第百二十五話:汽車から降りては宿を探して※
十二月十七日、ルビを振ろうと思って居た箇所のミスを修正しました。
先日お休みして了ったので今日はお詫びに二話投稿します。
今回はヷルト目線です。
二月十三日、バクダ(卓也)の名前を変更しました。バクダを名前に変えました。
作中でずっとバクダバクダと言っているのでコレはおかしいなと思いまして……。
「おいリング。」
俺は下から彼に向かって話し掛ける。
けれど其奴はうぅんとか唸るだけで起きようと為ない。
はぁ、しょうがないな。
俺は梯子を上がって彼の方を叩く。
「おい、着いたぞ。」
すると、ゆっくりと眼を開いて「うぅん?」と言って俺の方を見る。
「おはよう、着いたぞ。」
もう一回俺は念を押して言う。彼はむくりと起き上がった。
眼は半目で顔は迚も眠そうだ。
「ん……おはよ……。」
「にぎゃっ!?」
勢いよく上がった所為だろう、彼は天井に頭をぶつけて了った。
痛そうに頭を摩って居る。
もう、朝から何為てるんだか。相変わらずそそっかしい。
けれど痛みで目が覚めただろう。傷口に塩を塗る事はせずに下に降りて行った。
まぁ、お茶くらい淹れてやろう。
俺は用意為れて居るお茶っ葉を取って珍しい形のポットに入れる。
潰れた球みたいな形に象の鼻みたいなのが伸びて居て、そして半円型の金属の取手が付いて居る。
そして魔法を発動為せる。
「ホキ゚キ・フ̇ィヸ̇。」
空から水が生成為れ、ポットの中を水が満たして行く。
茶葉がゆらゆらと動いて居る。
「チェヰ̇ㇰ゛・ペイ。」
そして次は熱魔法を発動為た。
火は出ない。だからか火力は弱い。けれど、お茶を沸かすのには其れ位でも十分だ。
どんどんとふつふつと泡が上がって来て元々水だった其れに色が付いて行く。
俺は蓋を閉じて其れをカップに注いだ。
此のポットは蓋の所を押さえて注がないと行けないみたいでやや面倒臭い。
何で此んな構造に為たのだろうか。余り体積も無いみたいだし。
其んな事を考えつつも俺は二つ目のカップにお茶を注いで行く。
其の色は不可思議な緑色だ。何時もの茶色では無い。
とととと、と七割位注がれた其れを見て、俺は彼が座って居る窓際の席へと持って行く。
彼は何時の間にか寝巻きから着替えて居た。何時もの格好だ。
「ん、ありがと。」
彼は微笑んで其れを受け取るとふーふーと息を掛けて飲み始める。
俺はポットと自分のカップを持って来た。
「取り敢えず今日目的地のヒョンロー村に行くんだけど……。
多分今日一日だけじゃ目的地に着か無いと思うから一旦宿に泊まるよ。」
カップを置き俺の方を眺めて居る。
「……あぁ、分かった。」
俺は頷くとお茶を飲んだ。紅茶と違って那の香ばしい様な香りはせず、ほろ苦い味が為た。
此れは此れで嫌いでは無いけれども最近此れ許り飲んで居るから紅茶や珈琲の那の味が欲しく成る。
きっと着く迄に時間も有るだろうからと、俺は収納魔法から書籍とノート、勿論石筆も取り出した。
『ジュデバ語辞典 エカルパル語から』
昨日遣ったページの隣を開いて早速ノートにアラーン文字とエカルパル文字で翻訳為れた意味を書いて行く。
「あ、其れ遣るの? もうそろそろ着いちゃうと思うけど……。」
「少し位でも遣った方が良いだろ?」
俺は顔を上げて彼の顔を見る。
顔色から見るに嫌味とか其う云うのでは無く、本当に心配して居るみたいだ。
「んま、其うだね。」
とだけ言うとお茶を飲み始めた。
其処からは汽車のガダンゴドンと云う音と石筆のシャカシャカと云う音だけが聞こえる。
「えーっと……ボーゴは充実、ビガーは行く、向かう……。」
ぶつぶつと呟きながら写して行く。ふと彼を見るとポットからお茶を注いで居た。
何も言わずに見守る様な眼で見て居た。
「ねぇ、そろそろ着くよ。」
「……ん、あ、ほんとか?」
何十分か経った後、彼が唐突に話し掛けて来た。
俺は石筆やら辞書やらを了った。
プシューと汽車が煙を上げる音が為てゆっくりと速度を下げて行く。
彼は何時の間にか荷物を持って来て居た。
もう一回プシューと大きな音が鳴ると汽車は完全に止まった。
俺は右の方を向く。其処には俺の着替え等が入って居る荷物が有った。
立ち上がり荷物を取る。扉の方に向かうと後ろからリングが遣って来て居た。
彼は何故だか帽子を被って居る。其んな彼は少し大人びた様に見えた。
「うわ、人一杯居るね。」
俺等が扉から出ると、通路には他の獣人が沢山居た。
肉食獣、草食獣と居るが、若干肉食獣の方が多い様に思えた。
「あぁ、だな。」
人の波を掻き分けて進んで行くと先頭車両に出た。
中間車両等からは出る術は無い様で、そして誘導員の様な人が先頭に居た。
彼等はひらひらと為た面白い服装を着て居て頭にはつばの有る帽子を被って居た。
手には白い手袋を為て居る。
彼等はジュデバ語だろう言語で何かを話して居る。多分、誘導為て居るのだろう。
其の誘導に流される儘に俺等は汽車の外に出て行った。
汽車の外に出ると、其処は小さい村の様だった。
「よしよし、んじゃ、行けるとこ迄いこっか。」
振り向くと、後ろにリングが居た。
「あぁ。」
俺等はマズゲッドと云う乗り物に乗って居る。前に二つ、後ろに一つ車輪が有る。
二人乗りの乗り物で後ろには排気の為か下から円筒が上に伸びて居る。
一応平べったい屋根が俺等の上に付いて居る。
如何やら燃料を使うタイプの乗り物みたいなのだが、着火に熱魔法を使うらしく彼も乗った事が無いらしい。
あぁ、リング今でも熱魔法使え無いんだものな。俺が先頭に乗って、リングは後ろの座席に乗って居る。
「そろそろ夜に為るから何処かで一泊しないか?」
ハンドルを回して居る彼に俺は後ろから話し掛けた。
「ん、そだね。」
俺の方を一瞥為ると彼はハンドルの真ん中のボタンを押して其れを止めさせた。
ギュギューと魔物の雄叫びみたいな奇妙奇天烈な音が鳴ると其れは一気に動きを止めた。
俺は後ろに置いて居た荷物を両手に持って降りた。
「ありがと。」
彼ははにかむと置いた荷物を受け取った。
俺等は多分此の村で一番大きいだろう宿屋に来て居た。
俺はジュデバ語は話せ無いのでリングに宿を取って貰って居る。
「ヷ̉ロェン、モㇺパダル̉……?」
「ヷ̉ェイディ ラ̉ラ̉ス、カ' ㇰ゛ㇻ̉パトゥ サェ ガタ'カダ ザサ' カ' ヸ̉アェンラ̉ロ̉。」
「えぇっ!?」
彼は驚くととぼとぼと此方に近付いて来た。顔には悲しげ表情が浮かんで居る。
「……ごめん、駄目だって。先月から法律改訂で宿泊為る為には宿カードみたいなのが必要何だって……。」
弱々しく声を発し、顔を下に向けて謝って来る。
いやいや、謝る必要は無いだろうに。
「しょうがないな……寝袋と天幕は有るだろ?」
「んまぁ、一応……。」
彼は少し顔を上げてうんと頷く。
なら、今日は適当な所に天幕を立てて寝るしかないだろう。
俺は特に其れで文句は無い。……まぁ、確かに宿が取れた方が良かったと言えば良かったのだけれど。
「じゃあ、何処か良い所探して天幕立てるか。」
「……だね。」
すると少し彼は顔を笑顔にさせて俺の後を着いて来る。
俺等が暗い中歩いて行くとふいに声を掛けられた。
「……あれ、其処のあんさん達、如何為たんですか?」
其処に居たのは名も知らぬ獣人だった。毛皮は全体的には黄色く、目の下と上に伸びる線の模様が有った。
何だか何処と無くリングと近しい雰囲気を感じ取る。
「あ……えっと……。」
急に話し掛けられたのか呆気に取られて居るリングに変わって俺は口を開いた。
彼はエカルパル語で話し掛けて居るみたいだ。
「あー、俺等は今宿に断られちゃって、で、何処か野宿出来る所が無いか探して居るんだ。」
俺は俺等は親指で交互に指して彼に説明為する。すると彼はあ〜、と一言言って手招きを為した。
「……なら、うちに来て下さいよ。」
「え!? 良いんですか!?」
リングの耳が飛び上がる。……様に見えた。
背筋を伸ばして俺の方を向いて来る。
「はい。……って、ん……。」
彼は横に首を振ったと思うとリングの顔をじろじろと見始めた。
何か付いて居るのだろうか、見た所何か付いて居る様では無い。
と云う依り、彼の顔を訝しむ様に眺めて居る、と云う感じだ。
「……皓!?」
「皓じゃん!! 久々!!」
奴はリングの手を取ると其れをぶんぶんと上下に揺らした。
リングは全く何も分かって無い、って顔を為て居る。
あれ? じゃあ此奴はリングとの知り合いでも無い、って事か?
「え……あ……へ?」
「なぁ、皓、ってリングの前世での名前だよな。」
「う、うん……。」
俺は一応リングに確認を取る為に言ってみると、彼はぎこちなく頷いて俺の方を見た。
「なぁ、お前何でリングの前世の名前を知って居るんだ?」
俺は眉を顰めて彼を問うてみる。
自然に声が低く為って居るだろう。
「あぁあぁ、狐のお兄さん、其んな怖い顔しないで下さいよ。」
すると、奴は先っぽの黒い楕円の様な耳を後ろへ向けて、へらへら為た様子で俺を諌めようとして来る。
何だか気味が悪い。此奴は相手にしない方が良い奴じゃあ無いのか。
「忘れちゃったの〜? 親友の事。……と言っても姿もかなり変わってるし無理も無いか。」
「俺は中邑卓也。こっちではバクダ・デ・チェグルって名乗ってるよ。」
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