第百二十九話:文化の違い※
十二月十八日、国名の抜けを修正しました。
十二月十九日、後書きを修正しました。
「おーい、起きてよー。」
誰かが声を掛けて来て居る。僕の肩をトントン、と叩かれる。
目をゆっくり開けて見ると其処には野生的な顔付きを為た顔科の動物が居た。
思わず吃驚為て了ったが、よくよく見るとバクダの顔だった。
心臓が飛び出すかと思った。野生の動物の顔って此んなに怖かったんだ。
「う、うん……おはよ。」
布団をガバッと捲ると彼は和かな笑顔を浮かべた。動物みたいな愛らしさが有る。
「朝ご飯出来るからさっさと来てね〜。」
とだけ言って扉を開けて居間の方へ行って了った。
バタンと大きな音が鳴る。
僕はふわあと欠伸を為た。少し脳味噌がクリアに為る。
良い匂いが扉から為る。
ゆっくりと立ち上がって扉を開けた。
囲炉裏の様な所にも居ない。視線を奥にやると台所で何か作業を為て居るみたいだった。
ヷルトがトントントンとリズム良く包丁を動かしている。
「おはよ、何作ってんの?」
何か彼等は野菜を切って居る様で、一体何を作って居るのか想像出来無い。
「へへーん、内緒。」
彼は口に指を当てると悪戯っぽく笑った。
「手伝う?」
「良いよ良いよ、座ってて。」
すると彼は僕をくるっと居間の方に向けると其の儘無理矢理押して行って囲炉裏みたいな所に座らせた。
いや……本当に良いのだろうか。何だか罪悪感が湧く。
けれど案外彼は頑固者だから言っても聞か無いだろう。
なら、お言葉に甘えさせて貰おうかね。
トントントン、コトコトコト、彼等を見て居ると何だか昭和や明治みたいな、昔っぽい風景を思い浮かべる。
異世界の筈なのに昔を思い出す懐古為て了うのは何だか不思議だ。
暫く待って居ると彼は小さい机みたいな物を正座を為て居る僕の膝の上に置いた。
そしてもう二つ周りに置いた。
あれ、机は無いと言って居た筈なのに有るじゃないか?
不思議に思った僕は彼に尋ねてみる。
「……ねぇ、机って無かったんじゃないの?」
すると此方をくるっと振り返って頷いた。
「うん。無いよ。其れ机じゃ無いもん。ノㇺダって云う奴。」
と平然に言う。
「えぇ……?」
僕は首を傾げた。
此れ……机やテーブルとか其う云う物じゃないのか?
僕は机とかにしか見えないのだが。
頭の中で今日の予定を立てて居ると彼はお盆を持って来て居た。
其れを僕等のノㇺダにコトン、と置く。
「んじゃあ、食べよ。」
彼は笑顔を作って祈る様なポーズを為た。
「「「日々の糧に感謝して、そして生き物に感謝し、神様がくれた食物を頂きます。」」」
僕等は声を合わせて言った。今回は彼も食事前の挨拶を為たみたいだ。
僕は箸を持って細長いご飯茶碗を持った。其の中には雑穀米の様な物が入って居た。米粒は日本米依り小さいか。
其れを入れて食べてみる。あぁ、何だか久々だ。転生当時、肉じゃがを作って足り無かった物は此れだ。
久々に食べる味。噛むと甘味が広がる此の味。雑穀米だけれども其れに近しい物を食べれるはやっぱり喜ばしい事だ。
隣を見るとヷルトが箸を使って三角に切られた卵焼きを掴んで居た。
昨日依りかは箸の扱いがマシに為って居る様に感じた。
「んー、やっぱり挨拶は有った方が良いね。」
彼は器を持たず犬食いの様に汁物を食べて居る。
あ、那れはボンダブラ̉だ。味噌汁……と云うと語弊は生まれるが、味は其れに近しい様な。
けれど白色に近く、少し瀞みが有る。
「そりゃ其うだろう。そっちの方が決まりが付くからな。」
彼は左手にご飯茶碗の様な物を持って箸を右手に持って居る。
けれど、鼻の辺りにご飯粒を一つ付けて居る。
「ね。食文化が日本っぽいのは嬉しいけど其れ以外の文化が全く違ってさぁ。
何だかなぁ。今でもあんまり慣れ無いよ。」
彼は少し頬を膨らませて不満そうに其う言う。確かに生まれ育った国と文化が違うのは辛かろう。
けれど、エカルパル国だってかなり違う。僕はもう慣れちゃったけれども。
日本と似てる文化の国が有る何て希望的観測だ。
但し、比較的変化に弱いだろう僕だってエカルパル国の文化に慣れたのだから何れだけ文化が違うのだろうか。
「え? 其うなの?」
「そう、例えばリング今食器持ってるけどさ、其れ駄目だからね。公共の場でやらないでね。」
彼は箸をノㇺダに置いて僕の所作を注意して来る。
「えぇ!?」
偶にジュデバ国の定食屋等に入って白い目で見られて居たのは其う云う事だろうか。
僕はノマンチョル̉を一つ取ってみた。粕漬けみたいで美味しい。
「え、エカルパル国でも持てる物は持つぞ。」
彼は自分のお茶椀を少し揺らす。
「えぇ〜〜、将来そっちに住もうかなぁ。」
彼はやっぱり犬食いの様な感じで雑穀米の様な物を食べる。
「エカルパル国って他民族国家だから多文化にも結構寛容だよ。」
「本当? なら行こうかなぁ……此の国年功序列が激しいし他人を此れでもかと敬わなきゃ行けないし面倒くさ〜い。」
「あぁ…………。」
確かに其れは面倒臭そうだ。日本ですら那れなのだから此処の国では如何為って了うのだろうか。
草食獣の扱いも酷いしなぁ。
けれども、食料の豊富さ、だと成長率、人口、離職率の低さ、肉食獣人にだけスポットを当てれば良い国では有るのだ。
エカルパル国は貿易が得意では無いけれどもジュデバ国は結構得意だ。
何れも此れも差別が有るからと言うと附には落ちないけれども……。
「今の職にも不満有るし……。」
「其うなの?」
「うん……ストレス過多って感じ。」
彼ははぁと大きくため息を吐いた。此れは相当ストレスが溜まって居るみたいだ。
「あぁ……。」
那の前世のトラウマが蘇って来る。……うん、那の職場は最悪だったね。
入社当時は平気だったのになぁ。那の上司が来てからどんどんブラックに為って行ったんだよなぁ。
如何やら会社もどんどん赤字に為って行ったみたいで社員を馬車馬みたいに働かせて居た。
そして社員が抜けるから残った社員にもっとタスクを押し付ける。
今、冷静に、客観的に見て其う思う。
そりゃ、僕も自殺為るわ。良く無いけれどさ。
いやいや、朝食に其んな美味しく無い話を持ち込むんじゃ無い。飯が不味く為る。
「けど行けるかなぁ……難しいかなぁ……。」
「うーん、じゃ……ジュデバ国の隣のジャードブ国は如何? 一応、エカルパル国と友好関係を結んで居るし……。」
僕は彼を覗き込む様に見る。エカルパル国は本当に他民族国家だから来る物拒まず去る者追わず、と云う感じだ。
一見良い様に思えるが其のお陰で離職率も高く為る一員を担って居る。
「いやぁ……ははは、其れがねぇ、壁で遮られてて行けない。
行くにしても一回エカルパル国を経由為てからかなぁ……。」
彼は引き攣った笑いを為る。あぁ……エカルパル国と$$国は色々といざこざが有るからなぁ。
「……本当か。」
ヷルトが茶碗を置いて彼を見詰める。
「うん。」
彼はコクンと頷いた。
「あーあー、てか良いの!! 其んなの!! 本題は此れ!! 此れ!!」
其れを覆い隠す様に、彼は黒い皿を持って僕等に見せ付ける。
「……あぁ、何此れ?」
さっきから他のに夢中で手が付かなかったが其処には赤い肉が乗って居る。
如何やら魚の様では無いみたいだ。
「へへへへへ……近所の人がくれたんだよ。ゲンル̉。
其れをまぁいっちゃあ刺身に為たのかな?」
彼は鼻の下を伸ばして何だか不敵な笑いを浮かべる。
「へー……。」
僕は其れを一つ摘んで眺めて見る。
綺麗な赤色だ。少しサシの掛かって居る肉みたいだ。
成る程なぁ、此う云うのをㇰ゛ルモヹ̉と言い、偶に此の国で食べた事が有ったがゲンル̉の肉は始めてだ。
躊躇無く其れを口に運んでみた。
「あ、美味しい。」
口の中は蕩ける様な甘味が広がる。然し少々臭みは有る。でも、其れも抱擁為て美味しいのだ。
食感は案外歯ごたえが有って犬歯で千切ら無いと食べれ無い。
獣人に為って生肉を危険性を無視為て食べられる様に為った事は喜ばしい事だ。
ヹードの巣に行ってから一度も腹を壊して居ない。
「よくお前はゲテモノを平気で食べられるよな……。」
彼は其れを見詰めて居る。食べれば美味しいのに。
「んだって、命を頂くって其う云う事でしょ?
食べ無いで粗末に為るのも其れは其れで失礼だよ。
何の為に命を奪ったの? って話に為るじゃない。」
僕はにこっとはにかんでもう一回肉を食べてみた。うん、美味しい。
「……いや…………あぁ。そりゃ、其う何だが……。」
「う、あ…………此う為てみるとやっぱり難しいな……。」
僕の様子を見てか渋々と其の肉を持ち上げる。
心亡しか手がぷるぷると震えて居る様に思える。
「味は? 如何? 新鮮だよ?」
「……んまぁ、見た目に目を瞑れば美味しいよ、あぁ。」
自身も目を瞑って其う言った。
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