第百二十八話:明日の予定
僕等は鍋を片付けて居た。囲炉裏みたいな所には火の点いて無い炭が転がって居る。
ガチャ、と扉が開けられた。其処には寒そうに毛皮を逆立てて居るヷルトが居た。
あぁ其うか、もう冬毛では無いのか。そりゃ途轍も無く寒いだろうな。
「あ、ヷルトも戻って来たね。……時間も時間だし、そろそろ寝ようか。」
彼がちらっと時計を見た。其処には十六進数で進む四角い時計が有った。
其れはもう四分の三以上進んで居り、アラーン数字で十二を指して居た。
「んだね。」
「おいでおいで。」
彼は扉を開けて部屋に案内為る。其処は六畳程の部屋だった。
僕等三人が横に為る程度ならギリギリ平気そうだ。
彼はライトをぱっと付けると部屋の中に入って行く。
窓は正面に一つ有るみたいだがカーテンの様な物が掛けられて居る。
横には扉が見える。押入れの様な場所だろうか。
其処を開けると本当に押入れの様で、独特の何とも言え無い臭いが為る。
けれど、此んな臭いだったけか。違う文化だからか。其れとも僕の鼻が変わったからか。
彼は其の中から布団を取り出そうと為る、が、
「うぅぅぅぅ……。」
何だか気持ちの悪い呻き声をあげて居る。
如何したのだろう。僕は彼の隣に行って中を眺めてみる。
如何やら奥に有る布団を取りたいみたいだ。
四苦八苦為て居るのなら助けてやろう。
僕は背伸びを為て手を奥に伸ばす。けれど、届か無い。
後ちょっとの所で届きそうなのに届きようが無い。
もう段を登ってやろうかと思った時、後ろからひょいと手が伸ばされた。
「ほら。」
彼は其の長い手を奥に入れて布団をさっと取り出した。此う云う時に身長が低いのは不利だな。
僕とバクダは殆ど身長が同じみたいだ。
「あ、ありがと。」
後ろを振り返って彼にお礼を言う。
僕等は顔を見合わせた。何だかおかしく為って二人共笑って了った。
「ほら、寝るんだろ?」
「はーい。」
ヷルトは布団を持ち上げると僕等を交互に見て来た。
「……んで、此れ如何やって敷けば良いんだ?」
其れを広げた彼は布団の端を持って訊いて来る。
「えっと、敷き布団と掛け布団が有るでしょ?
硬い方が敷き布団で柔らかい方が掛け布団。
敷き布団を敷いて掛け布団を掛けてね。」
手で空気を握って彼が説明を為て居る。
「此うか?」
彼は逐一彼の動作を確認為て何とか敷いた。
やや乱れて居るものの良い感じだ。
「そうそう、じゃあ、残り二つ敷いちゃおうね。」
僕等は横に文字通り川の字で寝て居る。未だライトは消して居ない。
と云う依り、眠れ無いのだ。何だか変に興奮為て居て目が醒めて了って居る。
「〈ねぇねぇ、此処迄来てさ、何処行くの〉?」
布団に半分顔を埋めてまるで恋バナに花を咲かせるかの如くにやついた笑顔で訊いて来る。
「〈えっとね〉、ズル̉グド村の方迄ね。」
「〈え、何処……〉?」
眼の瞳孔が狭まる。如何やら本当に知ら無いみたいだ。
辺境も辺境、変境って書いた方が地形的に正しいしなぁ。
現地の人が知ら無いのも当然に決まって居る。
「〈銀狼とか謂われる種族が住んで居る村だよ。
研究の為に行ってるの〉。」
「〈……研究〉?」
「魔法関連のね。」
僕は真面目に言ったつもりだったのだが、彼は何故かふふふふと不敵な笑いを為る。
そして、僕の方を指して、
「何其れ! 〈中二病〉みたい。」
と言った。いやいや……お前は科学者にも其う言えるのか?
少しムスっと為た。
「魔法にも理論は有るんだよ。〈一応ね〉。」
感情が高ぶると日本語を忘れそうに為る。エカルパル語が出る。
普通、此う云う時は母国語が良く出る、とか云われて居る気が為るのだが、僕の場合は違うみたいだ。
実際の所如何なのだろうか。
「〈へぇ、神様からの贈り物的な其れじゃ無くて〉?」
「うん。」
僕は布団の中で頷くと彼は天井を見上げた。僕も少し見てみると太陽みたいにライトが光って居る。
「〈はぁ〜、ファンタジーっぽい世界だから其う云うのも有るのかと勘違い為てた〉。」
そして此方を向いて目を細めて笑った。
其うなのか。確かに何方かと言うと理論がバックに有るのは少し科学っぽい。
と言っても、魔法の事が総てが総て判って居る訳でも無いのだが。
「逆に、如何なの? 〈ジュデバ国って魔法の研究は進んで居るの〉?」
僕は少し気に為って其んな事を訊いてみた。
「〈いんやぁ、多分研究もクソも無いね。
神様の贈り物とか、才能とか其う思われてるから
晧に其う言われても実感が沸か無いけれども〉。」
「魔法は才能じゃ無いんだけどなぁ……一種の現象だし……。」
僕は布団に頭を潜り込ませてぼそっと言った。
此う言うと何だか説教臭いが、魔法が努力次第で全ての属性が使える様に為る。
才能では無いからだ。
「〈てか、俺も付いてける?〉」
「んー如何だろ……〈まぁ何とか交渉為てみるよ。駄目だったら……其の時考えよう〉。」
僕は目線を上にやった。出来るだろうか。村の村長が結構が頑固者だから。
「と云うかヷルトー! さっきから喋って無いじゃん!! 話そうよー!!」
「んあぁぁ……煩い……俺眠いんだよ……ふわぁぁぁぁ……。」
彼は眼が半開きで此方を見て来た。かなり目をぱちくちと閉ざすし、何処か声にもハリが無い。
本当に眠そうだ。
「出来るなら照明も消して欲し…………。」
「そろそろ寝ようか?」
流石の彼の様子を見て僕は彼に其う話し掛けた。
「〈えー、やだー……もっと話したいよ折角会ったんだしさぁ〉。」
けれど結構な声量で駄々を捏ねて其う懇願為る。
「〈話は明日でも出来るからさ。〉」
「〈……まぁ、其うだね。ほら。〉」
すると納得為たのかライトが消された。僕は目を瞑った。
明日は、一体如何為るのだろうか。其んな不安を抱えつつも僕は眠った。
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