負って居る。
「はいはーい。」
僕は手を振り替えした。
そろそろ帰らないと護衛の任務に遅れてしまう。
「じゃ、開けるね。」
彼はパチパチとした音を鳴らす。そして、崖だった目の前には入り口が出来て居た。
中は隧道の様に為って居てやはり闇い。
「どうも、本当にすいません、世話に為りました。」
「あぁ、いえいえ、又来てちょうだいね。ふふ。」
バクダが律儀に其んな事を言うと、彼は口に手を当ててにこにことした笑顔を浮かべる。
「……さようなら。じゃあ、また。」
僕は其れだけ言って村を後にする事にした。
此処で四角四面に『さようなら』の挨拶をするのも何だか悪い様な気がして。
「じゃあな。」
ヷルトも同じ様にあっさりとした挨拶をする。
僕等は隧道に入る。だが行きとは違い、あっさりと抜けてしまった。
何故か其処にはマズゲッドが置いて有った。此れは隧道を一個抜けた先で降りた筈なのに。
……何時も此の様な感じなのだよな。最後迄不思議な村だった。
さぁ、さっさと帰ろうではないか。
僕等は其れに乗り、彼にエンジンを点けて貰って草原を走って行った。
* * *
一回野宿をして、僕はバクダの家に戻って来た。名残惜しいがバクダとは此処でお別れだ。
僕達はバクダの家で一泊させて貰おうと家に入ったのだが、
……其の部屋は滅茶苦茶に荒らされて居た。
泥を塗りたくられた様に壁が汚く為って居り、ジュデバ語で暴言が書かれて居る…
囲炉裏みたいな物も荒らされて居る。
おまけに棚も壊されて居り、中身が床に散らばって居た。
今はバクダが光の玉みたいなのを出してくれて居るから中が見れるのだが、洋風なライトも粉々に壊されて居た。
もう総て原型を留めて居なかった。
僕は言葉を失った。誰が此んな酷い事をしたんだ。
「あちゃー、やっぱり此う成ってたか。予想通りだったよ。本当。」
バクダは頭を掻いて其のがらくたを片付け始める。
「……ちょちょちょ、待って、ねぇ、何で此んな事に為って居る訳?」
頭の中が混乱して居る。此んな事をされて置いて何故平然として居られるのだろうか。
此んな事をされたのなら、普通はもうちょっとがっくしすると思うのだが。
僕だったら一晩中は落ち込む。
「分からないけどねぇ。でも嫌われて居るのは正解だよ。
だから此んな事されるんだと思うよ。はぁ。」
彼は溜め息を吐きながらガラクタの山を整理し始める。
「村八分、って事か?」
「お、正解。」
ヷルトが尋ねると親指を立てて何故か微笑んだ。
正直、僕の其れとは比べ物に為らない。
「ギャハハハ‼︎ 見てみろ‼︎ 汚いゴミを漁って居るぞ‼︎」
「やーい、汚らしい猫獣人、一生ゴミ漁ってろ‼︎」
扉から誰かの声が聞こえる。其方を向くと、ライオンみたいな奴と熊みたいな奴が此方を指差して嘲笑って居た。汚らしい笑みを浮かべて居る。許せない。
なのに、彼は何にも言わない。おい、何でだよ。おかしいだろ。
「ちょ、ねぇ、何か言わなくて大丈夫なの?」
「良いよ、言ったって無駄だから。」
バクダは其う云ってゴミを集め始める。何だか其の彼の行動に異様にムカついて来てしまった。
何か言い返せよ、と。せめて反論しろよ。と。
僕は奴等に向かう。彼等は笑うのを止めて僕をキョトンとした様子で見て来る。
「おい‼︎」
僕は声を荒らげて彼に牙を見せ付ける。
「リング⁉︎」
ヷルトは其の行動に驚いたみたいで僕の肩を掴んで来る。
でも僕は其れを払って奴等に近付く。
「あ? 何だ? お前コイツの肩持つのか⁇」
ライオンみたいな彼は僕の眼を見て笑い始めた。
益々怒りが増して来る。其の答えは一つに決まって居るだろう?
「……友達だから、持つに決まって居るだろ。」
すると奴等はげらげらと腹を抱えて笑う。何がおかしいのだろうか。
笑い虫にでも取り憑かれたのか、此奴等は。
「なら、来いよ。明日、此の村の広場で決闘を行うから、其処で三人倒せたら此奴の嫌がらせ止めても良いぜ。」
奴は其う言って笑って居る。売り言葉か。
「……分かった。」
そっちが其の気なら、其の喧嘩買ってやろうじゃないか。
一万円でも二万円でも買ってやる。此方が損失をしない様に顔面を歪ませる迄ぶん殴ってやる。
其れでチャラだ。
奴等はゲラゲラと笑いながら何処かへ行ってしまった。
すると、腕が掴まれる。後ろを振り向くと、青褪めた様子のバクダが居た。
「お、おいおい‼︎ 何二つ返事で其んな事受けちゃったんだよ。」
彼は驚いた様子で僕の肩を両手で揺さぶって来る。
「……前世の親友が此んな事されて黙った儘で居られるか‼︎」
僕は彼の顔を平手打ちしてやった。パンと大きな音が鳴る。彼は其の場にへたり込んでしまう。
善い加減僕の性格を分かって欲しい。
出来るか、友人がやられっぱなしで、其の光景をみすみす見逃す何て。
「お、お前……本当に皓なのか? なぁ。本当に皓なのか?」
そして、震える瞳孔で僕の事を見て来る。
「うん。俺は晧だ。僕はクリングルス、そして魂は晧だよ。」
すると、彼は僕の全身を眺めて来る。驚愕して居る様に思える。
彼の其の行動に彼に対し怒りが沸いて来てしまった。
何かを、言葉を彼にぶつけざる負えない。
「だって、だってお前、其んなんじゃ無かったろ!
何されたって其れに反論してそして其れを大きく上回って実力を見せ付ける様な奴だったろ‼︎
如何して此う成っちゃったんだよ‼︎」
「……お前だって、変わったろ。其れと一緒だよ。」
彼は下を向いて、其んな事をぼそっと言った。
其れを言われてハッとした。僕は言葉に詰まった。
さっき迄の怒りは何処へやら。さっきまで噴火しそうな火山だったのに。
無性に遣る瀬無く成って頭を掻いた。
「お前は、其んな自信満々な訳、無かったろ……?
もっとヘニョヘニョで、芯の無い奴だったじゃないか。」
「其れが、お前、目的を持って、そして、何かを成し遂げようとする奴に成ったじゃないか……。」
「友人として嬉しい、嬉しいよ、けど…………余りにも違い過ぎるよ。」
彼の気分は地の底迄落ちてしまって居る。闇い、途轍も無く闇い常闇の様。
「……はは、友人が成長して居るのに、此んな事言う何ておかしいよな。」
彼は僕に顔を合わせようとしない、ぼつぼつと其んな事を吐いた。
僕は大きい溜め息を吐いた。一体、如何返せば良いか分からない。
でも、僕だって彼に昔の様に戻って欲しい。
自信満々で、そして、何でも卒なく熟す様な、其んな奴に。
其う思うと、自然と口が開いて居た。
「……じゃあさ。」
「僕が戦って、そして奴等を倒して戻って来たら、又前の様に成ってくれる?」
僕は彼の手を取ってゆっくりと立ち上がらせる。
すると、彼は瞳孔を開いて口をあんぐりと開けて居る。
「え…………いや……。」
「約束、良いでしょ? 自信、付けて欲しいもの。」
僕は彼の手を握り締めた。
彼は返答に困って居る。中々に卑怯な手を取ったと思う。
此奴は何か契約を持ちかけられると断れない性格だ。
昔新聞を読みもしないのに七社位契約してたし。朝刊と夕刊が届くからポストの中は何時も満杯に成って居たな。
仮に彼に断られたとて僕の溜飲は収まらないのでぶん殴りに行くが。
頭を掻いたり、そして唇を噛んで居た彼だったが、僕の顔を見て覚悟を決めた様だ。
「……分かった。」
と一言だけ言った。……有り難う、無茶に応えてくれて。
リングさんは自己愛は出来ませんが(最近やっとちょっとづつ出来て居る)、他人とか、家族とか、小さい子とかが虐められて居ると放って置けない性格です。此れは彼の根本的な性格ですので前世から変わってません。
ですが、前世と変わった所はもう少しおずおずとした居たのがもっと強く出て居る所です。
少し血の気が強くなりました。
* * *
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モチベに成りますので、宜しければ。
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