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Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション  作者: 鱗雲之
第三章『獣人国へ』
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第百四十六話:魂の流れ着く先は

 其れから一週間位経った。最近はヷルトと共に観察に来て居る。

 先週の大雨のお陰だろうか、其等はニョキニョキと成長し始めて居た。

 もしかして此れが成長する為には雨が必要に為るのだろうか。

 小さな傘を付け、順調に育って居る。今日は綺麗に晴れて居る。春日和のぽかぽか陽気だ。


「……にしても、那の形見た事有る様な。

 ()の茸だっけなぁ。」

「其うなのか?」

 隣に居るヷルトが僕の方を見て来る。


「うん…………あー……。」

 僕は頭を掻いた。海馬を刺激する様に記憶を思い出させる様とする…

 だが思い出せそうで思い出せない。何だっけ。


「あ、那れだ。ヺ̇ㇻ̇メーㇻ̇って茸だ。其れの亜種とかなのかなぁ。

 けど未だ成長途中みたいだし分からないかなぁ。

 あぁ〜、けどブㇻ̇メリオかなぁ、そっちとも似てるかも。

 けど茸って見た目で亜種だ何だと云えないから難しいなぁ。」

 ふと、頭に思い浮かんだ。そうそう、其れと形が似て居る。

 ヷルトを見ると僕の話をポカンとした様子で聞いて居た。口をあんぐりと開けて居る。

 何だか申し訳無く為って来る。


「……えっと、今は分からないって事か?」

「うん。其んな感じ。」

 僕等が他愛の無い話をして居ると、魔法陣が唐突に光った。

 そして其の中から誰かが現れる。


「おーい、来たぞー。」

 其の正体はガリルナだった。右手を振って居る。


「んで、如何成ったんだ?」

「ん、あぁ、今此んな感じ。」

 僕が其方を指差すと、彼は其の方向をくるっと振り向く。

 そして、何秒か其れを見詰めて居ると急に僕の肩を掴んだ。

 牙を出して鬼の形相に成って居る。


「おい‼︎ 嘘じゃねぇか‼︎ 生えないなら兎も角変な茸生やしやがって‼︎」

 と僕の肩を揺らす。今にも噛み付かれそう。……未だ此れが本当に其れか如何かも分からないのに。

 彼等にとって此れは魂が天国に行く為に必要な花だからだろうか。

 けれど早とちりだ。生物何ておかしな成長を遂げる物なのだから咲いてみないと分からないだろう。


 僕は何とか彼を引き剥がして眼をしっかりと見て言う。


「ちょっと……聞いてね……。」

「植物何て如何変化するか分からないの。だから、此れが那れに変化する可能性の有るの。

 観察しないと分からない。だからもうちょっと待ってくれないかな?」

 すると、牙を口に了って頭をぽりぽりと掻く。納得は出来てない様な顔だ。

 僕が肩をぽんと叩くとはぁと大きく溜め息を吐く。


「……じゃあ、此れから毎日来るからな。」

 僕の手を振り払い、彼は魔法陣の方に向かって行った。


 其れから一週間程度経った。


 茸は未だ咲かない。けれど其れは順調に育って居るのが確認出来る。

 

 本当にガリルナは毎日毎日来た。煩く那れは未だ成長しないだの本当はやっぱり違う植物なんじゃないかだの、本当に育たないと分からないだろうに。耳に胼胝(たこ)が出来るかと。

 

 そして今度は其の光景を見るなり興奮した様子で騒ぎ立てる。


「うわー‼︎ うわほんとじゃねぇか‼︎ すげー‼︎ すげーやおいおい見ろって!」

 花の様に咲いた其れを見て彼は僕の肩をぽんぽんと叩いて来る。

 此の後ろには天幕が有り、其処には僕の代わりに夜の間観てくれて居たヷルトが仮眠を取って居る。


 僕はメモ帳を見る。其処には彼の綺麗な筆記体で観察の記録が書かれて居る。

 本当に彼には感謝しかない。僕の無茶に対して二つ返事でやってくれてしまって居る。

 一体如何返そうか。彼は絶対に「返さなくて良い」と言うだろうが。


「うん……其うだね…………。」

 僕はメモ帳を眺めて居る。正直彼の話は毛程も興味が無い。

 何故なら目の前に彼の話依り面白い物が有るのだもの。

 気にしてられるか。


「おい、聞いてるか?」

「あ、うん、聞いてる聞いてる。」

 僕は怪訝な顔で僕を見て来る。僕は生返事を返す。そして又メモ帳を眺めた。

 今の様子は……特に何も変わって無いかな。僕は其の次の行に文字を連ね始めた。


 次の日。空は灰色の曇天だ。けれど其の重苦しい空に反し、僕の心はうきうきとして居た。

 何故なら、元々赤色だった其等(それら)は緑色に変化して来て居るのだから。


 今日はガリルナは居ない。お陰で耳が穏やかだ。

 僕達は其れを見て居る。ヷルトは大きく欠伸をした。あぁ、眠いか。

 けれどもうちょっとで──そう思った時、僕は彼に釣られて欠伸をしてしまった。

 何だかおかしく為って二人顔を見合わせて笑ってしまった。


 唐突に魔法陣が光り輝く。何事かと其れを見詰めて居ると、其処からはバクダが現れた。


「お腹空いただろうからって村長が此れ渡せってさ。」

 彼は此方に近づくと小さいわっぱの様な物を差し出して来た。


「ん? 何此れ?」

 と僕はわっぱの様な物の蓋を開ける。

 中に入って居たのは幼虫が素揚げされた様な物だった。

 僕は一つ其れを摘んで口に運ぶ。バクダは其の様子を顔を顰めて見て居た。

 味はクリーミーで美味しい。手軽にタンパク質を摂取出来るから幼虫は携帯食として良いかも知れないな。

 

「食べてみな。」

 僕はヷルトに其れを差し出す。

 彼は恐々と手を伸ばして其れを摘む。幾らか其れを眺めて居たが、覚悟を決めたのかバクっと其れを食べてしまった。


 バクダの「うわっ」と云う声が聞こえた。


「……何で其んなゲテモノ普通に食えるの……⁇」

 彼はしゃがむと僕等を交互に見て来た。其んなの、理由は一つに決まって居るじゃあないか。


「んだって、前世でだって蛸とか生魚とか食べてたじゃない?」

「う……うん…………。」

 彼はぎこちなく頷く。理解は出来ても納得は出来無い顔色だった。


「誰が何処で如何見るかでゲテモノって定義は変わる物だと思うよ。

 其れに気付いたから、何でも食べる様に成ったって云うか……舌に合わない物は食えないけどね。」

「……郷に行っては郷に従え、って事?」

「まぁ其んなとこ。」

 僕はもう一つ幼虫を食べる。


「……俺は無理だけど、其の心構え忘れないでね。

 相手を最大限理解しようとする所。多分世界を救う事に成ると思うよ。」

「え〜っ、嘘でしょ?」

 僕の眼を見て来る。其の新緑の様な穩やかな緑色の眼で。其んな大袈裟な。


「ほんと。」

 何故か彼は念押しをして来る。そして、其の目には希望の二文字が宿って居る様に見えた。

 本当に如何したのだろう。余りにも違う文化に参ってしまったのだろうか。


 僕は首を傾げた。


 其処から更に一週間位経った。


 ガリルナと村長が隣に居る。今回許りはバクダも見たいのだろうか、彼は僕の後ろに立って、然も肩にどっしりと両手を着けて全身の体重を乗っけて来る。きっと狼程では無いだろうが、重い、重いよ。


 でも其んな事を言っても彼は止めてくれそうに無い。もう、本当に昔から何か熱中して居ると他の事忘れるんだから……!


 何時の間にか夜も更けて行き、青い衛星が此方を微笑みながら見て居る。

 ガリルナが欠伸をした。


「……なぁ、未だ?」

「未だ未だ。」

 彼は眠そうに目を半分位開いて其う問うて来る。

 此奴は中々のせっかちさんの様だ。

 もう少し待って居ればそろそろ開く筈。待つ事が大事だ。

 殆どが紺色に色付いて居るのだし。


「ねぇ。」

 ガリルナが其う言った途端、花々は光り始めた。僕は彼の肩を叩く。

 そして花の方向を指す。


「……うわぁ⁉︎」

 其れを見るなり僕の腕をペシペシと叩いて来る。そして体育座りをして居る僕の腕を掴んで来た。

 ……後ろは山猫、そして隣には狼か。全く以って嬉しくとも何とも無い。両手に花なら兎も角。


 花々はそして一輪が光り始めた。やっぱり其れは波紋状に広がって行って全部の花が光る。

 中に花弁が巻き込まれ、軈て──


 其の中から光の玉の様な物が放出される。


「「うわぁ‼︎」」

 声をあげたのはバクダとガリルナだ。

 ヷルトは何も言わずにじっと、村長は何故か笑って居る。


 全部の花から光の玉が咲き、其等は池の上の隙間からぽつぽつと出て行く。

 風が吹かないからか、ゆっくり、ゆっくりと。


 ガリルナの拘束を何とか振り解き、僕はメモ帳に文字を連ねる。

 前とは違ってゆっくりと空に上がって行くから観察し易い。


「なぁ‼︎ なぁ‼︎」

 ガリルナは僕の腕を叩いて来る。……あぁもう‼︎ 文字が崩れるじゃないか。

 お陰でミミズが這った様なへろへろした文字が生まれてしまって居る。


 僕が文字を連ねるのに熱心に為って居ると、何時の間にか光の玉は何処かに行ってしまった。

 ……本当に儚い現象だな。一瞬で始まり、一瞬で終わってしまう……。

 人生みたいだ。──自分が人生を語るのも烏滸がましいか。


「はぁ〜、良い物見れたわ。さ、帰りましょ。」

 幾時か僕等は其れを惜しむ様に見て居たが、村長が立ち上がって魔法陣の方に行く。


「んだな。」

「うん、帰る。」

 ガリルナとバクダが立ち上がる中、ヷルトは決して立とうとしない。

 僕は未だメモ帳に観察記録を纏めて居る。


「あ、帰っちゃって良いよ。多分、未だ此処に居る事に為るだろうし。」

「……そうか。」

 すると、彼はやっと立ち上がった。そして、彼等と共に魔法陣に乗って光に包まれて行った。


 ……僕も此れを纏めたら戻らないとなぁ。

 其んなことをぼんやりと考えながら石筆の筆を進めて居た。


此の作品が面白いと思ったら評価をお願いします。

モチベに成りますので、宜しければ。


其れと感想も気兼ね無くどうぞ。お待ちして居ります。

良かった所、悪かった所、改善点等有りましたらどうぞ感想にお願いします。


もし誤字や明らかなミスを見付けましたら誤字報告からお願いします。

宜しくお願いします。


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