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Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション  作者: 鱗雲之
第三章『獣人国へ』
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第百二十六話:旧友との再会

「へ……? は!?」

 僕は口を大きく開けて驚いた。中邑卓也……確か、小学生から高校生での親友だった奴だ。

 大学生からは離れ離れに為って了ったけれども、でも時々連絡は取り合う様な仲だった。


 其れが……此奴? 此の、あからさまな獣人が? (にわ)かには信じ難い……。


「〈まさか此処で会う何て!! びっくりだよ〉!!」

「え、いやいやいや……。」

 彼は僕の手を握ってぶんぶんと振って来るものの、僕は未だ信じて居なかった。

 だって、見た目から声から何やら何迄違うのだぞ? 信じろと云う方が酷じゃ無いのか。


 けれど、日本語を喋って居るしなぁ。今迄此の世界で日本語を喋る人に出会った事が無い。


「ちょ、ちょっと待って? 確かに其う、其うだけど……何処で気付いたの?

 だって、僕だって獣人じゃない。見た目も、声も、外見だけじゃ分から無いんじゃないの?」

 彼の手を無理矢理引き剥がし、少し声を荒らげて居る。何故かはぁはぁと息が荒く為る。

 本当に彼は前世の那の馬鹿を遣って下ら無い事を為て、一緒に先生に怒られた那奴かと訊いてみる事に為た。

 すると、奴は首を傾げたかと思うと、ぱあっと笑顔に為って目を細めた。


「〈見た目が変わっても親友だからね〉!」

 違う、其う云う事を訊いてる居るんじゃあ無い。

 如何遣って僕を僕だと判断したんだ、って事を問うてるんだ。


「おい、お前、一体如何遣ってリングがリングだと分かったんだ?」

 僕が困惑為て居るのを察してか、ヷルトが助け舟を出してくれた。


「あぁ〜〜、其う云う事かぁ〜〜。」

 其う云う事かぁ〜〜。じゃ無い。普通に考えたら分かるだろうが。

 でも、此う云う所も彼っぽいちゃあ彼っぽい。変に勘違い為る所何か。


「其れに付いてはさ、長く為るから俺の自宅で話そう?」

 僕の方を振り向いて笑顔の儘、僕の袖をぐいぐいと引っ張って来る。




 結局、彼に連れられるが儘に彼の自宅に着いて行って了った。

 彼の家は平家の家で、一人で住んで居るみたいだ。


 其れにしても……彼一人で住むには大き過ぎるんじゃあ無いだろうか。此の家。

 勿論、普通……いや現代的な普通の家では無いのだが、台所が在り、段差を上がった所にちゃぶ台みたいなのが置いて在った。日本的な古民家の様に見えた。


 只、奥の方に一つ扉の有る部屋が在るから日本的な古民家とは呼べ無いかも知れない。

 其れと、中央からライトが吊るされて居るのだが、何だか西洋風のライトみたいに見えた。

 そして彼は魔法でライトをパッと点けた。暗かった室内が一気に明るく為る。


 其の雰囲気の合わなさに何だか気持ち悪さを覚えた。

 彼は座布団の様な物を出して丸い囲炉裏みたいな所へ案内を為る。

 

「あ、靴脱ぐ?」

「うん、脱ぐ脱ぐ。」

 僕は靴を脱いで揃えると居間に上がって行く。

 ヷルトも其れに(なら)い靴を脱いだ。不思議そうな顔を為て居る。


「え、本当? 本当に卓也なの?」

 座布団にゆっくりと腰を降ろした僕は急須を横に置いて居る彼に話し掛けた。


「あぁ。其う言ってるじゃないか。」

 彼は大きく頷く。


 本当だろうか? 実は名も知れぬ獣人が僕の噂なり何なり聞き付けて嘘を付いて居るだけなんじゃないか?

 猜疑心(さいぎしん)しかない僕は幾つか質問為てみる事に為た。


「〈……じゃあ、小学生僕が好きだった子の名前は〉?」

「〈岡村結充(ゆいみ)、通称ゆいちゃん。学校の裏ボス〉。」


「〈中学生一年の頃の僕の将来の夢は〉?」

「〈確かヒーローに為る事……〉。」


「〈其れは小学校の頃ね〉?」

「〈あぁ、そっか、じゃあ悪魔の十二使徒アルダモーレに為る事だっけ〉?」


「〈高校生にやらかした最大の出来事は〉?」

「〈あぁ、覚えてる。二人で花火作ろうと為て爆薬で廃墟を半壊させちった事だよな〉。」


「〈全問正解、当たり〉。」

「〈やったー!〉」

 僕は頭を抱えた。如何やら本当に本人の様だ。

 ゆいちゃんが好きなのは彼にしか話して居ないし、中学校の頃の痛々しい言動を良く知って居るのも彼しか居ない筈だし、最後に至っては彼と一緒に引き起こした出来事だから彼が一番覚えて居るだろう。


「おい、如何為た?」

 ヷルトが僕の肩を叩いて来る。僕は彼の方を向いて大きく溜め息を吐くと嫌々口を開いた。


「如何やらホントにホントっぽい……。」


「はぁ、じゃあ、説明して貰える?」

 僕は上着を脱ぎながら正座を為て居る彼の方に目線を向けた。

 彼は長い袖をひらひらと為せながらお茶を淹れて居る。


 急須をくるくると回しながら三つ淹れ終えると彼は両手を膝に置いて、何故か笑顔で話し始めた。


「いやぁさ、へへ……実は俺も死んじゃってねぇ。」

「其んなあっさり言う?」

 後ろに手を置きながら其んな事を言う。余りにもあっさりと為て居る。

 其れを言ったら自分だって自殺為た癖に何でのうのうと生きてるんだって話では有るが。


「まいっか……で、如何為たの? 僕みたいに自殺?」

 自虐的に笑ってみせる。多分引き攣って居るだろう。

 何だろう、此んな事を為て居るだけ虚しい。


 僕は下を向いてはぁと大きく溜め息を吐いた。


「うぅん、お前が死んでからもう何も考えられ無く為っちゃって、駅のホームで線路をぼうっと眺めてたら、急に視界が白く為って目の前に神様が現れたんだ。」 


「いや……其れはごめん。ほんと……。」

 僕の声のトーンがどんどんと下がって行く。自然と、頭の中で出来事がぐるぐると駆け巡って居る。

 何だか吐き気が為る。転生為た時と似た様な気持ち悪さだ。


「いやいや、俺は死んだ訳じゃあ無いし別に……今此う遣って会えてるんだしさ。

 ……そりゃ、お前が死んだって訃報(ふほう)が来た時は寂しかったけどさ。」

 多分彼は其う遣って慰めてくれて居るのだろう。けれど、其れに甘えちゃあ罪償いとは言え無い。


「いや、死んだのは……死んだのだし此処で謝っときたい。

 ごめん、本当に……此んなんで(ゆる)されるとは思っても無いけど……。

 でも、謝る事位しか出来無い……。」

 僕は頭を床に付けて土下座を為る。

 自分が遣った事を鑑みると此んなんじゃ済む筈が無いだろう。

 自殺は其れ相応の罪を伴う物なのだ。其れを此方に転生為て来て本当に強く実感為て居る。


「おいおい、其んなに罪悪感感じんなよ、其処等辺昔っから変わんねぇなぁ。」

 土下座を為る僕の背中をぽんぽんと叩く。

 僕はゆっくりと顔を上げた。其処にはにっこりと優しい笑顔を浮かべた彼が居た。

 あぁ、もう。僕は袖で目を擦って了う。


「あーあー……ちょっと良いか?」

 ヷルトがタイミングを見計らってか、少し僕はふふっとはにかんだ所で彼が質問を為て来た。


「あ、うん、大丈夫ですよ。」

 彼は何処かぎこちない仕草で首を縦に振った。


「えっと……先ず、神様、って何だ? スミェート様か?

 其んな話、リングから訊いた事無かったんだが。」


「スミェート様……? ゴルダバダ神じゃなくて……? まいいか……。」

 彼は斜め下を向いて其んな事を呟いて居る。

 顔を上げると、一口お茶を飲んで彼に目線を向けた。


「えぇ、其うです。多分其のスミェート様とは違うと思うんですけど……。」


「はぁ、世界には神はスミェート様の一人の筈何だけれどな……。

 邪神か? いや神に似た生物? ……はぁ、分から無いな。」

 顔を下に下げて其んな事をぼそぼそと言って居る。

 スミェート様、って何だろう。彼が信仰為て居る筈の宗教の神様だろうか。

 仮に神が居たと為ても一人な訳が無いと思うのだけれどもなぁ。


「え、てか皓……何で彼は皓の事知ってるの?」

「ん? あぁ、彼も自殺為たらしくてさ、僕が復活為せてからは結構な付き合いでね。」


「え、えぇ!?」

 僕が淡々と言うと卓也は瞳孔を途轍も無く大きく開いて驚く。

 まぁ、そりゃそうか……普通は信じる事は出来無いか。


「……其の事は後で話てやるから今はお前の事が訊きたい。次だ。」

 彼は一回少し目を細めたかと思うと、彼の言葉を遮る様に矢継ぎ早な質問を問うて行く。


「何故お前は死んだ?」

 ヷルトが遠慮もクソも無い事をズカズカと訊く。

 ……おいおい、流石に其れはデリカシーってもんが無いんじゃ無いか?


「うーん、別に死んだ訳では無いんですけど……何だろう、偶々眺めて居たら、さっき言った様にパッと視界が明るく為って、神様と名乗る人物に『貴方は余りにも哀れです。親友と同じ世界に転生しませんか?』的な事を言われて、で、こっちに転生為て来た。確か金髪だったかな。」

 けれど、彼は其の質問に言葉を(よど)ませず特に不快には感じて無い様子で尋ねる.


「あぁ、分かった。其れが訊ければ其れで良い。」

 ヷルトは其う言って顔を(くう)に何かを考え始めて居る。

 彼は首を傾げて居る。僕を見詰めたって、僕にだって何を考えてるか分から無いよ。


「此れで最後だ、何故お前はエカルパル語を話せる?」

 ヷルトは何故か鋭い目線に為って訊く。

 彼は其の狐目の眼光に少し驚いた様に見えたけれども、嬉しそうに笑顔に為って話し始めた。


「あぁ、其れは普通に覚えたんですよ。神様から皓がエカルパル国に居る、って聞いて、何時か会える時が来ると思って練習為たんです。」

 

 成る程? じゃあ、僕も其の神様に転生為せられたのだろうか。

 但し、其処の記憶が無い。自殺為て息が止まったと思ったら何故か異世界に居たのだ。


「なぁ、リング。」

「何?」

 ヷルトが僕の耳元でぼそぼそと其う言って来る。


「後で話が有る。」

「う、うん……。」

 彼の眼を見ると、何処か(いぶか)しむ様な敵対的な眼だった。


「今はお友達との再会を楽しんで良いが、気を付けろよ。」

 と僕の背中をポンと叩く。ん? 気を付けろ? 別に親友だから気を付けるも何も無いと思うのだが。

 あぁ、馬鹿やらかさない様に、って事だろうか。確かに彼と一緒だと偶にタガが外れるからなぁ。


「てかてか!! 皓と彼の馴れ初め教えてよ!!」

「何が馴れ初めじゃ!! 付き合ってねぇわ!!」


「其うだな、そうそう、那れは少し肌寒く為って来た秋の事だった……。」

「ヷルトも乗ら無くて良いから!!」

 僕は彼に鋭いツッコミを一つ浴びせる。何なんだよ、もう。

 いっつもは此う云う事に乗り気なキャラじゃ無いのに。

此の作品が面白いと思ったら評価をお願いします。

モチベに成りますので、宜しければ。


其れと感想も気兼ね無くどうぞ。お待ちして居ります。

良かった所、悪かった所、改善点等有りましたらどうぞお願いします。


もし誤字や明らかなミスを見付けましたら誤字報告からお願いします。

宜しくお願いします。

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