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Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション  作者: 鱗雲之
第三章『獣人国へ』
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第百四十二話:魂が流れた後に残った物

 僕はスコップを肩に押し付けて森の中を歩いて居る。

 後ろにはヷルト、そしてバクダが着いて来て居る。


 昨日『ヅィㇻ̈マェッㇳ゛(魂が空に流るる事)』が起こった場所へと向かって居るのだ。


「ねぇ〜……ま〜だ〜⁇」

 バクダがゼーハーと息を荒らげながら其んな事を訊いて来る。

 僕は後ろをちらっと見る。彼は膝小僧に手を当てながら無理矢理足を進めて居るみたいだ。


「もうちょっとの筈だから。弱音吐かないの。」

「いや……此れじゃ弱音を吐きたく為るよぉ……。」

 確かにかなり歩いて来て居る様な気がする。だが、殆どの獣人は人間依り体力が有る様な気がする。

 例え草食獣で有っても。猫科は体力が無い様な。チーターとかが良い例だ。

 只、其れは自然界でのお話。動物も人間だ。僕等も動物だ。

 人間が出来る事を獣人で或る僕等が出来無い訳が無い。

 端的に云ってしまえば運動不足だ。


 獣人国では力が強ければ良いとされて居る。

 最近は又事情が変わって来て賢い、軍の指導や知識を蓄えてる人でも強い、と為って来て居る。

 何にせよ【強い奴が正しい】と云う事情は変わらない。


 彼は僕依りも賢かった筈だ。特に学業は。

 そして何でもそつなくこなす奴だった。……運動以外は。


 僕は運動も学業も中の上、つまり平凡だった。

 だから彼がきっと知識で生きて居るのは想像に容易い。

 少々変な所は有るのだけれどもさ。


 ……だからと云っても体力が無さ過ぎないか?


 と、其んな事を考えて居ると目的の地へと着いた。

 黒い枯れて居る何かが重なって(しお)れて居た。


 おぉ、此れだ此れだ。此処だ。

 僕はスコップを地面に突き立て早速掘り返してみた。

 

「ちょちょちょちょ、何やってるの?」

 バクダがあわあわとして僕がやって居る事を見詰めて居る。


「ん、掘り返すの。しないと全容が分からないでしょ?」

「……んえぇ……⁇」

 彼は頭をぽりぽりと掻いて居る。いや、掘り返さないと分からないだろう?

 何かを掘り返し先人達は何かを見付けて来ただろう。だったら僕も其れに倣うべき。


 ヷルトは何を思ったのか自身の手で其れを掘り返す。犬の様に。犬科だろうけどさ。

 有り難いが、其の行為は宜しく無いのではなかろうか。手が汚れるぞ。

 と思ったけれども、案外早かった。僕がスコップで掘り返す依り早いのではないだろうか?

 狐様々だ。でもやはりと言うべきか、手袋は汚れて居る。


 彼は其処から少し離れると水の魔法で手を洗って居る。

 そして此方に来た。穴を覗き込んで居る。


「……物凄い穴が空いて居るな。」

「此れって死体に咲く花何だよ。」

 バクダが目に見えて眉を(ひそ)めたのが分かった。


「見て御覧? 此処とか骨が在った様に変に凹んでない?」

 彼等は其れを覗き込んで居る。


「あぁ、ほんとだ〜、良く分かったね。

 何で此れを分かって〈テスト〉で零点を取ったんだか。」

「煩い、其れは皓の時のお話でしょ。」

 僕は口を尖らせた。其れは小学生のお話じゃないか。名前を間違って居ただけだし。

 ヷルトが堪える様に肩を振るわせて居る。今にも吹き出しそうだ。


「ほらほら、其んな事は如何でも良いの。

 問題はこっちだよ。こっち。」

 僕は横に上げられて居るボㇻ̇メㇻ̇を指した。

 するとバクダがふふふと笑う。


「あ〜、話逸らしてる〜〜、何時も其うだよね。皓、いやリングかな? へへへ……。」

 舌をべろんと出して笑って居る。だから、僕は皓ではもう無いのだって。

 でも、其の後に見せた濁った眼を僕は見逃せ無かった。


 ……ごめんな。


 心の中で謝りつつ僕は早速枯れた花をナイフで切り取って見てみる。

 枯れては居るものの、形は綺麗な花だ。


 けれど、此処でおかしい事に気付いた。


「ねぇ、バクダ。」

「はいはい、何〜?」

 多分知識豊富だろうバクダに其の花を見せてみる。


「花って此んな形だったっけ?」

「……あぁ〜、確かに変だね。雄と雌に分けられて居る花だとしても雄蕊(おしべ)雌蕊(めしべ)も無いね。

 じゃあ、此れ植物じゃ無いんじゃない?」

 顎に手を当てて考え込むと僕に目線を合わせた。


「え。」

「可能性としては(きのこ)とか。茸って(かび)だからさ、落ち葉とか、其う云う物を分解してる筈だよ。

 若しくは木から栄養も貰ってるとかね。でも此れは其うじゃない。

 だから可能性としては十分に有ると思うよ。まぁ可能性でしか無いんだけどね。」

 其れを僕に渡し返すとてへっと可愛らしく笑う。

 此れを良い歳を超えた大人がやって居ると思うと気持ちが悪いが、でも彼は動物の特徴も兼ね備えて居る。

 もしかして自分の可愛らしさを分かって居るとか? 打算的な彼なら有り得る。

 猫は自分の可愛らしさを分かって居ると謂う。


「へぇ……。」

 良く其んな事を覚えて居るな。感心するしかない。

 すると、彼は其れを裏っ返し、茎の部分を見始めた。


「あ、ほら、管も無いじゃない。多分違うよ。」

 彼は茎の部分を此方に見せて来る。……本当だ。穴の様な物は一つも見受けられ無い。

 

「……良く分から無かったが、要は植物じゃ無いって事か?」

 ヷルトは首を傾げて居る。


「多分ね〜、僕は植物学とか、此の世界の植生に詳しい訳じゃ無いんだけど。

 其う云うのはリングの方が詳しい筈だしね。」

 と僕を見てにこっと笑った。

 お、(おだ)ててくれるじゃないか。気分は良い。


 そして其等(それら)を確認をすると、足早に村に帰って行った。


* * *


 村長の家に帰った僕は万年筆をカリカリと音を立てて走らせて居る。

 忘れない内にとノートに書き留めて居るのだ。


「リングってさ〜、昔其んな研究熱心だったっけ?」

 見上げるとバクダが居た。エカルパル語で書かれた其れを物珍しく見て居る。


「……昔は正直やりたい事も無かったから。

 取り敢えず生きれれば良いやと思ってたしさ。勉学何て詰め込んだだけ。

 付け焼き刃の知識しかないもの。今後悔してるよ、猛烈に。」

 そこそこの知識を付けて、そこそこの企業に入れば良いと思って居た。

 会社でも何処か物足りないし私生活も満たされない。其処に企業のブラック化も相まったんだ。死にたくも為るさ。

 だからと云って趣味に走って居る訳でも無く只々ソーシャルゲームに金を注ぎ込む日々。

 死ぬ前には其んな事すら出来無く為って行ったのだが。


 非常に虚しい生き方をして居たと思う。

 もし前世の自分が目の前に現れたら全力でぶん殴ってやりたい。

 何か目的を見付けろと、ゲームや酒や煙草も程々に。そして交友関係も作れと。


「今は見付けたけどね、やりたい事、したい事。」

 僕は筆を止めて彼を見詰めた。


 でも、後悔はして居ない。後悔して居たら、此んな振り切った様な生き方は出来て無い。

 死んだお陰、と云うと美化しすぎだとは思うのだが、其れが無かったら此う為って無いもの。


「ふ〜ん、なぁに?」

「先ずは此の世界を解き明かす事。」

「随分な目標を立ててるじゃないか。良いよ良いよ。俺其う云うの好きだよ。」

「そして色々な魔獣と剣を交わえる事。其の二つかな。」

「おぉう……戦闘狂でも有るのか。」

 とにやにやと笑って僕のノートを覗き込む。


「何だよ其の言い方。良いでしょ。楽しいもん、戦うの。

 ……偶に命を落とし掛ける事が有るけどさ。」

 彼を右手で小突く。きっとむすっとした表情をして居るだろう。

 此の体では何しても可愛い可愛いと云われるのが癪だ。


 彼は村長の持って来た地酒を呷って居る。彼は本当に酒が好きだなぁ。

 ワイン何か何処何処の何々が良いとか云ってかなり選んで居たもの。


 僕は僕で紅茶を飲もうとすると、村長が対面に座って僕の眼を見て来た。


「ねぇ、リングちゃんってきっと転生して居るのよね?」

 彼から途んでも無い事をぶつけられた。ゴフ、と僕は咽せた。

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モチベに成りますので、宜しければ。


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