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Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション  作者: 鱗雲之
第三章『獣人国へ』
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第百三十八話:魂を運ぶ花

「じゃあ、材料を示しとくから此れを週に一度、飲んどいてね。

 多分良く為ると思うから。僕が居る時は渡すとは思うけど、居なく為ったら自分で調合してね。お願い。」

「は、はい……有り難う御座います、先生‼︎」

 手を降る彼女に同じく手を振り替えし僕は其の家を後にした。

 



「あぁ…………。」

 僕は村の広場の様な所に来て、丸太に腰掛けて居る。

 那の後、彼の言った名前の人々の治療しに行った。


 何となく彼等が治療出来無い原因が分かった。

 余りに傷が酷過ぎて恢復魔法の必要魔力が多過ぎたんだ。

 魔力が多いとされて居る僕ですら那んな事に為るのだから彼等だったら如何為る事か。

 何だか寿命が縮んだ音がする。那れってエナジードリンクみたいな物だからなぁ。

 寿命を前借りする事に為る。


 其れを終えて、後は村の人々の視察をしに行った。

 彼の言う通り、全人口の約十二分の一位の確率で全身真っ黒に為って居た。

 中には少し促すと元の銀色に戻る子も居た。

 只々制御が出来無く為って居る子も居ない訳じゃ無いみたいだ。


 其れを含めた数に直すと……多分二十分の一は居る計算に為るのだろう。

 其れでも十分に多い……。一体、何が起こって居るのだろうか。


 ……少しだけ目星は有る。けれど、其れをするには少し躊躇ってしまう。

 取り敢えずは事を終わらせてからにしよう。


 と其んな事を考えて居ると、隣に誰かが座って来た。

 真っ黒い毛皮と紅い眼、ナバルみたいだ。


「ねぇ、先生。」

 此方を見上げて目線を合わせて来る。


「……如何したの?」

「先生って、神の遣いでも何でも無いんでしょ?」

 其の発言に僕は目を丸くする。……いや、嘘だろ。


「いやいや、違うよ。」

 と微笑んで彼の頭を撫でてやる。すると、彼は耳をペタンとさせて眼をしょぼしょぼとさせる。


「……だって……先生角生えて無いし……何依り……。」

 下を向いてぼそぼそと言うと顔を上げて純粋な眼で此方を見て来る。


「神話に有るみたいに誰かの体を持って行こうとしないし。」

「……村の皆は薄々気付いてます。でも、其れで良いとも思ってると思います。

 だって、分かるんですもん、悪い人じゃない、って。」

 其う言うと僕の手を其の小さな手で握り締めた。

 悪い人じゃ無い……かぁ。其れは少し違うと否定したい。少なくとも善い人では無いのは間違い無い。


「正直、那んなに保守的なのは村長だけですよ……多分、村長だからと気張ってるんだと思います。」

 僕の手を離し、頬杖を突いて(くう)を見上げる。

 何処か不満気に其んな事を言う。


 ……其うか。那の人、確かに表面上は結構おちゃらけるけれども実の所責任感は人一倍強い人だ。

 確かに、彼の言って居る事は合って居るかも知れない。


「……じゃあ、もし部外者が此処に入って来たら如何するの?」

「村に敵対的な人じゃ無ければ。敵対的な人だったら容赦しないですけど。」

 と言って口角をにやりと上げてみせた。……其んな表情をする様にも為ったか。

 自分が会った時はもうちょっと子供っぽい様子だったのだけれどもなぁ。


 僕は上を見上げる。眩しい位に太陽が照り付けて居る。

 綺麗な春晴れだ。


 其れを幾分かぼうっと眺めて居たけれども、そろそろ本当の目的に移ろうと思って僕は席を立ち上がった。

 言葉を交わさずに僕は手だけを振る。すると、彼も手を振って来た。濃灰色(のうかいしょく)の綺麗な蹠球(しょきゅう)を見せつけながら。


* * *


 さて、そろそろ(くだん)(けん)に移ろうと僕は村の外へとやって来た。

 此処等にしか咲かない花──ボㇻ̇メㇻ̇、と呼ばれる其の花。

 昔図鑑で見た事が有ったのだ。でも、生態が全く分かって居ない。

 確か図鑑にも『時間に依って色が変わる』と書かれて居る程度。


 けれど、僕の研究に依って段々と分かって来た。

 先ず、此の花は咲く季節は特に無い事、そして最初は赤っぽいのだが次に緑っぽく最後には紺色に為って行く事が分かって居る。


 そして、此れが一番吃驚する事だと思うのだが……。




 此の花は死体の上に咲く。

 不気味かと思われるけれども、僕は綺麗な花だと思う。


 此の村の神話にも合った筈だ。

 『食べた生き物をしっかりと土に埋めれば、軈て花が咲く。そして其の花は三日以内に枯れる。枯れたら、魂が黄泉に行った証拠。そして又身を付けて戻って来る』

 と。


 彼等は伝統を守る部族だ。

 しっかりと骨を土に埋め戻して居るのだろう。

 確か貝塚みたいに食べた物を捨てて居る場所が在った筈だ。

 今週は……何処だっけかな。


 僕は何故死体の上に咲くか、と云うのを今の研究対象にして居る。

 どうも何故死体の上に咲く必要が有るのか未だに分から無い。

 微生物みたいな物で骨を分解して居るのだとは思うのだけれど……何故其の栄養を求めるのかが分からない。

 彼等が居るお陰で其処等辺に骨や肉を撒き散らしたとて分解してくれる。自然って本当に綺麗に出来て居るな。


 と、森を歩き回って居ると其の花の咲く密集地帯を見付けた。

 右は赤。左は紺色。そしてグラデーションして居る。何だか幻想的で綺麗だ。


 此んなに綺麗な花なのに、ジュデバ国では気味の悪い花として気味悪がられて居るらしい。

 如何してなのだろう。……彼岸花みたいな物なのかな。死者が此方の世界に来る時に咲く花だし。

 那れは那れで僕は死者を歓迎してる様で綺麗に思うのだけれど……伝わらないだろうかな。


 僕は幹に腰を掛けてメモ帳を取り出した。勿論石筆も忘れない。

 此れは此処に来た時に何時もやって居る事だ。

 先ずは観察、そしてデータに表す。紺色の花も有るし今日は那れが見れるだろうか。

 

 


「ふわぁぁぁ…………。」

 僕は大きく欠伸をした。さっきから何も変化が無い。精々微風(そよかぜ)が吹いて其等が揺れる程度で、其れ以外何も無い。


 まぁ……研究何て此んなもんだよな……寧ろさっさと上手く行った変身魔法の方がおかしいんだ。

 ずっと目を見開いて居たからかドライアイの様に為って居るし。


 眼を袖でゴシゴシと擦って居ると、急に其の現象は現れた。


 其等は六つの花弁(はなびら)を持って居るのだが、(おもむろ)に中央に巻き込まれる。更に紺色の花が光る。淡く、儚く、そして其れは波紋の様に拡がる。

 僕は言葉には出さないものの内心興奮して居た。あぁ、久々に見れた! 此の現象!


 元々赤色や緑色だった花も一遍に紺色へと変色し、そして。…………。


 くるっと反り返った其れが弾ける様に開く。そして、花々から光の玉の様な物が空中に浮かび上がる。

 突然、風が斜めに殴り付ける。なだらかな風に乗って其等は何処かに行ってしまった。

 もう光の玉は何処にも無い。

 

 見遣ると、花はもう総て枯れてしまって居た。本当に、一瞬だった。

 僕はメモ帳を見た。かなり乱雑だけれども其の時の様子が書かれて居る。


 ……そろそろ帰ろう。もう辺りはすっかり暗く成ってしまったのだし。


 実は、此の花に別名が有るのを御存知だろうか。通称、『魂を運ぶ花』

 きっと那の様子から名付けられたのだろう。ぴったりな名前だ。


 良い物を見た。後は村に戻って資料を纏め上げるだけだ。

此の元ネタに為った花は其うです、十中八九彼岸花です。


作者は思うのです。那れってかなり綺麗な花だよなと。

多分、総てがクローンみたいな物ですし不気味がる要素が幾らでも有るのは分かるのですが。


でも、真っ赤で、其れか真っ白で。死者を歓迎して居る様に思えます。

歓迎し、そして……浄化してくれる様な気がするんです。

彼岸花、ですしね。


* * *


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