第百三十二話:秘密の村
十二月三十日、鱗雲之式日本語表記を直しました。
「……よし、着いたね。」
「え、着いた……? え?」
「うん。」
僕等は略々直立に立って居るみたいな崖の前にやって来た。
勿論、道を間違えた訳では無い。寧ろ、しっかりと目的地にやって来たのだ。
僕は車体から降りると壁の辺りを触り始める。
何処に在ったっけか。後ろをチラッと見るとバクダが訝しげに僕の様子を眺めて居た。
まぁ、見てなって。大丈夫だから。
多分奇怪な行動を見られて居る其の行動を僕は止めず、壁の辺りをぺたぺたと触って居る。
あれ、無い、嘘だろ? 此所等に在った筈なのに。
と思って居たら、僕が今触れて居る部分が石壁にぽっかりと穴が開く様に長方形に沈んで行った。
おぉ、在った在った。良かった。僕はほっと胸を撫で下ろした。
僕は横に目線を向ける。すると、其の横、僕から見て左から正方形に切り取られた其れが崖の奥に沈んで行く。
其の前に移動し様子を眺めてみると奥まった壁は上から順番に了われて行く。
ガチャガチャ、と積み上がった煉瓦の様に裂けた其れはやがて奥の灯火の何も無い真っ暗な道を現した。
又車体に座ってバクダを呼ぶ。
「おーい、行くよー。」
「え、あ、うん。」
其の光景に凝然として見て居たのか。彼はぎこちない返事を為る。
彼が後ろに乗ったのを確認して、僕はヷルトに指示を出す。
「あ、又点けてくれない?」
「あぁ、分かった。」
彼は車体の下に手を伸ばし、体を曲げて下を見ると魔法を放つ。
「ヲ̇ゥル̈テ・フ̇ィ。」
ピロロロロと音が鳴ったのを確認して、僕は左のハンドルを倒した。
ゆっくりと、其のトンネルの内部へと入って行く。
「いっつも思ってるけど其れ、何なの?」
「何なの、って魔法だ。魔法の発動には無詠唱、完全詠唱。短縮詠唱と三つ有るんだ。
今回は火を点けるだけだから短縮詠唱使ったんだ。
「え! 其んなんあんの!? 嘘ぉ!! 知らなかった!!」
きっとヷルトはエカルパル国では当たり前の事を言ったつもりなのだろうが、彼は声からしても驚いて居る。
あぁ、其うなのか。と云う事は教育が行き届いて無いかそもそも其の事実を知ら無いかの二択だろうな。
ジュデバ国の教育事情って如何だっただろうか。
「ねぇ、ジュデバ国の教育って如何なの? 」
後ろを向かずに訊いてみる事に為た。
僕の声がぐわんぐわんと反響為る。
「あー、学校みたいなのも無かったなぁ。
周一で教会に行って勉強は為るには為るんだけど神話とか其んなんばっかり。」
「あー……そりゃ魔法の知識何て無い訳だ。」
僕は後ろの毛を掻いた。あぁ、其んな感じなのか。
そりゃ知る由も無い。差別が残って居る理由も其処等辺だろうか。
……勉強を余りやって無い筈なのに国としては力が強いのは如何してなのだろう。
後で生活に使える短縮魔法程度は教えてやろうかな。
と右上を眺めて考えて居るとピュロロロロロと珍妙な音がトンネル内に響く。
吃驚為た。あ、あれ? 何だろうか。
天井をじろじろと見詰めて居ると水滴が滴って居るのが見えた。
排気管から水蒸気が出ただけらしい。あぁ、良かった。特に此れがぶっ壊れて居る、と云う訳でも無いみたいだ。
僕は前を向き直しハンドルを握った。
幾らか進んでみると、開いた場所に出た。
此のトンネルは抜けたけれども其処は崖の中にぽっかり開いた広場の様で、周りは崖に囲まれて居る。
僕等が其処に出ると、ガチャガチャと云う音が後ろから聞こえた。
多分隧道が閉まって居るのだろう。
僕等が出て来た崖の方を見るとまるで其処は元々崖だったかの様な装いだ。
本当はトンネルが有るにも関わらず。一体如何云う魔法を組んで居るのだろうか。結構気に為っては居る。
だからと言って、隧道を破壊する訳にも行か無いのだけれど。
僕は適当な位置に其れを駐めると車体から降りた。
「さ、此処からは此れでは行けないから歩いて行くよ。」
後ろから荷物を取って彼等に話し掛ける。ヷルトはすんなりと降りて来た。
「え、歩いてく……? もしかして、又どっかに隠し通路が在るの?」
彼の困惑為た顔を見て、僕は親指を突き出した。
「大正解。」
僕はさっき入って来た方向と直線の位置に立って又壁を触り始める。
さっきと同じ様に悪戦苦闘しながら、凹みを押した。
すると、今度は広場の中央から何か変な物が出て来た。
いや浮き出て来た、と表現為た方が正しいか。
其れは正四角柱の結晶みたいに綺麗にピカピカと光を反射為た物で、其れが銀の聖杯みたいな物に乗って居る。
僕は其れを取り出すと、自身の魔力を流してみた。
掌から伝わる様に生温かい何かが流れて行く。
すると、其の四角は自分自身を発光為せた。
日の光の反射も相まってかなり眩しい。
其れをさっき凹んだ所に置くとぴったりと嵌った。
すると、僕等が来た方向の入り口がもう一度開いた。
さっきは無かった扉が出現して居る。
「さ、行くよ。」
「……さっき来た所だろ?」
僕が扉を開けようと為るとヷルトが肩を叩いて当然の質問を投げ掛けて来た。
「大丈夫大丈夫。着いて来て。」
「もう此処迄不可思議な現象を並べられるともう驚きもしなく為るよ……。」
バクダははぁと大きく溜め息を吐いて僕等の後ろに並んだ。
其れを確認して僕はドアノブを捻った。
中は何処か部屋の様だった。特に何の変哲も無い普通の部屋だ。
但し、此の国には似つかわしく無い洋風の部屋だ。
横には机が在って、其の上にはメモ帳の様な物がピラっと開いて居た。
御丁寧に横には万年筆が置いて有る。
僕は其れをスッと取ってジュデバ語で【モドス'ペロ̉】と書いた。
後ろに居るヷルトにも万年筆を渡す。
「ほら、書いて。同じ様に。」
「あぁ。」
結構ヷルトはすんなりと、僕の字を真似して慣れないジュデバ語を連ねて行く。
書き慣れて無いからか寧ろ異様に綺麗だ。
「ほらよ、書けってさ。」
ヷルトは後ろを向いて万年筆を渡す。
「え、えぇ……何の意味が有るの……まぁ書くけどさぁ。」
彼は困惑しつつも其れを取りさらさら書くけれども綺麗なアラーン文字だ。
何だか僕が矢鱈ガサツに見えてしょうがない。
すると、メモ帳の其のページはビリビリと音を立てて勝手に離れる。
「え、え、ちょっ。」
バクダは空中に行った其れを取ろうとするもののひらひらと舞う其れは優雅に避けた。
其の儘、其の紙は何処かに行って了った。
僕はメモ帳を見てみた。次のページには【ペ'ズメ《合格》】と書かれて居た。
瞬間、空間が歪む。うにょうにょと周りの光景が異様な迄に変形為る。
「う、うわぁぁぁぁ!!」
バクダが面白い程に声をあげて驚いて居る。
あぁ、分かる。分かるぞ。僕も最初此処に来た時、其んな感じだったからな。
空間が歪みきった後、僕等は何処かに転移して居た。
目の前には、
周りを高い壁の様な山が取り囲み、其処に物理法則を無視した様な家が突出して居り、目の前には屋台等が広がって居る不可思議で幻想的な光景が広がって居た。
上から射し込む光が其の家々を照らして居る。
「わ、わあぁぁぁ!!」
「おぉ。」
バクダが子供の様にはしゃぐ。ヷルトは落ち着いては居るものの其の光景に見とられて居る様だ。
すると、ヒュン、と音を立てて誰が僕の目の前に現れた。
「やぁ、久々だね、リングちゃん。」
其処には此処、通称『銀狼村』の村長カインドロフ・メルダ・テルズメットが立って居た。
よし!! 来た!! 此処迄書けた!!
此処、実は元々リメイク前の話にも有った物です。
なので嬉しい!! 滅茶苦茶大回りしたけれど嬉しい!!
けれど、此の村やっぱり書くのが難しいです。主に、風景が。
此の村をもうちょっと詳しく書くと、上から見ると其処だけぽっかりと穴が空いて居る様な感じです。
そして、異空間に為って居るんです。
其のお陰で鳥獣人等でも見付ける事が無いのです。
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モチベに成りますので、宜しければ。
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